“ミスターオリンパス水中”清水淳の水中カメラレビュー(第13回)

【“ミスターオリンパス水中”清水淳のカメラレビュー】水中でE-M1の実力を発揮させるセッティングをシチュエーションに応じてレポート Part.2

この記事は約16分で読めます。

※本記事は「清水淳 水中カメラマンインプレッション」のアーカイブより転載しています。発売当初の情報となりますので、最新情報は「オリンパス公式サイト」などをご確認ください。

EM-1の実力をさらに発揮させるセッティング

OLYMPUS OM-D E-M1(以下、E-M1) &専用防水プロテクターPT-EP11(以下、PT-EP11) のインプレッションは、お伝えしたいことが多く、2回に分けてのレポートとなった。 前回のインプレッション Part.1では、カメラやプロテクターについての大枠的な情報をお伝えし、今回のPart.2ではさらに突っ込んだ内容をお伝えする。 特に注力したのは、撮影環境や被写体によって選択するレンズについて、フォーサーズ規格のレンズが良いのか、 あるいはマイクロフォーサーズ規格のレンズが良いのか?微少な被写体を撮影するのに、クローズアップレンズの使用が良いのか?それとも画質劣化の無いデジタルテレコンが良いのか?など、カタログや店頭では得られない情報を、私なりに感じた印象で紹介し、また、カメラのチューニングにおいても、マクロ撮影向き、ワイド撮影向きなど、撮影目的に特化したセッティングについても説明する。

チューニングが進んだ新しい水中モード

E-M1の水中モードは高感度特性を生かした、プログラム線図に変更された。水中ホワイトバランスと高感度特性の組み合わせで、自然光撮影をしやすくするために、今までISO200に設定されていた「感度」はAUTOになり、従来フラッシュOFF時、手ぶれを防ぐ対策でISOをAUTOにセットし直す作業はなくなる。
更にプログラム線図も変更され、フラッシュOFF時の変更点は、低輝度環境下、開放F値が明るいレンズを使用した場合に、F値を解放まで開けているプログラム線図を、F4.0でクリップさせる設計へ変わっている。その結果、水中マクロ&フラッシュOFFでの撮影で、M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroを装着した場合、F2.8まで開けていたものをF4.0まで絞り込むことで、揺れる水中撮影時の撮りやすさとぼけ味の両立が成功した。
ワイド撮影でもフラッシュOFF時、低輝度環境ではF4.0~のプログラム線図となり、水中でのレンズポート使用時、水と空気の屈折率の違いによっておこる画像周辺の解像感低下を防いでいる。フラッシュON時においても、ISOはAUTOで撮影するようになる。フラッシュ光が被写体に不足無く照射されている状態では、ISO200での撮影 になるが、フラッシュ光が未達の場合に徐々に感度が上がり、足りないフラッシュ光量を補う制御を行い、フラッシュ光がうまく当たらない理由の失敗作が少なくなるように工夫されている。水中での発色については、E-M5のG味がやや強く、控えめな彩度の発色は、高彩度でメリハリの利いたE-5の発色に近付けられた。また、Fnボタン以外にも水中モードを割り付けできる仕様になっているので、色々なカスタマイズができそうだ。

