第1回日本水中フォトコンテスト受賞者インタビュー(第7回)

鍵井靖章賞 中野駿介氏「ジャーナリスティックな視点の作品も撮っていきたい」

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2023年にスタートした「日本水中フォトコンテスト」。
4月6日に第2回の入賞作品が発表され、さらに盛り上がりを見せている。この連載では第1回の上位入賞者の皆さんに、フォトコンへの思いや水中写真上達の秘訣などをインタビュー。最終回となる第七弾は、鍵井靖章賞に輝いた中野駿介氏をご紹介。

鍵井靖章賞「Radiance」 撮影/中野駿介氏

「あえて挑戦するつもりで応募した作品が評価されて、嬉しかった」

オーシャナ編集部(以下――)

第1回「日本水中フォトコンテスト(以下、JUPC)」にて鍵井靖章賞を見事受賞されました。受賞されたとき、どのように感じられましたか?

中野駿介氏(以下、中野氏)

驚きました。この写真が選ばれたのかー!って感じで(笑)。
受賞した作品は、いつも撮っている写真とは違う少し変わった写真を選んで出しました。私は好きな感じだけど評価される自信はなくてあえて挑戦した形になるのですが、評価いただけたことでこういう写真もありなんだとわかり、とても嬉しかったです。

――今回の受賞作品は水面の濃い青、太陽光が差し込むやさしい水中の青、そして遠くに見えるイルカの姿が見事に表現されています。何カットか撮影できたんですか?

中野氏

いえ。あの1カットだけです。イルカが通り過ぎて行って、あーっと見送っていく中で、すごいきれいだったので、おおっと思って、シャッターを切りました。連写もしていないので、本当にあの写真だけなんです。

――それはすごいですね。審査員の水中写真家の先生方からの作品への評価を聞かれて、いかがでしたか?

中野氏

イルカが中心に写っているんですが、自分でもわかりづらい写真だと思っていて…。しかし、たくさんの写真を審査するのにもかかわらずそういった細かい所にも気づいていらっしゃって、コメントをいただけたことがとても嬉しかったです。

サメやクジラ、魚群などダイナミックな被写体が好き

――中野さんが水中写真を始められたきっかけはどんなことだったのでしょうか?

中野氏

一緒に潜ったゲストの方に、一眼レフの撮影機材を触らせていただいたことがきっかけです。その前もコンデジをレンタルして撮影したりはしていましたが、本格的に一眼レフで撮るようになったのは、ここ2年くらいです。やはり全然違いますね、コンデジと一眼レフでは。

―そうですよね。ダイビング歴は13年くらいとのことですが、ダイビングを始めたのは、いつ頃だったんですか?

中野氏

学生のときにサークルで始めました。休みにはダイビングショップのお手伝いをしたりしていました。

――学生時代からダイビングにはまっていらっしゃったんですね。その後は、特にダイビングを仕事にしようとは考えられなかったんですか?

中野氏

そうですね。迷いはしましたが、仕事にはしなかったですね。今は会社員です。

――入賞作品はワイドのイルカの写真ですが、普段からワイドの撮影が多いんでしょうか? とくに好きな被写体や、よく潜りに行かれている海はありますか?

中野氏

サメやクジラ、魚群などダイナミックな被写体に興味があるので、ワイドでの撮影が多いです。受賞作品の撮影地は御蔵島ですが、よく行くのは沖縄の粟国島や伊豆半島の神子元など、国内の有名どころが多いです。魚群が撮れる海が好きですね。国内のダイビングスポットばかり潜りに行っています。マクロ撮影は、今のところはあまりしていません。

粟国島で撮影したギンガメアジの大群。中野さんは粟国の海が大好きで、毎年潜りに行っているそうだ(写真/中野駿介氏)

――ダイナミックな景観や被写体をワイドで撮られるのがお好きなのですね。今までは国内での撮影がメインだったそうですが、今後行ってみたい海やチャレンジしたい被写体などはありますか?

中野氏

シロナガスクジラですね。東ティモールやスリランカで見られるようなので、行く機会を狙っています。撮るというよりは、見てみたいですね。地球の歴史上、最大の動物ですからね。恐竜の時代にも、あれほど大きな恐竜はいなかったと言われているんで。そんな生き物がいるんだったら、一度見てみたいという感じです。

好奇心をもって視点を変えてみると、おもしろい写真が撮れる

――中野さんは撮影するときに、心がけていることはありますか?

