ミラーレス一眼 水中撮影徹底ガイドby清水淳(第19回)

ミラーレス一眼被写体別撮影テクニック「ウミウシ」の撮り方 前編

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AOIの新製品「AOI FLP-09」とOM SYSTEM 社のM.ZUIKO DIGITAL90mmF3.5 Macro IS PROを使ったウミウシ撮影を解説します。使用するカメラはOM SYTEM OM-1。

1月30日にOM-1MarkⅡが発表になりました。皆さんも新しいカメラボディー、気になりますよね?OM-1もOM-1 MarkⅡも同じハウジングAOI UH-OM1に収納可能なので、実は発売前にOMさんからOM-1MarkⅡをお借りしてメキシコで試写してきました。近いうちにその作品もお見せしますね。

今回はウミウシ撮影ということですが、2回に分けてじっくり解説していきます。
前編ではウミウシ撮影向きにカメラを設定していきます。補助光にはLEDライトとストロボ撮影の二つからチョイスが可能です。撮りたい雰囲気、仕上げたい作風に合わせて補助光が選べる可変的なセットアップを紹介します。カメラに装着するマクロ専用レンズの種類と、撮影倍率を上げる秘密兵器「クローズアップレンズ」の色々、ウミウシ撮影に必要なアクセサリーなども紹介していきます。
後編では、カメラの構え方、ストロボ撮影、LEDライト撮影など、海での実際の撮影について解説します。

それでは前編、スタートします。

ウミウシ撮影のためのカメラ設定

「マクロ撮影は絞り値を開いてボケ味を出す」と、どこかで教わった方は少なくないと思います。しかし、水中撮影でマクロ用のレンズを使用した環境&被写体に超接近した撮影手法では、絞りを絞って(Fの数値を大きく)被写界深度を稼がないと、ピントの合う幅が薄すぎて何が写っているのか判らない写真になってしまいます。

がっちり絞って被写体をビシっとシャープに捉えて、背景を優しい雰囲気にフワッと仕上げる。これが清水流マクロ撮影です。

撮影モード

M(マニュアル)

絞り

F11

シャッター速度

1/250

ISO

AUTO/3200

露出補正

±0.0EV

フラッシュ

OFF /LEDライト撮影

ホワイトバランス

水中

フォーカス

マニュアル

カメラ

OM SYSTEM OM-1

レンズ

M.ZUIKO DIGITAL90mmMacro F3.5 IS PRO

ハウジング

AOI UH-OM1

レンズポート

AOI FLP-09

クローズアップレンズ

AOI UCL-09PRO

補助光

AOI USC Q1RC×2 (LED)

グリップ&ブラケット

MPBK-02

アーム&クランプ

AOI AMC-1&AOI CP-02-SLR

では、補助光をストロボ光にするか? LEDライトにするか? どちらにも対応ができるようにカメラをセットアップしています。

AFモード

今回は動きの速くないウミウシ撮影なので、オートフォーカスはS-AFにセットします。

AF+MF設定

AF+MFは、オートフォーカスを動かしながら、このあたりで微調整をしたいと思った時に、フォーカスギアを動かすと自動的にマニュアルフォーカスに変更してくれる便利な機能。再びオートフォーカスを作動させたい場合はシャッターレバーを半押しすると、オートフォーカスが動き出します。

ゴムリング

フォーカスクラッチが動かないように、ポートに付属しているゴムリングをレンズにはめます。フォーカスリングがMFの位置に来ないように、ゴムリングをセットします。このゴムリングを紛失してしまった場合には、太めの輪ゴムなら代用が可能です。

ダイヤルの設定

今回の撮影モードはM(マニュアル)を使用します。マニュアルモード使用時にダイヤルでコントロールしたい項目を選びます。
まず、Fnレバー1の状態で親指側のダイヤルに絞り値、人差し指側のダイヤルにシャッター速度を設定します。

そして、Fnレバー2の状態で親指側のダイヤルに露出補正、人差し指側のダイヤルにフラッシュ補正を割り振ります。

ダイヤルの設定を活かすにはmode1にセットします。

ボタン設定

ウミウシ撮影に便利な機能をボタンに割り振りします。

NightLV

暗い環境でモニターが見づらい場合には、このボタンを押すとブーストが掛かり見やすくなります。

ISO

被写体認識

MF

このボタンを押すとAFが止まり、カメラを前後させて詳細なピント合わせが可能になります。

十字キー

上下左右の十字キーはAFのポジションの移動に割り当ています。

ピーキング設定

ピーキングとはピントが合っている場所をカメラが検出して、「この辺りにピントが合っています」という情報を表示する機能です。オートフォーカス時には表示しないので、今まで見たことがない表示かもしれません。マニュアルフォーカス時にフォーカスダイヤルを動かしている状態で表示になります。赤く染まったような表示です。