背景のブルーの表現力

E-M5では3段までの範囲だったのが、E-M1はE-5同様の±5段仕様になっている。順光シーンでは-3段までの補正量でも十分だが、逆光シーンや背景に対し被写体の面積が大きい場合などのように露出補正-5段が欲しい場面に 出会うことがある。±5段仕様になったことで、E-M5では出せなかった濃厚なブルーの背景がE-M1で復活した。その他、E-M5のX接点(フラッシュ ON時の最高シャッター速度)は、UFL-2使用時で1/180の仕様がE-M1は 1/250まで1/2段向上した。
レリーズタイムラグを短くするために様々な工夫が行われているが、フラッシュをTTLオートで制御する場合に置いては、プレ発光と本発光のフレームレートを短くしたり、発光時間の短縮などが行われ、今後もさらにその傾向は進むと考えられる。UFL-1も含めて、模倣型の水中外部フラッシュは、制御が難しくなって行くと思われる。EM1でもその傾向が見られるので、フラッシュの選択は模倣型TTL方式では無く、UFL-2などRCコントロールの純正 水中フラッシュの使用を強く勧めたい。
E-5、E-M5、E-M1の背景になるブルーの表現力について比較テストを行ったので参考にしていただきたい。各カメラによって測光パターンやアルゴリズムが異なるのであくまでも参考程度に。
比較してわかることは、E-5は比較的露出補正の早い段階から背景が濃くなりやすい特徴は、実写でもうかがえた。
E-M1は補正値に対して、素直に濃さが追従する感覚。E-M5の±3段の露出補正は逆光シーンでは物足りなさが残るが、ハイライト&シャドーコントロールで、アンダー側をマイナスに補正することによって、濃い目の背景を作ることも可能だ。
背景のブルーの発色、表現力については、人それぞれの好みで意見が分かれるところだが、E-M1、E-M5、E-5の3 機種それぞれの趣があることが画像から見てもわかる。濃いめに背景の露出を調整したシーンでも、透明感が残るので、ブルーに仕上がる点では、後発の2機種より優れており、いまだにE-5が人気がある理由も理解できる。EM1では、濃い目に調整した露出補正時の発色こそE-5に1歩追いつかないが、フラッシュOFF時や浅い露出補正時のブルーの発色は、E-5より透明感があり好感が持てる。ダイナミックレンジは、E-5よりE-M1が広く、逆光シーン露出補正-5の写真を比較するとわかるように、高輝度から低輝度まで滑らかな諧調を保ちながら幅広く表現でき るのが特徴だ。太陽周りにできるトーンジャンプも無く滑らかなのに加え、解像感で勝りシャープさも際立つ。

カメラ:E-M1
レンズ: ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheye
撮影モード:水中ワイド 絞り値:F6.3
シャッター速度:1/250
ホワイトバランス:水中WB
露出補正: -1.3EV ISO
感度:ISO200(AUTO)
フラッシュ:UFL-2×2(-2.0EV)
撮影地:フィリピン/ボホール

順光シーンの比較

共通撮影データ 撮影モード:水中ワイド、フラッシュ:UFL-2 ×2 ISO200

E-M1&ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeの露出補正と背景のブルー

順光シーン、フラッシュON

露出補正-1.3

露出補正-1.7

露出補正-2.0

露出補正-2.3

露出補正-2.7

露出補正-3.0

E-M5&ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeの露出補正と背景のブルー

順光シーン、フラッシュON

露出補正-1.3

露出補正-1.7

露出補正-2.0

露出補正-2.3

露出補正-2.7

露出補正-3.0

E-5&ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeの露出補正と背景のブルー

順光シーン、フラッシュON

露出補正-1.3

露出補正-1.7

露出補正-2.0

露出補正-2.3

露出補正-2.7

露出補正-3.0

逆光シーンの比較

共通撮影データ 撮影モード:水中ワイド、フラッシュ:UFL-2×2 ISO200

E-M1&ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeの露出補正と背景のブルー

逆光シーン、フラッシュON

露出補正-1.0

露出補正-2.0

露出補正-2.6

露出補正-4.0

露出補正-5.0

E-M5&ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeの露出補正と背景のブルー

逆光シーン、フラッシュON

露出補正-1.0

露出補正-2.0

露出補正-3.0

E-5&ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeの露出補正と背景のブルー

逆光シーン、フラッシュON

露出補正-1.0

露出補正-2.0

露出補正-3.0

露出補正-4.0

露出補正-5.0

フラッシュOFFの比較

E-M1 露出補正-0.3EV

E-M5彦出補正-0.3EV

E-5番出補正-0.3EV

フラッシュOFF時、水深の浅い環境での比較撮影では、3機種共に水中ホワイトバランスの効きが良く良好な画像が得られる。水の色は3機種共に、透明感のあるブルーに仕上がった。
E-M5の彩度が控えめなのに対し、E-5、E-M1が彩度が高めで、透明感、解像感ではE-M1が数段上となっている。 詳細に見て行くと、砂地の発色はE-5、E-M5共にG味が残るのに対し、E-M1ではG味は残らない。手前のイソギンチャクの発色はE-5でややマゼンタが残るのに対し、E-M5はG味がかかるが、E-M1はどちらに振れず自然で高彩度を保った発色が得られる。

