死なないためのダイビングスキル(第8回)

レギュレーターのセカンドステージを突然奪われた時のための準備

前回の記事で、「死なないダイバーは、どんなタイミングでもセカンドステージが外れても、メイン・予備どちらかのセカンドステージでも落ち着いて、笑顔で呼吸が再開できなければなりません」と書きました。

しかし、バディに突然メインのセカンドステージを奪われたら、落ち着いて対処ができるでしょうか?

セブ島のサンゴとダイバーのシルエット(撮影:越智隆治)

エアー切れの際の予備空気源を使った対処は以下のように講習で習います。

  • 1.エアー切れを感じたら、残圧計を見てエアー切れであることを確認
  • 2.バディに向かってエアー切れのサインを出す
  • 3.バディは自分の残圧を確認して、エアー切れダイバーにOKサインを出す
  • 4.バディからOKのサインをもらったら、予備の空気源を受け取り、お互いをしっかりホールド
  • 5.相互の呼吸が落ち着いたらBCのインフレーターホースを持って浮上

って、こんなにすんなり事が進むレベルなら、エアー切れになっていないか、ものすごい経験を積んだダイバー同士でないと無理ですね。

おそらく、エアー切れを認識したダイバーは、ストレスが急上昇し、窒息の恐怖から、泡の出ているセカンドステージを探し始めます。

エアー切れの瞬間に判断するので、バディであろうとなかろうと誰でもいいのです。

そこに美味しそうな泡が排気されているセカンドステージを見つけたら、こんなスピードで泳げるのか!!と驚くほどのスピードで泳ぎ始めます。

この時点で、このエアー切れダイバーは野蛮人レベルですので、「こんにちはごきげんよう、あいにくエアーが無くなったので、あなたのエアーを分けて頂けないでしょうか?」なんて紳士的な挨拶などせずに、いきなりあなたのくわえているセカンドステージを奪い取るでしょう。

この瞬間に、供給者となったダイバーが、予備のセカンドステージを落ち着いてくわえて、エアー切れのダイバーの呼吸が落ち着くのを待つことができずに慌てているようでは、バディもろともパニックになって急浮上するリスクが高くなります。

これでは死なないダイバーとは言えない。

エアー切れのダイバーが上級者を選んで空気をもらいに来るような冷静な判断はしないので、どんなダイバーもエアー供給者となりうるし、セカンドステージが奪わる可能性があるのです。

「私は初心者だから予備の空気源を使って浮上することはない」、「エアー切れのダイバーはインストラクターやガイドと浮上するはず」などとの想定は、全く根拠のない妄想です。

レベルに関係なくいつでも空気が突然に奪われる可能性があるのです。

死なないダイバーは、どんなタイミングでセカンドステージが外れても、メイン・予備どちらかのセカンドステージから落ち着いて呼吸が再開できなければなりません。

水中で落ち着いて呼吸を維持するためには、窒息感に対するストレスを無くすことであり、「呼吸をメイン・予備の両方から落ち着いて確実にできる」こと、「急にメインセカンドステージを奪われても動じない心構え」と「予備のセカンドステージを目隠ししても探せる場所に保持している」ことが重要なのです。

水面で浮いていられて、マスクが無くても落ち着いていられて、水中で呼吸が落ち着いて確保できればダイバーは溺れることはなくなるのです。

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PROFILE
九州は小倉に生まれ、法政大学アクアダイビングクラブでダイビングを始める。

学生時代からインストラクターになり、認定したダイバーは数千人、NAUI時代にコースディレクターとしてインストラクターも多数養成。

インストラクターの集まったNPO日本安全潜水教育協会(JCUE、ジェイキュー)会長、雑誌「月刊ダイバー」ではDUKEヤマナカとしてダイビングテクニックのアドバイザーなどなど、比較的スキルや安全のことに比重を置いて活動している。