【恩納村】身近なサンゴが魅力!次世代に繋げる学びも【沖縄ダイビングサービスLagoon】
2018年に「サンゴの村宣言」を掲げ、世界一サンゴと人にやさしい村を目指す恩納村。ダイビングスポットとしても人気のこのエリアだが、実際はどんな海なのか、現地で環境に優しいダイビングのガイドライン「Green Fins」を導入するダイビングショップにそれぞれインタビュー!第1弾ではサンゴの植え付けにも積極的な沖縄ダイビングサービスLagoonの池野正一さんへ、海の魅力や一押しポイント、恩納村のおすすめスポット、そして海の環境の変化についてオーシャナのスイカが聞いてきました!
ポイントの近さと誰でも楽しめる幅の広さが魅力!
スイカ
はじめに、恩納村の海ってどんなところが魅力だと思いますか?
池野さん
恩納村は南北に長く、たくさんダイビングポイントがあります。うちのお店はその中の万座の海をメインで潜っているのですが、人が住んでいる地上と、サンゴ礁、いわゆるリーフエッジと呼ばれる場所がすごく近いことが一番の魅力だと思います。
池野さん
沖縄全体の特徴でもあるのですが、遠浅な場所が多い中、恩納村はドロップオフやサンゴ礁の群生など、見どころとなるポイントまでがすごく近いんです。これは、色々なポイントを潜った学者さんから聞いた話なのですが、たとえばオーストラリアのグレートバリアリーフを代表するようなサンゴ礁は、人が住んでいる所から船で数日かけて行くので、決して身近ではないんですよね。
スイカ
そうですね。毎日クルーズみたいな。
池野さん
そのような朝から船でポイントまで遠征して、ダイビングして夕方帰るっていうスタイルやクルーズツアーではなくて、恩納村なら出港してすぐダイビングポイントがあります。近ければ近いほど、人間環境の影響を受けやすく、自然状態としてはあまり良くないと言われますが、恩納村はそうではないので、そこのバランスがいいのかなと思います。水中で生物や景観が面白いのはもちろん、その一つ手前の話で、距離が近いっていうのがすごい魅力だと感じています。
スイカ
来るお客さんもそういうのを求めてくる方は多いんですか?
池野さん
そうですね。皆さんすごく楽って言います。やっぱり船に乗って移動するだけでも疲れるじゃないですか。年配の人や久しぶりの人にとっては余計にそうなので、一本潜るごとに港に戻ってきて、陸に上がって休憩ができるのは大きなメリットだと思います。1ダイブだけの参加もできるし、潜りたい人は4ダイブとか融通も効く。激しい船酔いで、最後まで帰れないなんてこともないわけです。
見どころはやっぱりサンゴ!ショップオープンのきっかけにも
スイカ
やっぱり一番の見どころはサンゴでしょうか?
池野さん
そうですね。万座の海って見どころが色々あるんですけど、サンゴそのものも魅力ですし、生き物であったり地形であったり、それを支えているのはサンゴだよっていうのはぜひ知って、感じて欲しいですね。
スイカ
地形もサンゴ礁に紐づいているのですか?
池野さん
そうなんです。沖縄本島の北部の方は元から島だったらしいんですが、中南部は、サンゴ礁が隆起してできたそうです。長い年月をかけて水中で作り上げられたサンゴ礁が地殻変動等で隆起して島になり、その上に人が住んでいるイメージです。逆に沈降したところもあり、昔は鍾乳洞や空洞だったところが今では水中にあって、そこがダイビングポイントにもなっています。こういう複雑な地形は、沖縄に限らず世界中にありダイバーを魅了してくれますね!