ワンプッシュデジタルテレコンの可能性

E-M1のデジタルテレコンは、画質の低下がほとんど見られない。この写真はZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro+EC20にデジタルテレコンONで撮影したものだが、感度を上げなければ、全く画質の低下が無いと言って良いくらいだ。もっとも水中マクロ撮影でフラッシュを使う場合、背景の明るさを考えなければISO200で撮影が 可能なので、倍率を上げたいシーンでは積極的に活用して行けそうだ。35mmフィルム換算で400mm、4倍の倍率を得られるマクロレンズは、この世にこのシステム以外無いのではないだろうか。顕微鏡撮影並みの撮影倍率だ。望遠マクロレンズとして、遠方にいる臆病なハゼの撮影にもってこいのシステムとなっている。
E-M1、E-M5、E-PL5の3機種で、デジタルテレコン撮影を比較してみた。M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroを使って撮影する。どの機種もほぼ最新のデジタルカメラだが、E-M1はやはり一歩リードしているようだ。 同じ場所で同じハゼを同じ距離から撮影しているが、ハゼが水中を泳ぎまわるので、若干撮りあがった大きさに差が出たが、画質の違いを比較してみた。

カメラ:E-M1
レンズ: ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro+EC20
撮影モード:水中マクロ
絞り値:F8.0
シャッター速度:1/200
ホワイトバランス:水中WB
露出補正:-0.7EV ISO
感度:ISO200(AUTO)
フラッシュ:UFL-2×2(-0.7EV)
撮影地:フィリピン/ボホール

デジタルテレコンの比較 E-M1

デジタルテレコンOFF

デジタルテレコンON

共通撮影データ: M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro、水中マクロモード

デジタルテレコンの比較 E-M5

デジタルテレコンOFF

デジタルテレコンON

共通撮影データ: M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro、水中マクロモード

デジタルテレコンの比較 E-PL5

デジタルテレコンOFF

デジタルテレコンON

共通撮影データ: M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro、水中マクロモード

ライトボックス比較

E-M1 VS E-M5

左:E-M1 右:E-M5

E-M1はレンズ毎、絞り毎に最適な画像生成を行うファインディテールIIを搭載する。倍率色収差、湾曲収差の補正が行われる。 ヤシャハゼのヒレの部分を比較してみるとわかりやすい。E-M1は細かい部分まで解像しているのがわかる。

E-M1 VS E-PL5

左:E-M1 右:E-PL5

お手軽なミラーレス機のE-PL5もなかなか良い解像感を持つが、E-M1の解像感が良いのは歴然だ。

最高画質を本格的な水中撮影向けレンズで

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROや M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZを使用しての水中撮影は、1本のレンズでマクロ的な撮影からワイド的な撮影まで幅広く守備範囲を得られるが、本格的なワイド撮影なら通称「魚眼レンズ」と呼ばれるフィッシュアイレンズの使用をお勧めしたい。ロ水中撮影では、被写体までの距離があると「水という濁ったフィルター」を通しての撮影になるので、できるだけ被写体に近づきたいが、近づくと狭い範囲しか撮影できないので、極端に画角が広いレンズが必要になる。
同様にマクロ撮影では、小さな被写体を大きく写すことに長けたマクロレンズが用意されている。E-M1を収納する防水プロテクターPT-EP11ならレンズに合わせてポート交換が可能だ。ズームレンズより表現力豊かな水中向けのレンズを使うと、写真撮影がもっと楽しくなる!

