Green Fins 連載(第7回)

はじめてのスキューバダイビングで学んだ5つのこと

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初めてのスキューバダイビングで学んだ5つのこと

スキューバダイビングは、新しいスキルを習得するときの恐怖や、想像を超えた場所の探索など、さまざまな可能性を開くと言われています。数年前、私は幸運にもインドネシアのギリ諸島の3つの全ての島でリーフダイブをする機会がありました。

初めてのスキューバダイビングで私が学んだことをいくつか紹介しましょう。

1.ダイビングは瞑想に似ている

私はこれまで、スキューバダイビングはアドレナリン中毒者のためのアクティビティだと考えていました。しかし、初めて潜った後、スキューバダイビングは過激なスポーツというよりもずっと、ヨガや瞑想と共通点が多いことに気がつきました。

陸上では、頭脳(と携帯電話)をオフにするのは大変なことです。呼吸は何も考えずに無意識に行うものであり、立ち止まってただ「無」になる時間はめったにないのです。

ダイビングの場合は、水中に浸かるという感覚体験ができるので、まったく別の世界になります。水中に身を置くと、感じるもの、聞くもの、見るものすべてが鮮明になります。呼吸はゆっくり、目的を持って、リズミカルになります。そして、息を吸うたびに自分の動作がどのようにつながっているのか、突然気付くのです。

自然が繰り広げる圧巻のパフォーマンスの中に立たせれると、とても感覚が研ぎ澄まされるのです。これこそ、今を生きるということだと思います。

2.スキューバダイビングでは、私たちは別世界の訪問者

初めてスキューバダイビングをするまでは、陸上での私たちの生活がいかに人間中心であるかということについて、あまり考えたことがありませんでした。高速道路からファーストフードに至るまで、すべてが人間の体験を中心に回っているように見えます。私たちが宇宙の中心と、私たちは思っているのです。

しかし、ダイバーとして海の世界に足を踏み入れると、まったく別の話になってきます。突然、あなたは部外者になるのです。他人の家にお邪魔しているようなものです。

初めて見るサンゴ礁は、身がすくむような体験です。特に、目の前にあるほとんどすべてのものが生きており、生命の繊細な生態系の一部であるからです。水中に潜った瞬間から、生物多様性の広大な宇宙の静かな観察者になるのです。クマノミがイソギンチャクの間を縫うように泳ぎ、コブシメが好物のサンゴをむしゃむしゃと食べる。ここにあるすべてのものには、あるべき場所と目的があります。私たちが手にしたり、触れたりできるものは何もないのです。突然、自分の世界がちっぽけに感じられ、海がいかに素晴らしく、貴重なものであるかに気づかされます。

3.サメは悪者ではない(悪者なのは私たち)

多くの子供たちと同じように、私も映画「ジョーズ」を見て育ちました。しかし、成長しても、どこで泳いでもついて回るような不気味なイメージを振り払うことはできませんでした。結局のところ、サメは悪者なのでしょう?そう信じこまされてきました。

このサメへの不合理な恐怖は、ギリ島までついて回っていました。ダイビングを始める前、バディに「サメに会わないことを祈るよ」と言いました。だから、初めてサメに遭遇したとき、自分の気持ちに驚きました。何年もずっと不安を拭いきれなかったこの瞬間。でも、恐怖は感じませんでした。ただ、安らぎと感謝がありました。

それは一匹のブラックチップシャークで、サンゴの間を優雅に泳ぎ回り、隠れ場所を探しているのを、私は嬉しそうに見ていました。このとき初めて、サメを新しい視点で見ることができたのです。臆病で脅威を与えることもしません。人間によって毎年最大1億匹ものサメが殺されているこの世界で、ただ生き延びようとする動物でした。そう考えると、誰が本当の悪者なのかが簡単にわかるでしょう。

4.冷静さは力なり(水中でも地上でも)

スキューバダイビングから学ぶことは、陸上での世界の体験に大きな影響を与えることがあります。プレッシャーの中で(文字通り!)冷静さを保つこともその一つです。

水中では、マスクの水没や強い潮流など、さまざまな予期せぬ事態が発生します。このようなストレスの多い状況は、特に初心者ダイバーにとってはパニックに陥りやすいものです。しかし、パニックになると、身体は厳戒態勢に入ります。心臓の鼓動が速まり、呼吸は速くなり、論理的な思考ができなくなるのです。

スキューバダイビングは、困難な状況に陥ったときに冷静さを保つことの大切さを改めて気づかせてくれます。立ち止まり、呼吸し、考え、行動することを教えてくれるのです。これは水上でも有効な方法です。人生にはストレスがつきものです。自分の力が及ばないときでも、コントロールできるのは自分自身です。だから、深呼吸をしてみてください。

5.海は私たちの手で守らなければならない

私は初めてスキューバダイビングを体験し、海に対する深い感謝と、海を守るための環境保護への意識を新たに持つようになりました。今、私はダイバーがなぜこれほどまでに海洋やサンゴ礁の保護に情熱を注ぐのかを理解しています。ダイバーは、どれほどの危機にさらされているかを知っているのです。

サンゴ礁は素晴らしい場所です。見た目が美しいだけでなく、何千種類もの魚の餌や生息地にもなっています。また、海岸を暴風雨による浸食から守り、地域経済にも利益をもたらしています。しかし、そんなサンゴ礁も今、危機にさらされています。

気候変動、不適切な漁法、汚染、無責任な観光などは、サンゴ礁が直面するストレス要因のほんの一部に過ぎません。
良いニュースは、私たち全員がサンゴ礁を守るためにできる簡単な取り組みがたくさんあることです。例えば、Green Finsのメンバーと一緒にダイビングをすることを選択したり、海洋生物に触れたり取ったりしない、サンゴ礁に優しい日焼け止めに切り替える、などです。

今日、私たちがとった行動は、将来にわたって海とサンゴ礁を保護するために役立つことでしょう。

元記事:GREEN FINS記事「5 Things I Learned From My First Scuba Dive」

ライター:HANNAH HESFORD
翻訳:Yuki Tanaka



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PROFILE
Green Fins(グリーン・フィンズ)は、 リーフワールド財団国連環境計画(UNEP)によって実施されている国際的なサンゴ礁の保全管理アプローチ。海洋観光による環境への悪影響を見える化し、削減している。海洋観光関連企業が環境に悪影響を及ぼす運営方法に対して、実用的で低コストの代替手段や戦略的なトレーニング、サポート、リソースを提供することにより、ダイバーやシュノーケラー、ダイビング業界と周辺地域のコミュニティ全体でサンゴ礁への悪影響を軽減する。
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