写真家の声を集約!Reef-Worldが発表した水中撮影の新ガイドラインをチェック
国連環境計画(UNEP)の取り組み、「GREEN FINS(以下、グリーンフィンズ)」の国際コーディネーターであるReef-World(以下、リーフワールド)が先月、ダイビングやシュノーケルを行う事業者に向けた新たなガイドライン「Green Fins Environmental Best Practice for Underwater Photographers」を発表した。この新しいガイドラインでは、水中で写真撮影をする際に、海洋生態系を壊さないよう環境に配慮した撮影方法をゲストに勧めるための方法などを詳しく記載。また同時に、イラストでわかりやすくまとめたポスターも公開している。
過去にも度々紹介しているリーフワールドの取り組みはこちら
水中撮影時の海洋生態系への悪影響ってどんなこと?
カメラや水中ハウジングの入手が容易になったことや、撮影した写真をソーシャルメディアで共有することが一般的になったことにより、ますます人気が高まっている水中撮影。しかし、ダイビング中にカメラを使用すると、注意力が散漫になり、浮力や体勢が変化して海洋環境にダメージを与える可能性がある。また、完璧な写真を撮るために、海洋生物やサンゴを動かしたり、操作したりすることも。これは、海洋生物にストレスを与え、生態系の健全性を損ねる原因にも。
サンゴ礁の健全性に関する最新の国際調査「The Sixth Status of Corals of the World: 2020 Report」によると、気候変動を起因とした地球規模の脅威に対処しながらサンゴ礁の回復力を維持するためには、サンゴ礁への部分的な圧力を軽減することが非常に重要であることがわかった。これには、海洋観光による悪影響も含まれている。
新しいガイドラインを作った目的とは
【日本語訳】
※左欄上から順に翻訳
<すること/ DO >
・器材がぶらぶらしないように固定する(例:ゲージ、レギュレーター など)
→リーフの上を通ってダメージを与えることがないように
・近づく前に状況を把握する
→リーフに触れないように、自分とカメラの位置を決める。
・中性浮力、ホバリング、写真撮影のスキルを練習する。
→カメラを持って潜る前に。高度な浮力調整で海洋環境へのダメージを防ぐ
・じっと我慢する
→被写体が怖がらないように、じっと我慢する。そうすることで、より長く、前向きな出会いが得られ、素晴らしい写真を撮ることができる。
・ゆっくりと後ろ向きに泳ぐことを覚える
→ダメージを与えずにサンゴ礁から離れることができる
・ナイトダイブでは、ライトの取り扱いに注意しましょう。
→夜行性の行動を妨げたり、眠っている魚を起こしたりしないように。
・Green Finsのベストプラクティス(環境に配慮した潜り方などの行動規範)をきちんと守ってるガイドへチップを支払いましょう
→環境への配慮に感謝していることを伝えてください。
<してはいけないこと / DON’T>
・ 特定の海洋生物に固執しすぎるのはやめましょう
→特定の海洋生物ばかり見ていると、ゲストに楽しんでもらうために、いい写真を撮って喜んでもらうために、ガイドは海洋生物を触ったり動かしたりしてしまうかもしれません。特定の海洋生物を見たいと思うことは大丈夫ですが、固執することなく、水中で目にするすべてのものに感謝すると、ダイビングがより楽しくなるでしょう。
・海洋生物を触ったり、操作したり、追いかけたりしない。
→鮮明な写真を撮るために、手や他の器材(例:指示棒)を使って海洋生物を動かさない。操られるとストレスがたまります。
・サンゴに触らない、持たない、壊さない
→サンゴを支えたり、撮影のためにサンゴを動かしたり壊したりしない。
・海洋生物の写真を撮りすぎない。
→1人のダイバーがフラッシュを使って撮影するのは5枚までにしましょう。フラッシュを使いすぎると、海洋生物が怖がったり、ストレスを感じたりします。
・海洋生物のスペースを侵害しないこと (クリーニングステーションなど)
→近づきすぎると被写体が逃げてしまうからです。動物が身を隠したり、体色を変えたり、泳いで逃げようとしたりして、ストレスの兆候を示した場合は、別の対象に移りましょう。
・ 土砂をかき回さない
→中性浮力を保ったり、必要に応じてフィンの先を砂の上に軽く下ろしたりして、堆積物をかき混ぜないようにしましょう。
このように新しいガイドラインでは、マリンツーリズムの専門家が水中で撮影をしたいゲストに対して、環境に配慮した撮影方法を推進し、サンゴ礁やその他の海洋生態系に悪影響を及ぼす行為を防止することを目的としている。 推進している撮影方法としては、浮力スキルの向上から、特定の生物に固執しないことまで、ダイビングの専門家や長年の活動経験を持つプロの水中写真家から集約された幅広い推奨事項が含まれる。。
リーフワールドのプログラムマネージャー、サマンサ・クレイヴン氏のコメント。
「水中写真は、海の楽しさを表に出し、海洋環境とのつながりを育むことができる強力な保護ツールです。しかし、管理が不十分だと、私たちが好んで撮影する動物たちにダメージを与えてしまう可能性があります。私たちの調査によると、カメラ(コンパクトまたは一眼レフ)を持ったダイバーがサンゴ礁に接触した割合は52.7%でした。このガイドラインは、事業者から写真家まで、すべての人が影響を減らし、将来の撮影対象を守るために役立つでしょう 」。
引用元:Reef-World
このガイドラインのポスターはグリーンフィンズのサイトから無料でダウンロードが可能となっている。事業者の方はトイレに貼っておくなど小さなアクションから、また水中撮影をする方は、普段の撮影方法の見直しのきっかけにしてみてはいかがだろうか。
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