ワイド撮影システムについて

ワイド撮影に使いたいレンズは、ほぼ2種類に限定される。
E-M1はデジタルテレコンを搭載しているので、画角を 縮めたい場合は、フィッシュアイレンズ+デジタルテレコンでの撮影が効果的だ。E-M1とPT-EP11で使用可能なフィッシュアイレンズは
○ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheye
○LUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5
の2本のレンズになる。それぞれに良い点があるので、被写体や撮影シーンに分けて説明する。

LUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5をセットしたシステム

ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeをセットしたシステム

左がLUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5、右がZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheye

半水面写真

被写体の動きもさほど速くなく、置きピン的な要素で撮影する半水面写真なら、大型のドームポートが使える ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheyeがお勧め。ドームポート大きいほうが水面のラインを配置しやすい。

カメラ:E-M1
撮影モード:水中ワイド
絞り値:F10.0
シャッター速度:1/250
ホワイトバランス:水中WB
露出補正:-0.3EV ISO
感度:ISO200(AUTO)
フラッシュ:OFF
撮影地:沖縄/慶良間

高速で移動する被写体

明るい環境下、高速で移動する被写体の撮影には、ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 Fisheye&C-SF+連写が有効だ。
像面位相差センサーで被写体の移動する方向を素早く判断してAFを行う。バッファーの容量が大きいので、連写L設定で最大約6.5コマ/秒、約50枚RAWデータ撮影が可能!外したくない一瞬をGETできる必殺技だ。

カメラ:E-M1
撮影モード:水中ワイド
絞り値:F11.0
シャッター速度:1/500
ホワイトバランス:水中WB
露出補正:-1.0EV ISO
感度:ISO1600(AUTO)
フォーカス:コンティニュアスAF
フラッシュ:OFF
ドライブ:連写し
撮影地:メキシコ/ラパス

低輝度環境&低コントラスト

早朝ダイブ。水深40mキープでハンマーヘッド・シャークを水底方向に探す。肉眼でもわずかにしか判別できないシーン。低輝度環境下で、コントラストAFは、今までの機種でも十分に早かったが、E-M1ではさらに磨きがかかっている。

カメラ:E-M1
撮影モード:水中ワイド
絞り値:F4.0
シャッター速度: 1/30
ホワイトバランス:水中WB
落出補正:-1.0EV、
ISO感度:ISO500(AUTO)
フラッシュ:OFF 撮影地:メキシコ/ラパス

マクロ撮影システムについて

マクロ撮影に使いたいレンズは、ほぼ2種類に限定される。
マクロ専用のレンズを使うことになるが趣の異なる2種類のレンズが用意される。
ワーキングディスタンスが短く、快速AFが特徴でビギナーにも扱いやすいM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroと、焦点距離が長い為に背景の写しいボケを作りやすく、ハゼなどの臆病な被写体の撮影に向く ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro +EC20の組み合わせになる。
それぞれに良い点があるので、被写体や撮影シーンに分けて説明したい。

UFL-2BPT-EP 11+PPO-EP01

UFL-2 ×2&PT-EP11-PPO-EP01

左がM.ZUIKO DIGITAL ED 60m F2.8 Macro 右がZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro+EC20

臆病なハゼ

臆病なハゼを離れた所から大きく狙いたい場合に、最適なシステム。
アプローチ時は、デジタルテレコンONで距離を徐々に縮めてハゼの顔がフレームアウトしそうになったら、デジタルテレコンのOFFを考える。低輝度環境では、AFの効きが悪くなるが、コツさえつかめれば背景のボケ具合が、他のマクロレンズとまったく異なるほど良い感じに仕上がるので、クローズアップレンズは使わない。

カメラ:E-M1
レンズ: ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro -EC20
撮影モード:水中マクロ
絞り値:F8.0
シャッター速度:1/200
ホワイトバランス:水中WB
常出補正:-0.7EV ISO
感度:ISO200(AUTO)
フラッシュ:UFL-2×2(-0.7EV)
デジタルテレコン:ON 撮影地:フィリピン/ボホール

オールマイティーなマクロレンズ

近づいても逃げない被写体なら、ワーキングディスタンスが短く、取り回しの楽なM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroがお勧め。
AFが早くマニュアルフォーカス用のギヤも、用意されている。EVFでジックリのぞいてピントを合わせること自体 が楽しくなる被写体だ。デジタルテレコンONで撮影しているので、これ以上拡大したい場合には、クローズアップレンズを使う。
マクロレンズとしては、このM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroのほうが、ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macroより扱いやすい。最初に購入すべきマクロレンズはマイクロの60mmと覚えておくと良い。

