死なないためのダイビングスキル(第3回)

潜降できないダイバー必見!息こらえでオーバーウェイトを解消できる理由

この記事は約5分で読めます。

前回、悪いオーバーウエイトのダイバーは、水面での事故に遭遇する可能性が高くなると言いました。

そして、オーバーウエイトの原因は潜降できないからで、その理由として3つの要因を挙げさせていただきました。

  • 肺の空気を排気して潜ることを習っていない(インストラクターの手抜き)
  • 窒息感に対するストレスが強くて息を吐いてもすぐに吸い込んでしまう。
  • バランスが悪くて水面でじたばたしているから、呼吸がすぐに乱れる。

バランスが悪い以外は数分で改善する練習方法があります!!

それは、“息堪(こら)え”の練習を潜る前に10分程度行うことです。

セブ島のサンゴ(撮影:越智隆治)

息堪えで生まれる自信と実感

さて、どれくらい息堪えができればいいのでしょうか?

陸上で呼吸を整えて、息をイッパイ吸ったら呼吸を止めてください。

“目標は2分”

私は初心者講習の初めにこれをやるのですが、「2分を目標に、息堪えをしましょう」と指示をすると、ほとんどの方が「無理!」と口にします。

でも、実はそんなに難しいことではないのです。

ほとんどの人は、息堪えを始めると数十秒で息苦しさを感じます。
この息苦しさは体内の二酸化炭素分圧が上昇しただけで、体内の酸素が極端に減ったわけではないのです。
何も知らない人はここで、「苦しい」と言って断念。

少し怖い顔をして私が頑張れ!と励まして息堪えを続けてもらうと、2回目の息堪えあたりで初期の息苦しさは我慢できます(慣れるといったほうが正しい)。

初期の息苦しさに慣れて1~2分経過すると、今度は本当に体内の酸素分圧が低下し始めます。
そうすると、“横隔膜が上下に動こうとする”という体の変化を感じるはずです。
これは、体が呼吸をしなさいと信号を送り始めたのです。

気の早い人は「これで窒息して死んじゃう」と思うかもしれませんが、この状態でもまだまだ窒息や意識喪失にはなかなか至らないのです。

ただし、ここで激しく動いたり、周囲圧が急激に下がったりすれば(=素潜り時の浮上)、失神(=ブラックアウト)を起こす可能性があります。

ブラックアウトもすぐに気付けば(安静にして気道の確保やマウスツーマウス)すぐに意識が戻ってきます。

2分間の息堪えを目指して、合間に十分な深呼吸を行いながら息堪えを3~4回繰り返すくらいで、大概の人は2分くらいの息堪えは簡単にできてしまうのです。

1~2分程度の息堪えが出来るという自信と真実がダイバーにとって潜降の難しさを解決する大切な要素なのです。

窒息感を克服した後に、少ないウエイトで潜る

では、実際の潜降の手順を追っていきましょう。

まず、水面で呼吸を落ちつかせて、レギュレーターをくわえたらBCの空気を排気します。
BC内の空気は水面が一番膨らんでいるので、水面でBCの空気はすべて排出します。

(潜降の際、よく水中でインフレーターホースを持って排気しようとしている人がいますが、水面でBCの空気をしっかり排出できたらまったく不要な動作です。いつまでもインフレーターの排気ボタンを押しているとBCに不要な海水が入ってきて、陸上に上がった時に海水の入ったBCを背負って歩くことになります)

BCの排気が終わったら肺の空気をほとんど排気して、排気したまま5~10秒も我慢(息堪えの成果を出すとき)できれば、体は沈み始めます。

1m程度沈み始めた後、少しだけ吸って(1リットルくらい)、再び肺の空気を空にする。

この動作を2~3回行えば、5メートル程度はすぐに潜降できます。
そこまで潜れれば水圧でスーツの浮力が減少して(スーツの浮力は20~25%減少している)、少しくらい肺に空気を入れても浮かなくなるので普通の呼吸ができます。

セブ島のフォト派ダイバーのシルエット(撮影:越智隆治)

潜降のときの裏技

BCの排気をした後に、レギュレーターをくわえた状態で、一旦水面上にジャンプするようにフィンキックで体を少し浮かせてから、その勢いで潜降すると、もっと楽に潜降できます。
※耳ぬきがスムーズな方にオススメ

耳抜きは息を吐いた状態でもできる!

ほとんどの人は耳抜きの動作の前に肺に息を吸い込んでから耳抜きをしますが、耳抜きは肺の空気を全部吐ききった状態でもできます。

耳が抜けづらい人は、最初の排気で少し沈んだ時に耳抜きをしようとして肺に息を吸いこんで、せっかく沈み始めたのにまた浮いてしまう。
耳抜きは息を吐いた状態でもできるので、試しにやってみてください。

窒息感がなくなればできること

窒息感がなくなれば、潜降の際、肺の空気をしっかり排気ができるので、少ないウエイトで沈めます。
そして、それは、水面での重すぎるウエイトのトラブルも回避できることになるのです。

窒息感がなくなれば、素潜りを初めてやった人でも5mくらいなら(耳が抜けることが条件だが)、10分くらいの練習で潜れるようになります。
後の連載でも書きますが、レギュレータークリアーやレギュレーターリカバリーもストレスなくできるようになります。

窒息感がなくなれば、マスククリアーが苦手の人も、平気になるのです。
水へのストレスの多くはダイビング前の簡単な息堪えで解消してしまいます。

嘘だと思ったら、ぜひ試して、陸上で2分程度の息堪えできるようになってください。

最後に

BCにたっぷり給気しないと自分の体を浮かせられないなら、それは正真正銘の折り紙つき“悪いオーバーウエイト”。
なんとかしようと努力しないなら、ダイビングは辞めたほうがいいです。
いつか不幸な事故に遭遇する可能性が高いからです。

または、そんな人とは一緒に潜らないことが事故に遭わないコツです。

息堪えをしている際の注意

一人で海辺やプールサイドやらないこと。
なぜなら、まず怪しい人と勘違いされるからです。

また、もし、すごい根性と我慢強い人で、ついつい頑張ってブラックアウトになってしまったときに助けてくれる人がいた方が良いです(ほぼあり得ないですが(^_^;))

息堪えに慣れても、しばらくすると(窒息感ストレスの強い人は特に)また元に戻ってしまうので、ストレスの強い人はダイビングの前にやっておいた方がいいです。

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PROFILE
九州は小倉に生まれ、法政大学アクアダイビングクラブでダイビングを始める。

学生時代からインストラクターになり、認定したダイバーは数千人、NAUI時代にコースディレクターとしてインストラクターも多数養成。

インストラクターの集まったNPO日本安全潜水教育協会(JCUE、ジェイキュー)会長、雑誌「月刊ダイバー」ではDUKEヤマナカとしてダイビングテクニックのアドバイザーなどなど、比較的スキルや安全のことに比重を置いて活動している。
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