死なないためのダイビングスキル(第13回)

安全停止中にピタッと止まれますか?自分の身を守るためにも必要な中性浮力

この記事は約4分で読めます。

ニューカレドニアのダイバーのシルエット(撮影:越智隆治)

死なないための4つのスキルができて、安全に、自分の感性にしたがって、海そのものを楽しむだけなら、中性浮力は必須のスキルではありません(前回のコラム「中性浮力ができなくてもダイバーは死なない。しかし…」で書きました)。

では、なぜ、中性浮力がダイバーになぜ必要なの?

  • もっと広い範囲を自由に泳ぎまわりたい
  • 浮遊感を楽しみたい
  • ガイドについて珍しい生物を見たい
  • ドリフトダイビングで大物を堪能したい

こんな風に海を楽しみたいなら、呼吸、バランス、フィンキックをコントロールできる中性浮力のスキルが必要です。

ですが、現在、主流に行なわれているガイド付きダイビングでは、ガイドがダイバーのスキルを見極め、下記のような、スキルの伴わないダイバーでも無理してコースガイドをしているのが実態です。

  • BCを使わないと落ち着いて浮いていられない(自力で潜降できるウエイト量で)
  • マスクに水が入るとパニックになる
  • レギュレーターを外すのは抵抗がある
  • 自分の空気残量を水中で気にしない

これでは中性浮力以前の問題です。
何度も言っていますが、少なくとも「死なないための4つのスキル」ができてはじめて、中性浮力の話ができるのです。

死なない為の4つのスキル

  • 水面で自分をしばらく浮かせていられるウエイトで潜れる
  • レギュレータの呼吸がコントロールできる
  • マスク無しで落ち着いて呼吸ができる
  • エアーの管理が出来る

中性浮力ができれば、体への負荷が極端に減る!?

中性浮力が未熟なダイバーは、遠くのポイントまで行っても、呼吸は乱れ、体力は消耗し、少しも楽しくないはずです。

それどころか、高齢者なら心臓に負荷がかかり、事故に繋がることも少なくありません。
じっとしていたら感じなかった運動負荷による呼吸の乱れが、水中では陸上以上に呼吸負荷に感じ、心肺への負荷に繋がります。

ダイバー用のメディカルチェックにもこんな項目があります。

「中程度の運動(たとえば12分以内に1.6kmを走る)ことができる?」

この中程度の運動とは、凄くゆっくりジョギングする程度です。

「私は高齢者だからこんな運動できないわ~」と思ったダイバーの方や、「私は心臓に疾患があるから、医者に止められているの」と思ったダイバーの方は、すでにOW認定レベルから外れています。

ガイドにすごい負荷(命がけですよ)をかけていることを自覚せねばなりません。
だったら自分の体力に合ったポイントとダイビングスタイルを選ぶようにせねばなりません。

大人の責任ですね。

最近のダイビングの事故は、高齢者の運動負荷が原因で、もともと持っていた疾患を悪化させ、事故に繋がったケースも少なくありません。

中性浮力が上手にできれば、水中を自由に泳ぎまわれて楽しむだけではなく、体への負荷が極端に減り、運動負荷が減れば、空気の消費も格段に少なくなります。

講習でマスターすべき中性浮力のスキル

ただ、一口に中性浮力と言っても、私は「中性浮力はできるわ」と思っているダイバーやインストラクターはたくさんいると思います。
中性浮力の完成度の実感は人それぞれです。

  1. 泳いでいれば中層を泳げるが、じっとしていると沈んだり浮いたりする
  2. 手足を少し動かせば中層で浮いていられる
  3. 5mの安全停止中に、手足を使わずに中層でホバーリングできる
  4. どんな水深でも手足が動かずに(“動かさずに”ではなく)ぴたりと停止できる

実はPADIのOW認定は3.のスキルが必要です。

皆さんはどうですか?

広い範囲を動きまわるためには、最低でも3のレベルのスキルができないと負荷がかかって危険なのです。

※次回は「中性浮力が取れるスキルを身に付ける方法」について解説します。

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

writer
PROFILE
九州は小倉に生まれ、法政大学アクアダイビングクラブでダイビングを始める。

学生時代からインストラクターになり、認定したダイバーは数千人、NAUI時代にコースディレクターとしてインストラクターも多数養成。

インストラクターの集まったNPO日本安全潜水教育協会(JCUE、ジェイキュー)会長、雑誌「月刊ダイバー」ではDUKEヤマナカとしてダイビングテクニックのアドバイザーなどなど、比較的スキルや安全のことに比重を置いて活動している。
FOLLOW