スイカ
沖縄だと恩納村からダイビングが始まっているような感じでしょうか。
池野さん
30〜40年ほど前にダイビングが広がりはじめたのと同時に、恩納村がリゾート開発に力を入れ出したので、そのような需要ができたんでしょうね。今50〜60代の先輩インストラクターの方々が、「あそこだったら面白いんじゃないですか?」っていう地元漁師さんの情報をもとに、一緒に開拓したという話は聞いたことがあります。そういった意味では、日本のダイビングのなかでも歴史がある場所かなと。
スイカ
なるほど。Lagoonさんは、漁業者と協力してサンゴの植え付けプログラムなどもご用意されてますよね。
池野さん
はい、恩納村漁業協同組合の協力のもと行っています。私たちがお店を立ち上げる前、恩納村のホテルのダイビング部門で働いていたときに、「チーム美らサンゴ」というサンゴの植え付けなど保全活動を行っている団体のイベントに携わっていて、そこで銘苅さんと知り合ったのがサンゴを学ぶきっかけとなりました。
スイカ
漁協がサンゴの養殖をしているんですね。
池野さん
銘苅さん自身は、海ぶどう養殖のパイオニアでもあるんですが、サンゴを守っている理由というのが、自分の子や孫といった次の世代が海に潜った時に、「昔の海は綺麗だったんだよ」っていうのではなく、「サンゴを守ったんだよ」って伝えたいからだとか、綺麗なサンゴを見せてあげたいという想いからなんです。その考えにすごく共感して、この活動を観光客や地元の人たちに広めることが自分たちにできることなのではと思い、2013年に独立してダイビングサービスを立ち上げました。
スイカ
サンゴ保全活動を広めたいというのが、一番の動機だったんですね。
池野さん
はい、しかし以前はサンゴの養殖をタブーだと思っている人も多かったです。自然界に人の手を加えることがどうなのか、生物多様性の観点で問題があるんじゃないかという意見が多く、サンゴ礁学会でも、賛否が分かれていたようです。ですが、天然のサンゴと養殖サンゴの遺伝子ゲノム解析の結果、生物多様性には大きく差は見えなかったという研究結果が出て、その後、環境省がサンゴの養殖を推奨し、恩納村全体としても、2018年に「サンゴの村宣言」をして、サンゴ保全に積極的になってきましたね。
スイカ
わりと最近の話なんですね!
池野さん
そのあたりから、観光協会や商工会、サンゴの村に関連した商品開発、普及活動など村内のパートナーと色々取り組むことも増えていきました。SDGsも2015年に始まっていますが、日本では最近注目され始めて、そういう意味では、銘苅さんのサンゴ養殖への想いや私たちの活動を広めたいっていう想いと同じ方向に向かっていて、広める機会が増えてきているのを感じます。世の中でもサンゴに限らず、環境問題に関心を持つ方が増えてきていますが、ただそれと比例して、環境も悪化してるので、急ピッチで行動を起こしていかなきゃいけないっていうのは考えますね。
スイカ
そうですね。一押しのダイビングポイントも、やっぱりサンゴのポイントですか?
池野さん
一押しポイントは「サンゴ畑」です。世界初のひび建て式養殖の海中サンゴ養殖場です。
池野さん
サンゴを見慣れたダイバーの人が見ても、「すごい綺麗!」って思うでしょうし、ベテランダイバーが見ても「おっ!こんなのがあるんだ」って感覚でサンゴ養殖の取り組みを知るきっかけになると思います。シュノーケルでも、体験ダイビングでもご案内できます。生き物も豊富です。
スイカ
どういうものが見られますか?
池野さん
サンゴに住む小さな魚類が多く、スズメダイ、ベラ、チョウチョウウオ、ハゼ、甲殻類は種類が結構多いですね。サンゴの隙間にいるハゼとか、パンダダルマハゼ、イレズミコバンハゼ。穴から出ているハゼではなくて、サンゴの枝の隙間にいるハゼは、そこにいるのは分かっているのに撮るのはかなり難しいですよ。枝の隙間にいるから、隠れてしまったり、ピントが周りのサンゴに合ってしまったり。そういう意味でも、水深が3〜5mと浅いのは長く潜ってゆっくり撮影できるのでいいですね。
スイカ
Lagoonさんとしては、どういったダイビングスタイルが得意ですか?
池野さん
お客様のレベルに合わせたフォロー、ガイド、サービスを目指しています!実は2021年4月から体制と料金を変えたんです。
スイカ
おおっ!
池野さん
ファンダイビングではビギナー(初級)コースとスタンダード(中級)コースを設定し、お客様のダイビングレベルやフォローの必要性に応じてコースとして完全に分けてご案内しています。ランクにより最大水深も変わりますし、中性浮力などのダイビングスキルが未熟で陸上、水中の手厚いフォローを望むビギナーコースは料金を高く設定しています。
スイカ
この価格設定にチャレンジしようと思った背景はなんですか?
