沖縄離島のダイビング旅2018(第8回)

久米島「ウーマガイ」でハナヤサイサンゴの一斉大放精放卵を目撃。動画も必見!

この記事は約4分で読めます。

久米島(撮影:越智 隆治)

昼にサンゴの産卵!?

沖縄、八重山地方で一斉にサンゴの大産卵が報告された5月30日。久米島のサンゴの産卵を観察できるビーチエントリーポイントまでは移動していたものの、強風と豪雨に見舞われて、夜の産卵を観察することは諦めざるを得なかった。

その後も、連日「サンゴ大爆発!」の報告がFacebookにアップされる中、やはり風に阻まれて、夜は足止めを食い続けた。

そんな中、久米島では5月30日の朝一本目のダイビングで、夜のサンゴの大産卵よりも珍しいかもしれないシーンに遭遇することができた。

1本目ウーマガイにエントリーすると、なんか海中は靄(もや)か、霞(かすみ)がかかったような異様な透明度。「なんなんだ! これは!?」と思ったが、すぐに原因が判明した。

久米島(撮影:越智 隆治)

リーフ上のチリメンハナヤサイサンゴが、もあもあと煙幕をあげるように、何かを放出していたのだ。
「これは、大産卵か?」とその異様な光景を撮影しまくった。

久米島(撮影:越智 隆治)

一緒に潜ったエスティバンのガイドたちの話だと、「ケミカルシグナルか、プラヌラ幼生の一斉放出、あるいは、放精放卵ではないかと・・・・」とのこと。

一斉にプラヌラ“ようせい”を放出していた! 妖精ではなく、幼生。(まあ、当たり前か。妖精放出していたら、それこそ大ニュースだからな・・・・。とか変なダジャレを言いたいわけではありません)

え? サンゴって夜に産卵するんじゃないの? と思われる方もいるかもしれないが、サンゴの中には、違った形で子孫を残すものもいる。

少し調べてみることにした。
日本には、約400種のイシサンゴ目が報告されていて、有性生殖の報告があるのが100種で、多くのダイバーがイメージするようなキクメイシやミドリイシの仲間のように夜にバンドルという精子と卵が入った球状のカプセルを放出するのは、約90種。
残りの10種のうち、早朝に放精放卵するのが2種。
放精放卵ではなくて、プラヌラ幼生を放出するのが7種。
そのどちらも一度に行うのが1種あるとされている。

今回目撃したチリメンハナヤサイサンゴは、バンドルではなく、精子と卵を別々に放出するタイプ。卵は海底に沈み、精子は霞状に、海中に拡散され、卵と出会い受精するスタイルなのだそうだ。
つまり、プラヌラ幼生の放出ではなくて、放精放卵ということになる。

興味の無い人には、バンドルだろうが、プラヌラだろうが、放精放卵だろうが、まあどうでも良い話かもしれないが、記事にするからには、あまりいい加減なことは書けないので専門家の方の意見も聞いたが、画像からだけでは100%の確証は得られなかった。
それにしても、凄い規模の放精放卵。

今までにも、日中にハナヤサイサンゴから、もやもやと煙幕のようなものを、1個体から数個体が同時に放出しているシーンは何度か見たことがある。夜の産卵に比べて特に幻想的ってわけでも、感動的ってわけでもないからあまり注目はされないし、自分もそんなに気にはしていなかったが、今回の大放精放卵は、本当に凄かった。
数メートル先にいるダイバーが見えなくなってしまう。それどころか、目の前を通過した魚でさえ、霞んでしまうほど、あちこちで一斉に放精放卵を続けていたのだ。

久米島(撮影:越智 隆治)

エスティバンのオーナーガイドの川本剛志さんも、「過去にも見たことはあるけど、こんなに大規模なものは珍しい!」とのこと。
魚と同じく、サンゴも子孫を残す方法が多岐に渡るのは、とても興味深くないですか?

しかし、夜の産卵に関しては、海況の問題でなかなか撮影に行くことができず、沖縄各地のガイドがFacebook上で、嬉々として報告するサンゴの産卵情報を唇を噛みながら眺めていた。

はたして、夜の産卵は撮影できたのか?
それは少し先になりますが、久米島のウェブマガジンで報告します。

最後に、ハナヤサイサンゴの放精放卵動画をどうぞ。

■Supported by DIVE ESTIVANT

久米島(撮影:越智 隆治)

老若男女問わずに楽しめるダイビングをゲストに演出してくれる。久米島随一の大型ボート(53フィート)と小型ボート(40フィート)の2隻のダイビングボートでダイビングに対応。大型ボートにはシャワー、トイレ、お茶やコーヒーなども完備され、船上も快適。魚の生態に詳しく、今はブラックウィーターダイブなども取り入れて、新たな海の魅力を演出し続けている。冬はザトウクジラのホエールスイムが人気。

〒沖縄県島尻郡久米島町比嘉160-69
TEL.098-985-7150 FAX.098-985-7151
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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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