パプアニューギニア ”濃密の瞬間(とき)”(第3回)

ポテンシャルが未知数のキンベ湾の秘境

パプアニューギニアキンベ湾(撮影:中村卓哉)

先日、ニューブリテン島のキンベを訪れた時の事である。
滞在時期が一緒だった日本人のゲストの方に、「今回はどのような生物を狙いに来ているのですか?」と聞かれた。
撮影テーマは明確にあったのだが、正直、なんて答えて良いか迷い曖昧な返答をしてしまった。

珍しい生き物にクローズアップすることはもちろんダイビングのひとつの醍醐味でもある。
いろいろなお考えはあろうと思うが、私は出会える生物がわかりきっている海に潜るなら、水族館へ行って時間をかけていくらでも観察すれば良いと思ってしまう。

パプアニューギニアの海もおそらく隈なく探せばあらゆる生物と遭遇できる可能性を秘めた海である。
しかし、一箇所にダイバーがごった返すような場所ではなく、基本的にサステイナブルツーリズムの考えから、一つの海域に対して一つのダイブリゾートしか存在しない。

そのため、圧倒的に生物を探す眼の数が少ない。

自然を配慮すれば、当然このような少人数限定のスタイルの方が環境へ与えるダメージも少ないと思う。
しかし、それでも毎年のようにシャチやマンボウ、ハンマーヘッドシャークなどの大物から珍しいハゼや甲殻類、新種のウミウシなどが次々と見つかっているわけだからそのポテンシャルは計り知れない。

今回2週間の滞在の最終日、なかなか行くことのできないダイブサイトへ行くことができた。
海の条件やゲストの組み合わせなどもあり、月に数回ほどしか行けないキンベ湾のはずれにあるポイントである。

海に飛び込むと、これでもかという数のバラクーダの塊が水深27mほどの根のトップに群れ、その群れの一部がさらに深場へと流れていく。
そこはムチヤギやシーファンなどがうっそうと茂り、まるで創世記へタイムスリップしたような光景が広がっていた。
水深も深く、なかなかじっくり粘っての撮影は出来なかったが、バラクーダの群れる場所としては初めて見る実に不思議な景観だった。

手つかずと言われるパプアニューギニアの海をビジュアルで表現出来るような新たな景色に出会うことができ、帰国してしばらく経っても今だ興奮が止まらないのである。

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writer
PROFILE
1975年東京都生まれ。

10才の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。

師匠は父親である水中写真家の中村征夫。
活動の場を広げるため2001年に沖縄に移住。その頃から辺野古の海に通いながら撮影を始める(現在は拠点を東京に置く)。

一般誌を中心に連載の執筆やカメラメーカーのアドバイザーなどの活動もおこなう。
最近ではテレビやラジオ、イベントへの出演を通じて、沖縄の海をはじめとする環境問題について言及する機会も多い。

2014年10月にパプアニューギニア・ダイビングアンバサダーに就任。

■著書:『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山 川 海』(偕成社)、『海の辞典』(雷鳥社)など。