池野さん
1つはサンゴや海洋生物等の“持続可能な環境を守るため”です。珍しい水中生物を見たいダイバーは多いですが、それ以上にフォローが必要なダイバーが多いのが現状です。そういったビギナーダイバーやブランクダイバーはレアな水中生物よりもエントリー、潜行、浮上、エキジット、中性浮力等にフォローを求めています。その時にガイドがガイドに専念すれば持続可能な環境を守ることは難しいですし、万が一の事故が起こるリスクも上がります。もちろん中級以上のお客様が来店された際もフォローをしながらガイドさせていただきます。目指すところは、適正価格できちんとサービスが受けられるお店です。
スイカ
適正価格、とても大事ですね。
池野さん
ダイビング業界が持続可能であるためにも、労働環境を整えたいというのも大きな理由です。薄利多売の低賃金と呼ばれる業界ですが、しっかりとしたサービスを提供できれば選んでいただけると信じています。この仕事が一生の仕事にならないというのは、やっぱりもったいないので。
スイカ
個人的にはとても共感しますし、そういう意識で取り組んでいるショップにガイドをお願いしたいと思いますね。
池野さん
安全で楽しいダイビングを提供するのは今まで通りやって行くんですけど、お客様も地球環境も、ダイビングショップで働く人もみんながWin-Winな環境を整えていきたいと考えているので、そういうことに取り組んでいるっていうのに共感とか評価していただけたら嬉しいです。
アフターダイブはゆっくり散歩を楽しんで
スイカ
海以外で、恩納村の一押しスポットはどこですか?
池野さん
色々あるんですけど、ゆっくり過ごすという意味なら、お店から数分のところにある南恩納の海岸線を散歩するのはおすすめです。天気が良い時に行くとめちゃくちゃ綺麗です。全然人もいないし。
スイカ
散歩が最高。
池野さん
水平線と夕日が綺麗です。何もないんじゃなくて、ちょっと島があったり、ちょっと木があったりっていう感じで夕日を見るのが好きですね。
スイカ
私もその近くの干潟とか好きで、よく寄ります!
池野さん
目の前にアーサや、モズクの養殖をしているところがあって、あの辺りは結構面白いですよ。干潮ですごい潮が引くタイミングでは奥の方の島まで陸続きになるので、歩いていて向こうに渡り、ちょっと探検して潮が満ちる前にまた帰ってくるってこともできます。
サンゴは増えている!? 大白化からの復活
スイカ
海の環境は変化していると思いますか?
池野さん
水中に関して言うと、僕が潜り始めた2005年ごろに比べるとサンゴは増えていると感じます。スポットによっても変わると思いますが、生後5~10年未満の若いサンゴが多いエリアは、1998年の大白化の時に激減したエリアらしいです。この光景を見て、“死んだサンゴの上に、自然と新しいサンゴが育つ”この繰り返しでサンゴ礁が造られているんだと実感します。
スイカ
すごいですね。復活というか、新しいサンゴが増えているんですね。
池野さん
ただ海水温は上昇しているというデータは出てるので、サンゴの種類や耐性が変わってきてるのかもという意見もありますね。
スイカ
なるほど。他にはありますか?
池野さん
15年ぐらい前から、ダイビング協会で毎月ビーチクリーンを行っていたんですけど、ゴミの種類が変わってきてると感じます。漂着ゴミが溜まりやすいエリアなので、以前からゴミはあったのですが、原形のないプラスチックゴミや小さくなったプラスチック片(マイクロプラスチックとも呼ばれる)が目に付くようになりました。色んな生き物が海洋ゴミで苦しんでいる写真、動画をSNSなどで見ると心が痛みます。
サンゴと共にこういった海洋問題を伝えたり、できる事を行動し続けていきたいと考えています。
スイカ
池野さん、ありがとうございました。
未来にサンゴを残していくだけでなくダイビング業界の持続可能性についても語ってくれた池野さん。サンゴのことを学びながら、自分のレベルにあったダイビングを楽しんでみてはいかがだろう。
取材協力:沖縄ダイビングサービスLagoon
私たちは『持続可能な環境』を守るため『持続的な企業』となるためGreen Finsを実践し、スタッフ全員が「おもてなしの心」で皆様に笑顔溢れるひとときを過ごしていただけるようサポートさせていただきます。
Green Fins
UNEP(国連環境計画)とイギリスのReef World財団によるサンゴ礁保全の取組み。環境に配慮したダイビングやシュノーケリングのガイドラインの作成と、それを遵守しているダイビングショップの評価・認定を行なう。世界ではフィリピン・ベトナム・タイなど11カ国、約600のダイビングショップに採用され、日本では沖縄県の恩納村が本格導入を進めている。
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