驚くほど寄れるハゼと濃密過ぎる魚群 ~タイ湾のちょっと変わった生態系~
マレー半島の東側、タイ湾にあるタオ島は、魚影の濃さ、生物の濃密さで知られる人気のダイビングスポットだ。
ベストシーズンのいい時期を狙ってこの島を訪れた。
3~4月ごろの季節は、風が止んで海がベタベタ、そして透明度も上がり、撮影にはもっとも適している。
いい写真を撮るぞ!と思って空港に着いたら、なんとロストバゲージが発生。(この顛末は後ほど)いきなり出鼻をくじかれたが、気を取り直し頑張っていこうと気合を入れる。
だが、どうもおかしい。
本来ならこの季節は抜けるような青空のはずなのに、やけに雲が多い。
しかも東風がビュンビュン吹いている。
大丈夫なのだろうか?
波乱含みでスタートしたタオ島ロケをレポートしよう。
タオ島
驚くほど魚影が濃い、タオの海!
取材が始まっても風は止まず、苦戦の日々が続いていた。
それでも風が弱まった時をチャンスとばかり、北にある巨大な潜れ根「チュンポンピナクル」に潜ることができた。
風の影響のせいか、透明度は10~15mとあまり良くなかったが、このポイントの魚影の濃さは圧巻だった。
バラクーダの大群が頭上を通り過ぎると、周囲が暗くなるほどの密度の濃さ。
そして、ビッシリと密集したテルメアジは、まるでアメーバのように一様々に群れの形を変えていた。
さらに他の海ではあまり見られないオニアジの群れ等、次々に現れる群れのオンパレード!
「チュンポンピナクル」では、オオカマスの群れに遭遇! ここは大物や群れに出会えるポイントだ。
エキサイティングなシーンの連続にテンションが上がりっぱなし。
もっと潜りたいという思いが募りつつ、後ろ髪を引かれて(僕はボウズなので毛はないけど)エキジットをした。
回遊魚に追われ、まるで流星群のように駆けて抜けていったササムロの群れ。「チュンポンピナクル」
「チュンポンピナクル」や「サウスウエストピナクル」、「セイルロック」は、沖合にある岩礁のポイントなので、魚影が濃く大物が多く見られることで知られている。
ジンベエザメの姿も時々目撃されているので、運が良ければ一緒に泳げることも夢ではない。
「セイルロック」は海の真っただ中にある巨大な岩礁のポイント。ギンガメアジが大群で泳いでいる。取材時は透明度が良くなく、群れを綺麗に撮ることはできなかった。
濃密なタオの海で出会える、フレンドリーな生物たち
タオ島はコンディションが悪い時でも、どこかしらのポイントで潜れるという強みがある。
東風が相変わらず強いので、風を避け西側のポイントの一つ「ツインズ」に潜ることに。
ここは島影になるため、海は静かで落ち着いていた。
台風並みに発達した低気圧でも来ない限り、どこかでダイビングができるのは嬉しい。
早速、エントリーするとギンガハゼがいるいる!
ここにもあそこにもという感じで異常に思えるほどの数が生息していた。
そして、ビックリするほど近くまで寄れる。
「他の海でそんなにのんびりしてたら、あなたたち食べられちゃうよ」と言いたくなるほど警戒心が薄い。
落ち着いて見ていられるので、ギンガハゼがあくびをする様子や、キョロキョロしている仕草などが観察できる。
ギンガハゼがいろいろな表情を見せる度に、「いいね!いいね!」と一人で盛り上がってシャッターを切っていた。
まさに至福の時間であった。
ここにはメタリックシュリンプゴビー、レッドマージンシュリンプゴビー、ヒメダテハゼ、ムラサメハゼなど多くのハゼが生息してる、ハゼ好きにはパラダイスのようなポイントだ。
タイマイが呼吸をするため海面に上がっていく。「ホワイトロック」で遭遇。
青い斑点が鮮やかなブルースポッテッドスティングレイ。岩の窪みなどに潜んでいる。
水深1m前後という超浅場で見られるオイランハゼ。タイミングが良ければ、体色を鮮やかに染め、ヒレを目一杯広げて求愛する姿が見られることもある。
ウミウシ類もよく見られる生物の一つ。写真はタマゴイロイボウミウシ。
ハープコーラルについていたアカスジカクレエビ。体が透き通った不思議な姿をしたエビだ。
岩礁、サンゴ、ケーブ、沈船等、多彩なダイビングが楽しめる
タオ島での滞在期間中は風が止まず、なんとか「チュンポンピナクル」、「サウスウエストピナクル」といったタオ島から離れたポイントへは潜りに行けたが、東側のポイントへは行くことができなかった。
それでも西側のポイントだけでもバリエーション豊富なダイビングが楽しめる。
巨大な花崗岩が点在する「グリーンロック」はダイナミックな景観で、「ホワイトロック」は隙間がないほどにサンゴが群生した癒し系のポイント。
枝サンゴやテーブルサンゴで海底がビッシリと覆われた「ホワイトロック」。タオには癒し系のポイントも多い。
「HTMS Satakut Wreck」という沈船ポイントは、船の原型がしっかりしているので、本格レックダイビングの雰囲気が満点だ。
今回の取材では残念ながら行くことが出来なかったが、東側には青紫の美しいソフトコーラルのポイントや、美しいサンゴ礁が広がるポイント、さらに西側とは違う生物相が見られるという。次の機会に、ぜひ潜りに行きたいと思う。
沈船ポイント「HTMS Satakut Wreck」では、アドベンチャー的な雰囲気が楽しめる。
ケーブやチムニーなど、地形の変化に富んだダイビングも楽しめる。「グリーンロック」
ちょっと変わった生態系を育むタイ湾の環境
タオの海を潜っていて気がついたことがある。
生物の種類は飛び抜けて多い海ではないが、特定の種類の数が非常に多いのである。
例えば、センジュイソギンチャクにはおびただしい数のハナビラクマノミが共生しているし、砂地で見られるギンガハゼも非常に数が多い。
テルメアジの密集度は半端な数ではない。
いくつかの種類が飛び抜けて数が多いのは、おそらくタオ島が位置する地理的な要因があるのだろう。
タオ島は、マレー半島とインドシナ半島に挟まれたタイ湾と呼ばれる閉鎖的な海域にあり、湾内の水深は平均45m、最大でも80mと非常に浅い。
また、日周潮汐という潮の干満が1日に1回しかないという珍しい特徴を持ち、潮の流れは非常に緩やかだ。
この海を南国の強い太陽が温めるので、水温の変動も少なく、平均で27〜31℃と温暖な海だ。
さらにチャオプラヤー河等、大河川からの淡水の流入や、南シナ海から流れてくる塩水により、場所や季節、水深による塩分濃度の違いを生じさせ、他とは一風変わった特殊な生態系が育くまれている。
この影響で環境にマッチした生物が極端に増える傾向があるのだろう。
潮の流れがないにもかかわらず、ギンガメアジやバラクーダ、フュージュラーなどの群れ、時にはジンベエザメなどの大物も現れる外洋的な性格も合わせ持っている。
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タオ島を潜りつくせ! 10ダイブ付コタオ パラダイスゾーン泊 6日間
※発着空港、ホテル、日程はアレンジ可能
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タオ島・サムイ島のツアー
今回の取材でお世話になったサムイダイビングサービスの自社ボート。2Fに広々としたスペースがあって快適! タオ島でのダイビングはこの船を使ってダイビングを使う。