パプアニューギニア ”濃密の瞬間(とき)”(第10回)

“海のアマゾン”と呼ばれる世界一のサンゴ礁

パプアニューギニア・トゥフィ(撮影:中村卓哉)

トゥフィ・ハネムーンのキャベツコーラル

「世界で一番綺麗な海はどこですか?」 これまで数え切れないほどこのようなご質問を頂いた。 冗談で「〇〇水族館」と答え、憮然とされたこともある。 魚の好みすら皆バラバラなのに、綺麗と感じる海ともなると十人十色。 透明度が高い海なのか、魚の量が豊富な海なのか、サンゴの密度が高い海なのか。

例えば、流氷の海なんぞは、水温が低く魚は少ないけれど、あんなに神秘的な光景は他には無い。
あなたの心に何色のフィルターがかかっているかで綺麗な海は変わるはず。

しかし、オンリーワンより、ナンバーワンを決めたいのが、ダイバーの性。 「それでは、魚が一番多い場所はどこですか?」こんな問答が必ず続くのだ。 海の中で魚の密度が一番多い環境がサンゴ礁だとすると、やはりサンゴの量や種類が一番多い場所は何処かということになる。

そうなるとインドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン、ソロモン諸島、東ティモールを結んだコーラルトライアングルと呼ばれるサンゴ礁三角地帯に絞られる。 この海域は“海のアマゾン“とも呼ばれ、世界の約三割ものサンゴが生息し、三千種類もの魚が集まる場所だ。

しかし、温暖化によってこのコーラルトライアングルのサンゴ礁も年々衰退しつつあると言われている。 私見だが、そんなことを微塵も感じさせないのがパプアニューギニアの海だ。 実際、リーフトップのサンゴと魚の量が多すぎてどのように写真の構図を切り撮るか物凄く悩む海である。 それだけ写真のイメージと実際に潜った景色のギャップが少ないとも言える。 世界で一番魚が多い場所がどこなのか気になる方は一度ご自分の目でこの海の豊かさ味わっていただきたい。

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PROFILE
1975年東京都生まれ。

10才の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。

師匠は父親である水中写真家の中村征夫。
活動の場を広げるため2001年に沖縄に移住。その頃から辺野古の海に通いながら撮影を始める(現在は拠点を東京に置く)。

一般誌を中心に連載の執筆やカメラメーカーのアドバイザーなどの活動もおこなう。
最近ではテレビやラジオ、イベントへの出演を通じて、沖縄の海をはじめとする環境問題について言及する機会も多い。

2014年10月にパプアニューギニア・ダイビングアンバサダーに就任。

■著書:『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山 川 海』(偕成社)、『海の辞典』(雷鳥社)など。
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