ピントの山が触覚周辺にある。

二次鰓にじえら周辺にピントの山がある状態

設定方法は以下の通りです。

撮影時の設定

シャッター速度

1/250

絞り値

f11

ISO感度

AUTO

ホワイトバランス

水中

フォーカスエリア

シングル

焦点距離の長いレンズを使うことになる水中マクロ撮影では、シャッター速度を上げて撮影します。その理由は、手ブレを防ぐためです。レンズが長くなるとカメラが少しでも動いた場合にブレが写ってしまうのを防ぎます。

シャッター速度の基本的な決め方は、1/2fの速度が目安と言われています。M.ZUIKO DIGITAL60mmMacroを例に取ってみると、マイクロフォーサーズ規格60mmは35mm、フルサイズに面積比換算すると120mmになります。

1/2fのfは焦点距離なので1/2×120→1/240になります。ということでシャッター速度は1/250をセットすることになります。M.ZUIKO DIGITAL90mmの場合には1/360になりますが、OM-1のフラッシュON時の最高速度が1/250なので、この場合にも1/250をセットすることになります。

基本設定の確認

OKボタンを押してスーパーコンパネを表示させます。セットアップされた基本設定が表示されます。チェックして見てください。
これと同じになっていますか?

フラッシュのコントロールを選択してONにしてストロボ光撮影モード、OFFにしてLEDライトの撮影モードを選びます。ISOの設定はAUTOを選びます。この設定でフラッシュをONにするとISOは自動でISO200になり、フラッシュをOFFにしてLEDで撮影する場合には撮影環境とLEDの明るさを考慮して自動感度アップする設定です。

今お見せした基本設定では、レンズキャップをはめ込んでいる状態なのでISO感度が上限の6400まで上がっています。

ストロボ使用時にTTL自動調光がうまく作動するようにカメラのフラッシュ設定を確認しておきます。ストロボ光が強い場合には、フラッシュ補正をマイナス側に振っていきます。現在は-0.3EVになっています。

補助光の設定

補助光のQ1RCは左右のボタンを長押ししてパワーONにします。通常の撮影ではダイヤルをRCの位置にセットしますが、今回は極近接撮影になるのでダイヤルはimにセットします。被写体とQ1RCが近い位置にあっても、TTL自動調光が効く素晴らしい機能です。Q1RCとハウジングを接続するケーブルは613芯マルチコアケーブル系をお使いください。複雑なRC信号を伝えるのに必要な条件になります。

LEDを補助光にする場合には、左ボタンを押してLEDの明るさを調整します。3段階の明るさを選ぶことが可能です。Q1RCのLEDはとても明るいので、全力にしなくても撮影は可能です。

ウミウシは光を嫌うので強すぎると逃げ足が速くなります。LED光が拡散しながら優しい色温度に調整されるドーム型ディフューザー「SD-02」は必ず使用してください。

LEDを照射させた状態でストロボを使用した場合に、ストロボ光が光る瞬間にLEDが自動消灯する機能が働きます。暗い環境ではカメラに備わっているNightLVとQ1RCのLEDで被写体を明るく確認できるので、追加でターゲットライトなどの装備は不要です。ターゲットライトをつけると、重くなり取り回しが悪くなってしまいます。

カメラレンズを選ぶ
60mmMCと90mmMCの比較

イメージが把握しやすいイメージカットを見つけました。(OMさんのHPから拝借しています)

(出典:OM SYSTEM

どちらのレンズも目一杯寄った時、写る被写体の大きさは同じです。90mmMCはより遠くから被写体を大きく写すことが可能です。近づいて大きく写せる60mmMCは浮遊物が多い環境でクリアーに写すことが可能になります。

被写体から同じ距離で撮影した場合には、90mmMCは被写体のドアップを狙うのに向いていて、60mmMCは画面の中に被写体を配置しながらスペースを調整する撮影手法に向いています。

撮りたい雰囲気やイメージに合わせてレンズを選ぶのですが、私は生物をやや離れたとこから脅かさずに撮影ができる90mmMCを好んで使っています。実際のマクロ撮影では、30mmMC、60mmMC、90mmMCの3つのレンズから選択します。

撮影倍率/拡大させる力について

レンズの比較

60mmMCと90mmMCでの最短撮影距離の撮影倍率は同じ2倍(35mm換算)、90mmMCのS Macroはピントの合う範囲が限定されますが4倍の大きさに。

60mmMC最短撮影距離

90mmMC最短撮影距離

90mmMC SMacro最短撮影距離

90mmMCのもう一つの魅力はS Macro撮影レンジが搭載され、撮影倍率をレンズ単体で大きく撮影が可能になったことが挙げられます。撮影距離レンジ選択でS Macroにセットすると、遠くにはピントが合わなくなります。しかし、通常の最短撮影距離を割り込んでさらに被写体に接近撮影することを可能にして、その結果被写体を大きく写す機能になります。90mmMCを収納するAOI FLP-09の魅力は水中でもその機能を使用することが可能になり、さらにマニュアルフォーカスコントロール ノブがフォーカスギア無しでダイレクトに操作することができるようになりました。レンズに装備されたFnボタンも操作できるので、90mmMが持つを多機能を水中でもフルに使えることになります。

