死なないためのダイビングスキル(第15回)

中性浮力に必要なダイビングスキル、3つのポイント

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フィリピン、バリカサグ島のギンガメアジの群れ(撮影:越智隆治)

前回、中性浮力がなぜ必要なのかをご紹介しましたが(安全停止中にピタッと止まれますか?自分の身を守るためにも必要な中性浮力)、今回は中性浮力を身につける方法をご紹介します。

まず、水中を広い範囲で楽に動き回り、水中での体のコントロールが思いのままになるための中性浮力に必要なスキルとして、以下の3つが必要です。

  • BCの操作
  • 安定した呼吸と呼吸のコントロール
  • バランス

それぞれのスキルのポイントを見ていきましょう。

BCの操作に神経質になるな!

BCだけを使って中性浮力をとっていると思っている方は、すでにアウトです。
中性浮力のためのBCの役割は、水圧によって失われる器材(主にスーツ)の浮力を“適当”に補うことです。

もちろん初心者が浅いところで浮いたり、潜降できなかったりするのは、BC内の空気のコントロールがまったくできていないからです。
だからBCにこだわる。

しかし、大まかにBC内の空気をコントロールできれば、後は呼吸によってコントロールできるのです。
この一文を読んで“なるほど!”と思った方は中性浮力の感性に近づいています。

大きく吸って・大きく吐かなくてもよい!?
呼吸コントロールのポイント

中性浮力は、“水中でのバランスと呼吸のコントロールが重要”なスキルなのです。
後述するバランスと同時に進化していくスキルですが、まずは呼吸コントロールから解説しましょう。

大人の肺活量は3~6リットル(もちろんもっと多い人はいます)程度ですが、空気1リットルは約1kgの浮力があるので、空気1リットルを肺から排気できれば、1キロのウエイトを足したのと同じ浮力状態になるのです。

潜降時に肺活量4リットルの人が、肺の空気をすべて排気して、数秒我慢(浮力による上下の移動には僅かにタイムラグがある)できれば、肺の排気をほとんどできない人と比べて4kgのウエイトをウエイト減らすことができるのです。

でもこれはまだまだ初心者の話。

完成度の高い中性浮力を目指すには、呼吸によってBCでできない微妙な浮力を調整することが必要です。
ダイビングを始めた時に「水中での呼吸は、大きく吸って・大きく吐く」と教わった方が多いはずです。

でも、水中で毎分空気消費量が15リットル(女性で12リットル)程度になったら、“普通の無意識の呼吸”で十分です。

肺で1~3kgの浮力調整が可能

肺活量4リットルの方の呼吸が安定しているとき、1回の呼吸量は0.5~1リットル程度です。
肺の内の残りのガス(残気量)の出入りは無いので、このガスをどのようにコントロールするかが重要になります。

この方が肺の残気量分を排気した状態で、1リットルの空気だけで呼吸すると、約3kgのウエイトを持ったことと同じになります。

浅い所へ移動したダイバーが、このようにして肺の残気量を少なくして呼吸すれば、簡単に浮くことは無いはずです。

逆に、ちょっと沈みぎみだったら肺内の空気残量を増せば良いのです。

1~3kgの浮力の調整は肺の残気量でできるのです。

ストレスが強い人、ちょっと動くと呼吸が乱れる人は“大きく吸って大きく吐く”呼吸をしないと息苦しくなるため、肺の残気量調整ができずに中性浮力ができないのです。

こんな人が上級中性浮力を目指すには、マスク無し呼吸などのストレストレーニングと、ちょっと動いて呼吸が乱れないフィンキックと最低限の運動能力をアップすることを始めてください。

バランスも大切

呼吸のコントロールができるほど安定した呼吸をする人でも、バランスが悪いと中性浮力は取れません。

上級中性浮力を会得するためには、バランスも重要なスキルです。

水中で浮いている状態で、器材(特にウエイト)のバランスや体のバランスが悪い人は、体がふらつくので、手を使ったり、フィンが動いたりして無駄な動きが多くなり、結果的には呼吸が乱れて、中性浮力が取れなくなってきます。

ダイビングはバランスのスポーツと言っても過言ではないほど、バランスが重要なスキルなのです。

例えば、呼吸が安定していて水中でバランスが完璧にとれている人は、水中で無理なく水平に浮いていられます。
この状態でフィンを軽くキックすれば簡単に移動できますし、フィンキックを止めて惰性である程度進んでいくのです。

以上の3つのポイントを意識して潜れば、中性浮力マスターに近づけるはずです。

※次回は、「バランスと呼吸が安定したダイバーになるためのバランストレーニング」をご紹介する予定です。

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PROFILE
九州は小倉に生まれ、法政大学アクアダイビングクラブでダイビングを始める。

学生時代からインストラクターになり、認定したダイバーは数千人、NAUI時代にコースディレクターとしてインストラクターも多数養成。

インストラクターの集まったNPO日本安全潜水教育協会(JCUE、ジェイキュー)会長、雑誌「月刊ダイバー」ではDUKEヤマナカとしてダイビングテクニックのアドバイザーなどなど、比較的スキルや安全のことに比重を置いて活動している。
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