カメラ:E-M1
レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro.
撮影モード:水中マクロ
絞り値:F8.0
シャッター速度: 1/125
ホワイトバランス:水中WB
露出補正:-0.7EV ISO
感度:ISO200(AUTO)
フラッシュ:UFL-2×2(-0.3EV)
デジタルテレコン:ON
撮影地:インドネシア/レンベ

背景をぼかすなら

狙った被写体だけを鮮明に引き立てるように描写し、バックはボケボケにさせたいシーンにこのシステムが向いている。
被写体と背景の距離が隣接している場合では、バックをぼかすことはどんなレンズでも難しくなる。 M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroは、その名の通り、焦点距離が60mmのレンズ。それに対して、ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro+EC20は焦点距離が100mmになり、この焦点距離の違いが、背景のボケ具の違いになって現れる。この写真と同じシーンをM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro&デジタルテレコンONで撮ると、倍率はほぼ同じような大きさに写るが、被写界深度の深いM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroでは、背景の岩がなんとなくわかる程度ピントが合ってくる。そうなるとこの真っ赤な魚だけが浮き上がってくるような効果が得られない。バズーカ砲の様なポートになっても、ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro-EC20を 使いたくなるのには、それなりの理由があるのだ。

カメラ:E-M1
レンズ: ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro +EC20
撮影モード:水中マクロ
絞り値:F8.0
シャッター速度:1/200
ホワイトバランス:水中WB
露出補正:-0.7EV ISO
感度:ISO200(AUTO)
フラッシュ:UFL-2×2(-1.3EV)
デジタルテレコン:OFF
撮影地:沖縄/慶良間

より高度なカメラチューニング

E-M1&PT-EP11インプレッション Part.1では、ズームレンズを使い、1ダイブ中にワイド的撮影とマクロ的撮影の両方を楽しまれる方向けに、一般的なカメラのセッティングを紹介したが、今回は、マクロ専用チューニング、ワイド専用チューニングの一例を紹介する。 DE-M1はボタンの割り振りに自由度が高く、ボタンの割り振りに一番使いたいFn1、Fn2、RECボタン以外に、水中モードを割り振っておけるので拡張性が高い。

マクロ向きスペシャル・カメラチューニング

E-M1&PT-EP11でのマクロ撮影専用カメラチューニングのポイントは、水中でEVFから目を離さずに、フラッシュの光量補正をコントロル、デジタルテレコンON/OFF、AF or MFの切り替えが行えるようにチューニングすること。色空間はsRGBに設定。EVFは倍率優先でスタイル3を選択する。スタイル3を選択すると、防水プロテクターPT-EP11の光学ピックアップファインダーを介して、覗いたときに四隅にややケラレが出るが、倍率は3つのスタイル中で一番大きく表示されるようになる。倍率を最優先するのであれば、光学ピックアップを外して素通し状態にすると、完全に四隅は見えなくなるのでフレーミングは困難になるが、中心部のみ大きく見ることが可能なので ピント合わせが苦手の方には朗報かもしれない。Fn2にISO感度を割り振ったが、これはシャッター速度、絞り値を変えず背景の明るさをコントロールする場合に、有効なテクニックなので、ぜひ活用していただきたい。