クローズアップレンズ

クローズアップレンズは、レンズの外側に付ける拡大倍率を上げる秘密兵器です。このレンズをレンズポート先端に装着することで、90mmMCのS Macro的な効果を得られます。クローズアップレンズを付けると倍率が大きくなるのではなく、レンズの持つ最短撮影距離を縮めることで大きく写す効果が得られると理解してください。

このレンズを付けると、遠くの被写体にピントが合わなくなります。つまり、近づける被写体の撮影にのみ効果があるのです。臆病なハゼやハナダイ系の撮影には向かないということになります。

クローズアップレンズの拡大する能力を表記するのには、ディオプターの単位を使います。私たちが普段使っているメガネの度数もディオプターです。この数値がプラス側に大きくなると拡大する力も大きくなりますが、その分被写体に近づかなければならないということになります。

よく質問で聞かれることに「このクローズアップレンズは何倍ですか?」がありますが、カメラについているレンズによって撮影倍率が変わります。14-42mmにつけた場合と60mmMCにつけた場合とでは拡大倍率が変わります。といったわけで何倍か? の問いに回答することは難しいわけです。

多くの方がお使いの60mmMCにAOIの新型クローズアップレンズを装着して、その拡大率の違いを見てみましょう。通常のクローズアップレンズは画面中央部に解像が高く画面の隅に歪みが出るクローズアップレンズ特有の現象が現れます。しかし、AOIの新型クローズアップレンズは、特殊レンズの使用で解像が画面中で均一になるように設計されています。また通過光量減少が少ないレンズ硝材を使用しているので、今までのレンズより軽量で約1〜1/2絞り明るいのも特徴です。

AOI新型クローズアップレンズ

左からAOI UCL-900PRO,UCL-90PRO,UCL-09PRO

60mmMC最短撮影距離

60mmMC最短撮影距離+UCL09PRO.

60mmMC最短撮影距離+UCL90PRO.

60mmMC 最短撮影距離+UCL900PRO.

ウミウシ模型の大きさ

クローズアップレンズが拡大倍率アップに効果的なことが一目で掴めたかと思いますが、いかがでしょうか?

ウミウシ撮影に必要なアクセサリー

正確なピント合わせにフード付き拡大鏡「UMG-01」

UMG-01には視力に合わせて視度調整が可能です。シニアの方はレンズを引き出してご使用ください。私も多分に漏れず老眼が進んでいまして、このUMG-01が手放せないです。どのくらい効果があるか、同じ距離からモニター画面を撮影したものを見てみましょう。

UMG-01無し

UMG-01有り(色滲みは出ますが触覚のギザギザが掴めるほどみやすいです)

といったわけで、今回はかなり盛りだくさんな内容になってしまいました。書き始める前はサクッとシンプルに説明しようと心に誓っていたのですが、少し複雑になってしまいました。すべて理解しなくてもウミウシ撮影は楽しめるので、カメラの設定方法がわからなくなった時にこのページに戻ってきていただけるように、お気に入りに入れておいてくださいね。

次回は実際に海に出て、カメラの持ち方、構え方、浮力調整など撮影に際し、何を気をつければ良いのか? LEDライトとストロボ撮影の違いなどを紹介します。

今月のインスタライブでカメラ設定について詳しく解説していきますので、ぜひご参加くださいね。

インスタライブ

2月7日(水)20:00〜
インスタライブは終了しました。
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writer
PROFILE
1964年生まれ。水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影を行ないながら、沖縄・那覇にて水中写真教室マリーンプロダクトを主宰。 また、カメラメーカーの研究開発にも携わり、水中撮影モードや水中ホワイトバランスの開発アドバイザーも務める。1998年にデビューしたOLYMPUS C900Zoomから最新機種まで全てのOLYMPUS水中モデルのチューニングテストを行なっている。カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーメーカーのアドバイザーやテスト撮影の要望も多い。執筆活動では、水中撮影機材の解説や撮影の仕方、楽しみ方の記事をPADI Japan/デジカメ上達クリニック、OMDS/水中デジタルカメラ・インプレッション、マリンダイビング.ウェブ/水中デジカメ撮影教室、オーシャナ/カメラレビューを現在連載中。最近では、「清水淳のマンツーマン水中写真教室」が好評いただき熱意あふれるフォトグラファーたちと一緒に撮影をしている。
公式ホームページ https://shimizu.marine-p.com/ 公益社団法人日本写真家協会会員。
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