“ミスターオリンパス水中”清水淳の水中カメラレビュー(第11回)

【“ミスターオリンパス水中”清水淳のカメラレビュー】OLYMPUSユーザーのための水中専用フラッシュ UFL-3[後編]

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※本記事は「清水淳 水中カメラマンインプレッション」のアーカイブより転載しています。発売当初の情報となりますので、最新情報は「オリンパス公式サイト」などをご確認ください。

RCシステム多灯コントロールを手軽に楽しむ

高性能なRCシステムはそのままに、UFL-2より大幅にサイズダウンと軽量化を達成した新しい純正RCフラッシュUFL-3。UFL-3のRCシステムは、カメラからフラッシュに発光量をダイレクトに通信するので、ダイヤルを「RC」にセットするだけで最適な光量を得ることができ、初めてでもメカが苦手でも、複雑な操作をすることなく、鮮や かな水中写真が撮れる。単3型バッテリー4本タイプになり、ガイドナンバー22と小型なボディーながら高出力とショートリサイクルタイムを実現した次世代フラッシュだ。 前編ではUFL-3の主な特長と1灯システムのセットアップをお伝えしたが、後編ではRCシステムの本領的な多灯コントロールについて解説する。

純正RCフラッシュの利点(模倣型フラッシュとの違い)


カメラとフラッシュが通信を行いながら複数のフラッシュをコントロールするRCフラッシュは、撮影シーンや表現方法に応じてモニターを見ながらフラッシュの発光量をコントロールし、トライ&エラーで自分の思い通りの撮影が可能となる。その他の利点を下記にまとめたので確認してほしい。

RCフラッシュ2灯のセットアップ。難しそうなイメージがあるが、UFL-3は至って簡単だ!

利点1
被写体までの距離、被写体の大きさ、背景の明るさ等の諸条件からカメラがフラッシュ発光量を決め正確に照射するので失敗が少ない。

利点2
左右のフラッシュの発光量を自在にカメラ内でコントロールできる。発光モードや光量調整などをすべてカメラ背面のスーパーコントロールパネル上で設定できるので、アームの先端にあるフラッシュにその都度手を伸ばして調整する手間が無いので操作が楽。

利点3
RCフラッシュは信号の発光だけなのでカメラのチャージタイムが短かくシャッターチャンスに強い。このカメラの電池消費量も抑えられる。

今回のインプレッションでは、一般に購入できる水中フラッシュとの比較も行った。オリンパス純正のRCフラッシュUFL-3は初期設定のままでも適正な光量を得られた。水中写真の出来上がりの善し悪しはフラッシュ光のコントロールに大きく影響する。そういう意味では、OLYMPUSのカメラを使う上でRCフラッシュが不可欠といえるだろう。次にRCフラッシュならではのシチュエーションや、フラット照射の設定、多灯コントロール設定をシーン別に解説しよう。

UFL-3を使いたいシーン

  • ●E-M5やE-M1のように内蔵フラッシュでは外部に照射できない防水プロテクターの構造になっている機種を使用する場合。
  • ●E-PL7のように内蔵フラッシュでも撮影は出来るが、より大きなフラッシュ光や当て方に工夫が必要な場合。
  • ●フィッシュアイレンズ等の超広角レンズ使用時、照射角の問題で多灯システムが必要になる場合。
  • ●超高倍率マクロ撮影の時、内蔵フラッシュでは、被写体との距離が極短く(灯台下暗し状態で) フラッシュ光がまわらない場合。
  • ●TG-3等コンパクトカメラで浮遊物の多い環境で撮影する際、浮遊物でノイズが出るような状況。
  • ●TG-3等コンパクトカメラでワイドコンバージョンレンズを使う際、内蔵フラッシュ光がレンズに当たりケラレてしまう場合。
  • ●水中ホワイトバランスと高感度を生かしながらTG-3のLEDライトを使い静止画、動画を撮りたい場合。

UFL-3を左右同一の設定で使う場合


泳いでいるカメや大きな魚など、被写体まで距離があり左右のフラッシュ光量を変える必要がない場合は、左右共に同一フラッシュとして扱う設定にする。特別な意図が無い場合もこの設定でOKだ。

2灯コントロール

左側フラッシュ

右側フラッシュ

UFL-3の設定
メインスイッチ:右側フラッシュをRCA、左側フラッシュもRCAにセットする。

カメラの設定



メニューからRCモードONにセット、OKボタンを押しスーパーコンパネを表示、その状態でINFOボタンを押すとRC画面が表示される。チャンネルAのみTTL。フラッシュ光量は、スーパーコンパネでフラッシュ補正を選択する。左右のフラッシュは、2台共にチャンネルAとしてコントロールされる。

