市民科学が海を守るためにできること
かつては、研究のための研究、つまり人類と自然界に関する集約された知識を発展させるための研究を行うことができました。しかし、21世紀は、私たちの行動が自然界に容赦なく影響を及ぼすことが明らかになり、自然科学の研究が環境の保護と持続可能な管理に応用されることが一般に期待されるようになったのです。
なぜ海洋に市民科学者が必要なのか
なぜなら課題があるからです。海は本当に、とても広大です。その大きさは、私たちの世界の71%を占めるほどです。私たちは海底よりも月の表面のことをよく知っていると言われていますが、それは決して嘘ではありません。海洋環境の広大さは、研究するとなると、物流面でも経済面でも恐ろしいものです。年月を重ねるにつれて、現代の科学者たちは、自分たちだけで海洋環境の研究を行うことができないことに気づくようになりました。そこで登場したのが市民科学です。
一般の人々が自然界に関連するデータを収集し、分析することは、総じて科学者との共同プロジェクトの一環となります。
海のための市民科学プログラムは非常に多く存在しています。
たとえば、海洋の健康状態を推測するための指標となる種を用いて生態系を監視したり、個々の種を記録してその範囲や行動に関する私たちが持つ知識の相違を埋めたり、あるいは海洋ゴミのような重要な問題の調査に協力したりすることができます。プログラムによっては、トレーニングを受け、時間を割く必要があります。また、カメラ(と水中ハウジング)さえあればできるプログラムもあります。
ダイバーである私たちは、多くの科学者以上に、海上や海中にいる機会があります。これが、海洋モニタリングへの参加がGreen Finsの行動規範の一部である理由の一つでなのです。
この活動から何を得ることができるのか
私たちの根底にあるのは、自然界に魅了された子どもです。モニタリングプログラムに参加することで、きれいなサンゴ礁を見ていたのが、複雑なサンゴの街で100万匹もの生物が一体となって活動しているのを見ることへと変化し、あなたの体験をより素晴らしいものできます。ジンベイザメやマンタの目撃情報を追跡して、その移動パターンを確認したり、さまざまな生物が互いにどのように関連しているかを学ぶことができます。場合によっては、あなたが名前をつけることもできるかもしれません。また、自然保護活動だけでなく、自分の仕事に活かせる新しいスキルを身につける機会でもあります。
ダイビングショップは市民科学から何を得ることができるのか
もしあなたがダイビングショップやシュノーケリングショップをやっているなら、地域プログラムをサポートすることを検討してみてください。たとえば、ゲストが自分でできるプログラム(ID写真の提出など)を推進することもできますし、モニタリングプログラムのためにスタッフを訓練することもできます。
そして、海洋に関する深い知識を持つスタッフの価値を過小評価しないようにしましょう。彼らはゲストに地域や野生生物について詳しく話すことができるだけでなく、地域環境に対してより強い責任感を持ち、あなたの事業の環境方針を改善する手助けをしてくれるかもしれません。
また、地域プログラムをサポートすることで、より多くの観光客が求めている、他とは違う有意義な体験ができるオプションも提供できます。さらに、いくつかのプログラムを通じて、活動に参加している他の事業者だけでなく、データを扱う学者や政府関係者などの強力なネットワークとつながることができます。こうしたつながりは、地域の環境危機があなたのビジネスに影響を及ぼす可能性がある場合、非常に貴重なものになります。
気をつけるべきこと
すべての市民科学プログラムが同じというわけではありません。プログラムに参加するために時間と労力を費やす場合は、以下の点に留意し、正当な科学と効果的な保護に精力を注げるかどうかを確認してください。
- ●環境に害を与えることなくデータを集めることができるか?
- ●保護しようとするものにダメージを与えないような方法やスキルのトレーニングが受けられるか?
- ●研究対象の生物にストレスを与えないよう、データ収集のためのガイダンスや行動規範が提供されるか?データを受け取るのは誰か?彼らはそのデータを使って何をするのか?データは効果的な政策変更や管理計画の更新に使用されているか?
世の中には何千もの市民科学プログラムがあります。以下は、世界的に有名な取り組みのリストですが、国や地域のプログラムも忘れずに探してみてください。
海洋生物と生態系
・Reef Check
・Seagrass Watch
・iSeahorse
・iNaturalist
大型動物類
・Whale sharks (Wildbook)
・Mantas (Manta Matcher)
・eOceans
・Internet of Turtles
もしあなたが、休日や仕事にもう少し目的を持ちたいと考えているなら、市民科学に参加することは、あなたにぴったりかもしれません。このほかにも市民科学に関して何かご存知のことがあれば、ぜひコメント欄で教えてください。
元記事:GREEN FINS記事「Citizen Science: How you can help protect the oceans」
翻訳:Yuki Tanaka
Green Fins 連載(連載トップページへ)
- 日焼け止めとサンゴへの悪影響について、できること・知っておきたいこと
- 旅行中のプラスチック使用量を削減するヒント
- 海中クリーンアップを成功させるためのポイント
- 「海洋プラスチック」の存在について、私たちが知っておきたい8つのこと
- 写真家の声を集約!Reef-Worldが発表した水中撮影の新ガイドラインをチェック
- 魚にエサを与えてはいけない5つの理由
- はじめてのスキューバダイビングで学んだ5つのこと
- 市民科学が海を守るためにできること
- サステナビリティ・インタビュー vol.1「Bali Scuba」
- サステナビリティ・インタビュー vol.2「Bubbles Dive Centre」
- ゲストがサンゴ礁にダメージを与えないように促す9つのポイント【ダイビング事業者必見】
- ビーチクリーンや水中清掃が世の中に与える7つの良いコト