マクロ撮影向けのカメラセッティング

①Fn1ボタンには頻度の高いデジタルテレコン割り振る。 MFも直に呼び出せるようにセットしておくと便利。

②親指で操作するダイヤルにフラッシュ補正を割り振る。

③カラー設定はsRGB。

④内蔵EVFの表示スタイルはスタイル3を選択。

ワイド向きスペシャル・カメラチューニング

E-M1&PT-EP11での、ワイド撮影専用カメラチューニングのポイントは、基本的に、背面TFTモニターで撮影、確認するが、ピントの詳細やマリンスノーの発生の有無などの詳細は、EVFを使って確認する。マクロ撮影時、右手親指ダイヤルにフラッシュ補正を割り振ったのに対し、ワイド撮影では、背景のブルーをコントロールする露出補正を割り振っておく。フィッシュアイレンズ使用時、ワイドズームレンズ程度並みの画角に調整させるデジタルテレコンON/OFFは最優先のFn1ボタンへ割り振り、高輝度側のトーンジャンプを緩和させるために、色空間はAdobeRGBに設定。EVFはフレーミング優先で、四隅まで正確に確認できるスタイル1を選択する。
ワイド撮影では、動画撮影のチャンスも増えるので、RECボタンはそのまま動画撮影用にセットしておくと良い。Fn2にISO感度を割り振ったが、ワイド撮影時では、低輝度環境時にシャッター速度を上げて撮影したい場合や、 絞り値を絞って撮影したい場合に有効なテクニックなので、ぜひ使っていただきたい。超高輝度環境では、ISO LOWを選択することも可能だ。

ワイド撮影向けのカメラセッティング

①Fn1ボタンには頻度の高いデジタルテレコン割り振る。

②親指で操作するダイヤルに露出補正を割り振る。

③カラー設定はAdobe RGB。

④内蔵EVFの表示スタイルはスタイル1を選択。

システム構成例

防水プロテクター:E-M1専用プロテクターPT-EP11、アクセサリー

防水プロテクターPT-EP11

水中専用フラッシュ UFL-1

デジタルカメラの内蔵フラッシュに連動してスレーブオート発光する水中専用フラッシュ。水中の多彩なシチュエーションに対応できます。

水中専用フラッシュ UFL-2

カメラ側で発光モード、発光量をコントロールできるRCモードに対応した水中専用フラッシュ。
※RCモードについては、UFL-2の水中カメラインプレッションをご参照ください。

ショートアーム PTSA-02

水中専用フラッシュを防水プロテクターに接続するための短いアーム。

水中光ファイバーケーブル PTCB-E02

水中撮影用外部フラッシュの接続ケーブル。

防水レンズポート PPO-EP01 (マイクロフォーサーズ用)

防水プロテクター「PT-EP11 (E-M1専用)」と「PT-EP08 (E-M5専用)」に装着する防水レンズサポート

防水レンズポート PPO-E03 (フォーサーズ用)

ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macroを、PPO-E03と組み合わせてご使用いただくことにより水中でのマクロ撮影が可能となります。

防水レンズポート PPO-E04 PPO-E04 (フォーサーズ用)

ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0 / ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6/ZUIKO DIGITAL ED 8mm F3.5 FisheyeとPPO-E04と組み合わせてご使用いただくことにより水中での広角撮影が可能となります。

防水ポートアダプター PAD-EP08

防水プロテクター「PT-EP11 (E-M1専用)」と「PT-EP08 (E-M5専用)」に、フォーサーズ規格レンズ(※)を使用するために必要なポートアダプター。
※ピント合わせは、AFのみ使用可能です。MFには対応していません

防水延長リング PER-E01

テレコンバーター EC-14を、ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macroと組み合わせてご使用いただく時に必要な防水延長リングです。

専用のズームギア PPZR-EP04
マイクロフォーサーズ規格「M.ZUIKO DIGITAL ED 1240mm F2.8 PRO」用のズームギア。こちらのズームギアを用意することで、防水プロテクターを介して水中でズーム操作ができるようになります。

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writer
PROFILE
1964年生まれ。水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影を行ないながら、沖縄・那覇にて水中写真教室マリーンプロダクトを主宰。 また、カメラメーカーの研究開発にも携わり、水中撮影モードや水中ホワイトバランスの開発アドバイザーも務める。1998年にデビューしたOLYMPUS C900Zoomから最新機種まで全てのOLYMPUS水中モデルのチューニングテストを行なっている。カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーメーカーのアドバイザーやテスト撮影の要望も多い。執筆活動では、水中撮影機材の解説や撮影の仕方、楽しみ方の記事をPADI Japan/デジカメ上達クリニック、OMDS/水中デジタルカメラ・インプレッション、マリンダイビング.ウェブ/水中デジカメ撮影教室、オーシャナ/カメラレビューを現在連載中。最近では、「清水淳のマンツーマン水中写真教室」が好評いただき熱意あふれるフォトグラファーたちと一緒に撮影をしている。
公式ホームページ https://shimizu.marine-p.com/ 公益社団法人日本写真家協会会員。
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