パプアニューギニア ”濃密の瞬間(とき)”(第9回)

海の景色が一変するほどのインパクト! 巨大なカイメンの産卵に遭遇

パプアニューギニアのカイメン(撮影:中村卓哉)

ケビエンの「アルバトロスパッセージ」は、今まで訪れたパプアニューギニアのダイビングポイントの中でも5本の指に入るお気に入りポイントだ。

透明度も高く、バラクーダ、ツバメウオ、クロヒラアジ、ツムブリなどの群れが種々雑多に交差する。
また、アケボノハゼが10匹程度密集するような棚が所々に存在する。
それも水深が20メートル前後と浅く、まさに垂涎ものの好ポイントである。

この日も気象条件も良く、幸運なことに再びここへ潜ることができた。
しかし海中は明らかに透明度が悪い。
しかもなにやら煙幕のように白く靄がかかっているように見える。

「かなり濁っているし、今回は外れたかなあ」

そんな残念な気分であたりを見渡すと、白い煙幕の先は霧が晴れたように水が綺麗になっていた。
よくよく見るとその煙幕の正体はカイメンの産卵だということに気付く。

ここパプアニューギニアの海の特徴としてカイメンなどの底生生物が巨大で数が多いことがあげられる。
そのため産卵の瞬間は海の景色を一変させるほどのインパクトがある。

カイメンは内側の空洞にあるフィルターを通して海水を浄化する働きがあることから、カイメンが大きく育った海は栄養豊かな環境であるという指標とも言える。
魅力のある海にはその他様々な要因が奇跡的に重なりあって生き物たちを育んでいるのである。

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PROFILE
1975年東京都生まれ。

10才の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。

師匠は父親である水中写真家の中村征夫。
活動の場を広げるため2001年に沖縄に移住。その頃から辺野古の海に通いながら撮影を始める(現在は拠点を東京に置く)。

一般誌を中心に連載の執筆やカメラメーカーのアドバイザーなどの活動もおこなう。
最近ではテレビやラジオ、イベントへの出演を通じて、沖縄の海をはじめとする環境問題について言及する機会も多い。

2014年10月にパプアニューギニア・ダイビングアンバサダーに就任。

■著書:『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山 川 海』(偕成社)、『海の辞典』(雷鳥社)など。