中野氏

生物が生息している環境が写真からわかるといいなと思っていて、環境情報を入れた写真をなるべく撮るようにしています。今回の受賞作品は、アートっぽい雰囲気で、今まで撮ってきた写真とは実は全然違うタイプなんです。

昨年くらいからフォトコンテストに作品を出すようになったんですが、今回JUPCに応募するにあたって、審査員の先生方の作風も少し見させていただいて。こういう写真ももしかしたら評価してくれる方がいるかもなと思って、出してみたんです。裏話になりますが(笑)。

――中野さんの意図が見事に審査員の先生に伝わったということですね(笑)。ところで、撮影後に現像するうえで、心がけていらっしゃることはありますか?

中野氏

実際に見た雰囲気や色を思い出しながら、現像しています。今回は少しアートっぽくしようと思ったので、現像段階でちょっと誇張はしましたけれど、普段はナチュラル志向です。水中写真は青被りしますが、自然に取り除く程度です。

――ズバリ、「水中写真がうまくなるコツ」はどんなことだと思われますか?

中野氏

とにかくたくさん撮ることだと思います。しかし、会社員ですので思うように海に行けないこともあるので、そんなときは写真展に足を運んだりして良い作品を見て、イメージを膨らませています。私は今まで独学で水中写真を学んできたので、機会があれば水中写真家の方のフォトセミナーにも参加してみたいと思っています。

また、水中は三次元なので、思ってもみなかった角度からの景色が、意外とシャッターチャンスだったりするように思います。好奇心を持って、いろいろな目線でシャッターを切ると、おもしろい写真が撮れるかもしれませんね。

――独学で学ばれてきたんですか! スゴイですね。やはり学生時代からダイビングを続けてこられていたから、海の中でどう動いたらいいか、潮の流れはどうか、どのへんに被写体がいるのかなどは、よくわかられていたのかもしれませんね。

中野氏

あまり何も考えてないかもしれませんが(笑)。カメラの設定を決めてから海に入るので、水中ではシャッターを押すだけで、細かいことはあまりしなくていいようにしています。その設定で撮れなかったら、諦めようという感じで。

奄美大島で撮影したザトウクジラ。アーティスティックな雰囲気の写真だ(写真/中野駿介氏)

――今後、どのように撮影に取り組まれていきたいですか?

中野氏

今後はジャーナリスティックな視点を取り入れた写真も撮っていきたいと思います。海の中には傷ついた生物などもいたりするので、今まではそういうものを撮るのはどうかな…と思ったこともありましたが、これからは撮っていきたいと思います。

鍵井靖章賞受賞
中野駿介氏 Shunsuke Nakano
中野駿介
学生時代からダイビングを始め、ダイビング歴は13年ほど。ダイビング先で他のゲストの方に一眼レフカメラを触らせてもらったことがきっかけで、水中写真を始める。神子元島と粟国島には毎年潜りに行っている。東京都在住。ダイビング歴13年、約400本、水中写真歴2年。(インタビュー時)

第1回JUPCで鍵井靖章賞を受賞した中野氏のインタビュー、いかがだったろうか? 水中写真を始めてわずか2年でフォトコン入賞を果たされた中野氏だが、今後どんな写真を撮られていくのか、とても興味をひかれた。好奇心をもって撮影することの大切さを、中野氏の言葉から感じた。

第2回日本水中フォトコンテストの入賞作品が発表された!

第2回「日本水中フォトコンテスト」の入賞作品が、4月6日に発表された。第1回に負けず劣らず、素晴らしい作品が揃っているので、こちらもご覧いただきたい。そして、第3回の開催概要も発表されている。グランプリの賞金は、なんと100万円!! ぜひ多くのフォト派ダイバーに皆さんに、フォトコンで腕試しをしていただきたいと思う。

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PROFILE
大学時代に慶良間諸島でキャンプを行い、沖縄の海に魅せられる。卒業後、(株)水中造形センター入社。『マリンダイビング』、『海と島の旅』、『マリンフォト』編集部所属。モルディブ、タヒチ、セイシェル、ニューカレドニア、メキシコ、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、オーストラリアなどの海と島を取材。独立後はフリーランスの編集者・ライターとして、幅広いジャンルで活動を続けている。
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