パプアニューギニア ”濃密の瞬間(とき)”(第11回)

トゥフィの名物「赤玉」レッドピンジャロスナッパー ~アプローチ法と撮影テクニック~

トゥフィの名物「赤玉」レッドピンジャロスナッパー

レッドピンジャロスナッパー

トゥフィの名物といえばこのレッドピンジャロスナッパーの群れ。
見た目の通り真っ赤な魚が大きな群れを作る姿から通称「赤玉」と呼ばれている。

赤い魚の群れといえば、沖縄でもよく見られるアカマツカサなど暗がりに潜む魚をイメージしやすい。
赤色は海の中では黒っぽく見えるため、赤い魚は暗がりや深場を好む傾向にある。

この魚、どちらかといえば、潮あたりの良い浅場でも群れるホウセキキントキにビジュアル的には近いだろうか。

薄い桜色から濃い赤へと頻繁に体色を変化させる点もホウセキキントキに似ている。
やはり海中では見た目は赤ではなく薄い灰色から黒っぽく見える。
そのため鮮やかな赤色を再現させるには至近距離で強めに光を当てないとならない。

比較的透明度の良いトゥフィでもストロボの光が届く限界は2〜3メートルほど。

真っ赤な魚の色を出すには魚眼レンズで光の届く範囲まで距離をつめる必要がある。
実はこのアプローチが意外と難しい。

普通に真横から群れに寄っていくと警戒して帯状に群れが広がり、さらに深場へと逃げていってしまう。

魚たちは潮の流れに向かって泳ぐ性質があるので、コツとしては斜め前方から潮の流れに乗って流されながら距離を詰めていく。
しかし、単純に前から距離を詰めるといっても魚に警戒されずに群れの前方へ出るにはかなり大回りで潮に逆らって泳がなければならない。

そして、何よりもシャッターを切るタイミングが大切だ。

ギリギリまで我慢して距離を詰めたら一発勝負。
一度シャッターを切るとストロボの光に警戒してくるりと向きを変えたり、群れが真二つに分かれたりする。
そこで撮影は即終了。

一度警戒させたらそれ以上執着しないこと。
こんな魚との我慢比べを楽しみつつ、カメラの液晶に赤玉が鮮明に浮かび上がった瞬間は格別である。

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writer
PROFILE
1975年東京都生まれ。

10才の時に沖縄のケラマ諸島でダイビングと出会い海中世界の虜となる。

師匠は父親である水中写真家の中村征夫。
活動の場を広げるため2001年に沖縄に移住。その頃から辺野古の海に通いながら撮影を始める(現在は拠点を東京に置く)。

一般誌を中心に連載の執筆やカメラメーカーのアドバイザーなどの活動もおこなう。
最近ではテレビやラジオ、イベントへの出演を通じて、沖縄の海をはじめとする環境問題について言及する機会も多い。

2014年10月にパプアニューギニア・ダイビングアンバサダーに就任。

■著書:『わすれたくない海のこと 辺野古・大浦湾の山 川 海』(偕成社)、『海の辞典』(雷鳥社)など。