はじめての水中写真上達サプリ(第15回)

クローズアップレンズの度数と撮影距離の関係とは

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クローズアップレンズ実験(撮影:大川拓哉)

前回はクローズアップレンズを用いると大きく写せる基本原理を説明しました。
ひとことで言うと「近寄って写すことができるようになるから大きく写る」

今回は、もう少し踏み込んだ話をしてみたいと思います。

クローズアップレンズの度数とは

クローズアップレンズを選ぶ時に出てくる数字は、大きく分けてふたつの表記方法があります。

・330㎜、165㎜、100㎜などのミリ数で表記してあるもの。
・+3、+6 、+10などプラス数字で表記してあるもの。

よくわからない方も多いと思います。

まず、前回のおさらいになりますが、カメラのレンズにより「どこまで近寄ってピントを合わせることができるか」という限界となる距離があります。
この距離を「最短撮影距離」と言います。

最短撮影距離が100㎝(1m)のカメラがあったとします。
このレンズに、とある度数のクローズアップレンズを装着したとします。

その結果、33㎝まで近寄ってピントを合わせる事ができるようになった場合、このクローズアップレンズを「330㎜」(=33㎝)と呼びます。

さて、違う見方をすると……。

100cmだったのが33㎝まで近寄れるようになりましたので、「近寄れる距離が3分の1になった」と言えます。
この分母を表記したのが「+3」です。

同様に、「165㎜」は1000㎜の6分の1なので「+6」「100㎜」は1000㎜の10分の1なので「+10」となります。

<補足>説明の簡略化のため、一部、不正確な表現を用いています。

・最短撮影距離とは、一眼カメラで主に用いられる「撮像面からの距離」を表す本来の意味と、コンデジなどで用いられる「レンズ先端からの距離」、いわゆるワーキングディスタンスを表す場合がありますが、厳密に分けて説明していません。

・クローズアップレンズの焦点距離を算出する原理ピント位置は無限遠ですが、説明の複雑化を避けるため、本来は間違いですが最短撮影距離を用いています。

どのレンズがもっと近寄れるの?

整理しますと、

・ミリ表記の場合は数字が小さいほど度数が強い(より近寄れる)
・プラス表記の場合は数字が大きいほど度数が強い(より近寄れる)

という事です。

・「330㎜」=「+3」 度数は弱い

・「165㎜」=「+6」 度数は中くらい

・「100㎜」=「+10」 度数は強い

実際は、カメラのレンズのもともと備わっている最短撮影距離性能や、ズーム倍率(焦点距離)などによって、クローズアップレンズを装着した時の撮影距離は上記の理屈上の距離とは変わってきますので、あくまで目安と考えて下さい。

最近のコンデジやミラーレス一眼カメラのズームレンズなどは、近寄って撮影することが得意なものが多いようです。
このような、もともとそこそこ近寄れるカメラに、度数の弱いクローズアップレンズを付けても効果はあまりありません(最短撮影距離がほとんど変わらない)。

+6(165㎜)くらいが使いやすく、それなりに効果が感じられる目安でしょうか。
もちろん+10にすれば、ぐっと近寄れますから、より小さな被写体を大きく写すことができます。

また、クローズアップレンズは2枚重ねにして効果を強める事もできます。

+6に+3を重ねると、合計で+9の効果になります(ただし1枚の時に比べ画質が落ちます)。

水中での撮影距離

前回から説明している最短撮影距離ですが、実は陸上(空気中)での距離です。

水中では屈折率の違いで、陸上ほど近寄れません(すみません……)。
しかし、水中では陸上より物が大きく見えます(OW講習で習いましたね!)。
結果、カメラに写る大きさは陸上とほぼ同じ大きさになります!

ということで、前回の実験で用いたニシキアナゴ君を水中に連れて行って実験しました。
okawa-20150704-2

さて、まずはクローズアップレンズなしで写してみました。
okawa-20150704-3

すみません、ニシキアナゴ君がうねりでのけ反ってしまったのはご愛嬌です。

この時の最短撮影距離は、ハウジング先端から24.5㎝でした。
okawa-20150704-4

前回の陸上では17.5㎝でしたから、おおよそ1.4倍です。

続いて、クローズアップレンズを付けて撮影。
okawa-20150704-5

すみません、うねりでわずかにピントがずれてしまいました。

この時の最短撮影距離はレンズ先端から7㎝でした。
okawa-20150704-6

前回の陸上では5㎝でしたから、1.4倍です。
このカメラとクローズアップレンズの組み合わせでは、陸上の最短距離に比べて、水中ではおおよそ1.4倍の距離になりました。

陸上より近寄れず小さく写りそうですが、水中では大きく見えるので、結果として写真として写る大きさは陸上とほぼ同じになります(前回の陸上での実験の写真と比べてみて下さい)。

ということで、撮りたいものの大きさがわかっているとき、陸上でクローズアップレンズを付けて試し撮りしてみれば、水中でも同じ大きさで写すことができますので、店頭に展示品があればクローズアップレンズの度数選びの参考になりそうですね!

ピント合わせはシビアになりますが、クローズアップで大きく写せば、肉眼ではよく見えなかった生き物の表情や質感をより楽しめます♪

ぜひTRYしてみて下さい!

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PROFILE
グアムでCカードを取得~沖縄リゾートダイバーだったはずが、新千歳-那覇直行便が廃止となったのを機に?北海道で潜り始める。
 
セルフでしっかり潜りたくてプロダイバーになったはずなのに、インターンで目覚めて?ガイド業へ。

テレビのカメラマンだったはずが、水中デジフォトインストラクターに。
 
積丹半島をベースに、北海道を幅広く潜っています。
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