死なないためのダイビングスキル(第2回)

オーバーウエイトによって水面で溺れるリスクと、適正ウエイトの重要性

セブ島のサンゴ(撮影:越智隆治)

潜水事故の多くは水面でおきます。
特に初心者ダイバーのトラブルは、パニックなどを伴って水面で自分の体を浮かせていられなくて溺れるケースです。

“水面で自分を浮かすにはBCに空気を入れればいいんでしょ!”

そう、それでいいんです。

でも、

もし、パニック状態だったら?
もし、レンタル器材だったら?
もし、マスクが外れていたら?

BCに給気を確実にできない人がどのくらいいるでしょう?

それでも1分程度のフィンキックで、水面上に口を無理なく保持できたら、その間に少しは落ち着いてBCに給気できるでしょう。

でも、

もし、フィンキックの練習もほとんどしたことがなかったら?
もし、上手に潜降ができないといって、肺の空気を排気しないで潜降できるほどたっぷりのウエイトを装着していたら?

ひょっとしたら、“もし”に心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

セブ島のホヤ(撮影:越智隆治)

ウエイト量とスノーケルの重要性

初心者の指導で、適正ウエイト量は、「まず自分の肺の空気を全て吐ききって、暫くして(数秒タイムラグがあるから)体が1mほど沈むウエイト量を決める。次に、潜水の後半に空気消費によって失われるタンク内の空気の重さ1~2キロをプラスした量」と伝えています。

上記方法でウエイト量を決めたらば、BCに給気しなくても立ち泳ぎでしばらく浮いてられるはずです。

この程度のウエイトなら、スノーケル呼吸で頭部をある程度沈めて(頭の重さが4~6kgほどある)もフィンキックしないで浮くことが可能で、エア切れでもスノーケルを使いこなせれば楽に水面に浮いていられはずなのです。

でも、

「スノーケルなんて要らない」と言って外している、あ・な・た!は、エア切れでもBCが壊れていても、水面に浮いていられるフィンキックの力があるのですよね!と言いたくなるわけです(言わないけど…)。

それでも、落ち着いてウエイトを捨てられれば浮力確保できますが、パニックに近い状態で冷静にウエイトを捨てることがきるでしょうか?
(ちょいちょいウエイト捨てるわけにもいかないしね)

セブ島のダイバーのシルエット(撮影:越智隆治)

諸悪の根源オーバーウエイトにならないために…

BCから空気を抜いた状態で、水面で自分の口を水面上にしばらくの間、浮かせていられないなら、悪いオーバーウエイトです。

初心者がウエイトをたくさんつける理由は潜降できないからです。
潜降できない理由は、肺の空気を排気できないからです。

人間の肺活量は3~5リットル程度(個人差はあります)で、この肺の空気を排気すれば3~5キロのウエイト持ったのと同じことになります。
肺の空気を排気して潜降できるようになれば、ダイビングのリスクから大きく回避できるのです。

では、潜降時に肺の空気を上手に排気でないのは何故でしょう?

これも簡単です。

  • 肺の空気を排気して潜ることを習っていない(イントラの手抜き)
  • 窒息感に対するストレスが強くて息を吐いてもすぐに吸い込んでしまう
  • バランスが悪くて水面でじたばたしているから呼吸がすぐに乱れる

バランスが悪い以外は数分で改善する練習方法があります!!
それは次回にご紹介します。

今回知っていただきたかったこと。

オーバーウエイトにならないために、肺の空気をしっかり排気して、少ないウエイトで潜降できるようになれば、水面で溺れるほとんどのトラブルは回避できるのです。

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PROFILE
九州は小倉に生まれ、法政大学アクアダイビングクラブでダイビングを始める。

学生時代からインストラクターになり、認定したダイバーは数千人、NAUI時代にコースディレクターとしてインストラクターも多数養成。

インストラクターの集まったNPO日本安全潜水教育協会(JCUE、ジェイキュー)会長、雑誌「月刊ダイバー」ではDUKEヤマナカとしてダイビングテクニックのアドバイザーなどなど、比較的スキルや安全のことに比重を置いて活動している。
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