フラッシュ光量調整画面


±3段の調整が可能。ここで必要な量を調整。+に振ることは先ず無い。

左右独立した光量コントロール

RCフラッシュUFL-3なら左右のフラッシュの光量をカメラ内でコントロールができるので、面倒がなく使い勝手が良い。例えば長いアームを使用することの多いワイド撮影では、フラッシュまで手を伸ばさずにTTL自動調整を利 用しながら、±5 EV/0.3EVずつ直感的に調整することで、モニターから目を離さずに撮影に専念できる。陰影の付け方においても立体感を演出したり、フラッシュと被写体との距離の違い等で左右の光量を意識的に変えることができるのはRCフラッシュならではの機能だ。

左右のフラッシュの光量が同量の場合。

左右のフラッシュを強めにTTL自動調光させた例。

右側のフラッシュを強めにTTL自動調光させた例。

左右独立したコントロールの設定

左側フラッシュ

右側フラッシュ

UFL-3の設定
メインスイッチ:右側フラッシュをRCA、左側フラッシュもRCBにセットする。

カメラの設定



カメラの設定
RC画面を表示、チャンネルAのみTTL→TTL、チャンネルBをTTLにセットする。左右のフラッシュは、それぞれ、A、Bとして独立してコントロールされる。左右の光量バランスが決まったら、スーパーコンパネ/フラッシュ光量で加減する。

2灯コントロール 例その1


チャンネルAの光量を-2EVにセットする。右側のフラッシュの光量が落ちる。


チャンネルBの光量を-2EVにセットする。左側のフラッシュの光量が落ちる。

2灯コントロール 例その2


左右同光量の場合、左手前のサンゴがオーバーになる。


左側の光量を下げて、右側の光量を上げて後方へまわすと、背景のサンゴにもフラッシュ光がまわり奥行きが出る。

2灯コントロール 例その3


背景に何も無いブルーに、細かい魚たち。この状況はTTLが効きにくい状況。カメラは後ろのドロップオフの壁を見てそこに光を当てようとする。そうすると手前の魚たちはオーバーになる。外洋で良くあるシーンだ。フラッシュ補正を思いっきりマイナスにする手もあるが、魚たちの割合が増えると今度はフラッシュ光が極端に足りなくなる。


そこで、TTLをあきらめマニュアル発光にする。RC画面でTTL→Mにセット。発光量は1/1~1/128。1/20位から試してみると良い。分母が大きくなるほど光量は少なくなる。

TG-3でUFL-3を使う


UFL-3は一眼カメラだけでなく、コンパクト機種でも外付けRCフラッシュとしての効果は大きい。単に口径の 大きいワイドコンバージョンレンズが使えるだけでな く、一眼カメラ同様にたくさんの恩恵があるので合わせて確認してみよう。

設定


カメラの設定
●撮影モードは水中モードを選択する。
フラッシュの照射を水中環境において最適にコントロールする為に必要。
●メニューからアクセサリー→リモートフラッシュ→RC


●十時キー右ボタンを押してフラッシュのモードを選択。 (通常強制発光) →RCに変更 (電源を入れるたびにフラッシュの設定が必要。カスタムモードに登録すると再設定が不要)

UFL-3の設定

●メインスイッチをRCAにセット

UFL-3を使いたいシーン ワイド

内蔵フラッシュのみ

UFL-3&PTSA-03

浮遊物が多いシーンで、内蔵フラッシュを使ったワイド撮影を行うと、浮遊物にフラッシュ光が反射してノイズが 出る。レンズとフラッシュの位置が離れているPEN等とは違い、TG-3ではノイズが激しく出る場合が多い。このような場合は、UFL-3を使って撮影するとノイズは少なくなる。

TG-3&PT-056には、ショートアームを長いタイプのショートアーム、PTSA-03を使う。短いPTSA-02の場合、コンパクトで使いやすそうだが、マクロ撮影時に被写体とのフラッシュの距離が近すぎてフラッシュ光を被写体に上手く当てられない。

ワイコン使用時には、アームが短いとワイコンにフラッシュ光があたり遮られてしまう。アームを後方に引いてフラッシュを被写体から離すようにセットする。

UFL-3を使いたいシーン マクロ

内蔵フラッシュのみ

UFL-3&PTSA-03

被写体に激寄りできるTG-3は、内蔵フラッシュだけでもきれいに撮影できるが、フラッシュの位置がレンズの左上にあるので、写真左上が明るくなり、右下は暗くなる。フラッシュ光が均一にまわらない。このような場合にUFL3を使うと、画面全体に均一にフラッシュ光を照射することが可能だ。

コンパクトカメラは、できるだけシンプルに不要なアクセサリーを着けないのが私の流儀だが、ここまで完璧な光量調整を行えるのであれば、大掛かりになっても持って行こうかな?!という気になる。LEDライトを使えるというメリットも大きい。

ターