バリのダイビング漂流事故から1年 ~これからのこと~
バリ島の漂流事故の発生から1年が経ちました。
率直な思いや今後の動きについてお伝えしたいと思います。
まず、この事故へのオーシャナの関わりをごく簡単にご説明すると、事故発生時、情報が錯そうする中、現地とのパイプがあったため、把握する情報をお伝えしていました。
それらの情報と接した、漂流者に近い人たちから、捜索のため民間ヘリを飛ばしたいという協力依頼があり、サイト上で捜索協力金を募ったところ、最終的に600万円を超えるお金が集まりました。
しかし、500万円を超える余剰金が出ることになり、それを“ダイビングの安全”のために使うこと、NPOで管理していくことなどを報告させていただきました。
※詳細は文末の記事リンクを参照ください。
NPO「Dive For Safe」を設立します
まず、諸問題もクリアし、順調に受理されれば2015年4月、NPO「Dive For Safe」が設立されることになります。
さらに、海やダイビングの分野の安全や公益事業に理解の深い日本財団に賛同いただき、寄付金の他に助成金も受けることになり、ダイビングの安全や民間レベルでの救助活動、災害対策等を目的として活動していきます。
NPOのより詳細な活動内容は、設立時に改めて発表させていただきます。
※設立準備期間中、日本財団に基金を設立していただきました。
バリ漂流事故を総括します
「Dive For Safe」でまずやるべきことは何か。
今後、ダイビングの安全のために幅広い活動をしていく予定ですが、まずやるべきは、バリの漂流事故の総括だと考えています。
たくさんいただいたダイバーからのご意見から、皆さんの意見が集約されたものをひとつ紹介します。
「あれだけメディアを騒がせたバリ島の漂流事故が、具体的な検証もなされず、風化されようとしている事実に正直驚いています。我々一般のダイバーにとっても、衝撃的な事故でしたし、天候の問題や、経済的な問題で救助活動に制限がかかる切羽詰った状況に、何か少しでも我々にできることがないのか?という気持ちに至った記憶が蘇ります」
まったく同じ気持ちです。
ただ、尊敬するダイバーから、「皆の頭がクールダウンしてからがいいでしょう。1年待った方がいい」とのアドバイスを受け納得。
事故の一応の区切りをつけた時から1年が経ち、NPOの設立する4月に具体的に動いていきます。
この総括は、ダイビング界全体で行なうことに意味があると考えます。
また、ダイビング界には、我々よりずっと豊富な知識や経験を持った方々が多くいますので、Dive For Safeは彼らの能力が最大化するようお手伝いをさせていただきます。
ただ、ひとつ不確かなことは、率直に、当事者にどれくらい協力いただけるか、ということです。
漂流者、旅行社、現地の事業者、海洋警察……etc.
話したくない、話せないなど、それぞれの立場で事情があるでしょう。
また、当時、情報把握のためにコンタクトを取った際に、ご理解いただけず(自分の不徳の致すところです……)関係が悪くなったケースもあります。
公益性のある団体で検証をすることのリスク、というか難しい諸問題もあります。
先日、一周忌直前に遺族の一人とお会いしましたが、ご家族の中にはショックから立ち直れず、心を患っている方もいらっしゃるので、あまり情報を耳に入れたくないという思いがある一方、「この事故をダイビングの安全に活かしていただくことが大事だと思います」とも言っていただきました。
遺族の方々に終わりはありません。
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ということで、どこまでの規模で、どこまでの協力を得て、どこまでの検証、何に対する総括ができるかは不透明ですが、ダイビング界なりの総括と今後に向けた発展的提案のために全力を尽くしたいと思います。
例え、当事者、直接の関係者からの情報がなくても、明らかにされている事実からテーマを設定し、ダイビングの安全について考えることはできます。
例えば、事故の際の保険の役割とは? 有効なセーフティーグッズとは? ボート側のレギュレーションは? ドリフトで気を付けることは? などなど、この事故をきっかけに、きちんと意見を収斂させて発表することは意味あることだと考えます。
まずは、4月頭に、どこかで僕から一般公開でご説明する場所を設け(もちろん、来られない方に向けてはWEBで報告します)、その後、ダイビング界を中心に有識者に集まっていただき、検証(?)・総括の方法を検討し、可能であれば現地にも行き、ダイバーの事故防止、安全に役立つ報告ができればと考えます。
※
「Dive For Safe」は“皆さん”の「助けたい」という思いから出発し、「ダイビングの安全のために」との思いで設立されます。
便宜上、僕が代表を務めますが、気持ちとしては皆さんの気持ちを代弁したり、知恵と経験を持つ人が活躍する場をつないだりする、媒体者という気持ちです。
何卒、ご支援よろしくお願いします。
Dive For Safe代表
寺山英樹