ビーチクリーンや水中清掃が世の中に与える7つの良いコト
「人が少ない穴場の海でセルフィーや休日の写真を撮るのを楽しみにしていたのに、水面やビーチがごみだらけと感じた」、「水中で写真映えする生き物を見つけたと思ったらガラス瓶から這い出てきた」、なんて経験をしたことがある人も少なくないはず。
そんな身近に潜む海のごみは、海洋生態系とそれに恩恵を受ける人々の生活を脅かす深刻な問題である。そんな中で良いニュースと言えるのは、海洋ごみは人為的な問題であり、私たち人間が自分たちで解決解決することができるということ。
そんな角度で考えた時にまず行動に移せるのが、クリーンアップや水中清掃ではなかろうか。そこで本記事では、海岸や海中の清掃活動が力を発揮する7つの理由を紹介しよう。
ビーチや海岸の清掃活動は、巡り巡って漂着ごみの量を減らす
波や海流は、海岸線に落ちているかなりの量のごみを陸に押し流す。これはある意味良いことだ。なぜなら、ごみが陸に戻ってくることで、それが再び海に流れ込まないようにするチャンスが生まれるからだ。陸上にあれば、海中を漂っているわけではないので、海洋生物への影響は少ないだろう。
しかし、陸上に漂着したごみは陸上動物にとって脅威であることに変わりはない。海洋ごみが海洋動物や陸上動物に与える影響は数多い。たとえば、ビーチに漂流しているごみが、ウミガメの赤ちゃんが海に戻って生活を始めるのを邪魔する。また、アホウドリがプラスチックを餌と間違えて取ってきて、雛鳥に与えてしまうなど、たくさんの動物が、ごみを飲み込んだり、窒息したり、絡まったりして被害を受けている。そういった陸上動物の被害を抑えるためにも、継続的な清掃活動は必要なのだ。
また、海洋ごみの一種であるプラスチック製品は人間へも影響を与えうる。なぜなら、プラスチック製品が本当に分解されることはないからだ。マイクロプラスチック(長さ5mm以下の小さなプラスチック片)と呼ばれる小さな破片に分解されるだけで、それを体内に取り込んだ魚を食べるなどして、私たちの食物連鎖の中に入ってしまうのだ。海洋ごみは海洋生物にとって危険であると同時に、人間にとっても有害な可能性を秘めている。そのため、清掃活動は人間を含む海洋生物と陸上動物の両方に恩恵をもたらすことになる。
水中清掃は海洋生物がより安全に過ごせる環境をつくる
タツノオトシゴが海藻やサンゴではなく、綿棒に掴まっている姿や、クジラが廃棄漁網(=ゴーストネット)に絡まっている姿を見たことがあるだろうか。メディアで目にしたことがある人も少なからずいると思う。本来、あるはずのない人工物が海洋生物が住んでいる自然環境に入り込んでいるのだ。少し考えてみてほしい。自分の家の敷地内にごみを捨てられたらどう思うか。
水中清掃は、海洋生物の生息地からこうした脅威を取り除き、海の生物にとってより安全な場所にするのに役立つ。また、太陽の光にさらされた海洋ごみは分解され、海洋生物や私たちの健康に害を及ぼす可能性のある化学物質を海に放出する。つまり、清掃活動によって水中の有害化学物質を除去し、減らすことにも貢献できるのだ。これは海洋生物にも人間にとっても嬉しいことだろう。
清掃活動は持続的な地域社会をつくりだす鍵となる
ごみは見苦しいだけでなく、ごみに囲まれて生活していると、心身の健康に影響を与えることもある。また、割れたグラスや鋭利な金属などのごみは、怪我を引き起こす可能性がある。しかし、それ以上に不吉なのは、プラスチックや電池などから溶け出し、地表や地下水を汚染する有害物質である。
投棄されたごみが広範囲に集まると、昆虫やネズミなどの害虫を引き寄せ、病気を蔓延させる可能性もある。また、ごみが生活の近くにある環境にさらされ続けると、心理的な影響を及ぼし、自尊心が欠かれ、うつ病につながる可能性があることが研究で示されている。より清潔で緑豊かな環境は気分を高揚させ、その地域に住む人たちの幸せにもつながる。
きれいなビーチは地域経済の活性化につながる
多くの海沿いの地域のレストラン、宿泊施設、マリンアクティビティなどは、観光によって支えられている。汚染されたビーチを自撮り写真の背景にしたい人はいないし、ましてや汚れた地域に滞在したい人はいない。きれいなビーチがより多くの観光客を惹きつけることは、当然のことだろう。
加えて、観光客が増加することで地域経済はもちろん、その地域のマーケティングにも貢献してくれる。美しいビーチで撮った自撮り写真や動画を観光客がSNSで投稿することで、その地域の宣伝につながるのだ。
ごみのデータ収集が新たな政策に反映される絶好の機会
たとえば、Clean SwellやDive Against Debrisのようなアプリは、清掃活動で収集されたごみのデータを記録・報告するのに役立っている。たとえば、世界中の政策立案者が、世界の海洋ごみを減らし、ごみ管理を改善するための長期的な解決策を立てたり実行するためのデータとして活用することができるのだ。また、 データを記録しながらごみを分別することで、何がごみの大部分を占めているのかごみ拾いをした人々自身が直接知ることができる。そうすることで、自分たちのごみをより意識するようになり、ごみゼロを目指したり、消費についてより賢い選択をするという考えを植え付けることができるだろう。
クリーンアップイベントは海洋ごみ問題への関心を高めるのに最適
クリーンアップイベントでは、地元の子どもや大人、世界中から訪れる観光客などさまざまな人々と出会うことができる。そのため、クリーンアップイベントは、地域社会や多くの人々の意識を高める絶好の機会となる。こうしたイベントをきっかけに、将来的に清掃活動を企画したり、参加したりするボランティアも出てくるかもしれない。ごみはどこにでもあり、深刻な問題として広く知られていますが、実際の根本的な問題を知らない人もいるかもしれません。海洋ごみとは何か、環境への悪影響は何か、どうすればごみを防ぐことができるのか。
ごみ拾いに加え、環境に関する事実をゲーム感覚で伝えることができたらどうだろうか。楽しみながら海ごみや環境問題の現状を知ってもらうこともで、より幅広い層に訴求できるかもしれない。たとえば、ごみの内訳の表や画像を使って、「ビニール袋が海で分解されるのに何年かかるか?」をクイズにする。こうすることで、参加者の関心を大幅に向上させることができ、人々がごみ管理を見直し、永続的に習慣を変えていくよう促すきっかけを作り出すことができるかもしれない。
ごみを適切に処理することで、エコなサイクルが生まれる
ビーチや海中のごみを集めることで、ごみにもう一度チャンスを与えることができる。もしかしたら、清掃中にびっくりするようなものを見つけるかもしれないし、アップサイクルやリサイクルによって、第二の人生を送れるような品物に出くわすかもしれない。また、過去のデータを参照することで、適切な方法で処分することができ、すべてのごみを埋立地に送ることを防げる。
適切にごみを処理したり管理したりすることは、海の健康に繋がるだけでなく、経済成長を促進し、私たちをより健康にし、温室効果ガスの排出を削減することができるのだ。
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