パプアニューギニア ”濃密の瞬間(とき)”(第7回)

クマノミ属じゃないクマノミ!? スパインチーク・アネモネフィッシュ

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パプアニューギニアのスパインチーク(撮影:中村卓哉)

パプアニューギニアの海に多く生息するスパインチークアネモネフィッシュ。

目の下の頬の部分にトゲがあることからこの名前がついている。
リゾートのハウスリーフなどの浅瀬でも簡単に見ることができるので、パプアニューギニアを訪れると毎回のように撮影している。

クマノミの仲間はグループ内の大きな個体がメスに性転換し、あとはすべてオスだということはよく知られているが、このスパインチークアネモネフィッシュのメスは、ドス黒く厳つい。

正直、お世辞にも美人とは言えない。
よって、被写体として私が好んで撮影するのはもっぱらオスの小さな個体である。

幼魚のうちは、胸鰭、尾鰭が黒く、大きくなるうちに黒い部分の面積が小さくなり、成魚になると黒斑は消えて赤一色となる。

黒斑のある子はとても愛らしく見つけた時はかなりの枚数シャッターを切る。
ちょこまか動き回るので、なかなか黒斑を綺麗に写すのが困難である。
中には成魚で体の一部に白い斑点のある個体もいて、個体差によるデザインの違いを見ているだけでも飽きることがない。

パプアニューギニアのスパインチーク(撮影:中村卓哉)

実は世界には28種のクマノミがいるのだが、このスパインチークアネモネフィッシュはその中で唯一クマノミ属には入っていない。
名前の由来でもある頬にトゲがあることから、その他の27種とは区別されている。

「ファインディングニモ」の映画が流行った頃、東伊豆の富戸にスパインチークアネモネフィッシュがダイバーによって放流されたことが話題になった。

富戸にはクマノミがたくさんいるからといって、まったく生息域の異なる南国の魚を水温の低い伊豆に放流するなんてもってのほかである。唯一クマノミ属ではないクマノミをその他多数と混同しないでもらいたい。

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PROFILE
1975年東京都生まれ。

10才の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。

師匠は父親である水中写真家の中村征夫。
活動の場を広げるため2001年に沖縄に移住。その頃から辺野古の海に通いながら撮影を始める(現在は拠点を東京に置く)。

一般誌を中心に連載の執筆やカメラメーカーのアドバイザーなどの活動もおこなう。
最近ではテレビやラジオ、イベントへの出演を通じて、沖縄の海をはじめとする環境問題について言及する機会も多い。

2014年10月にパプアニューギニア・ダイビングアンバサダーに就任。

■著書:『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山 川 海』(偕成社)、『海の辞典』(雷鳥社)など。
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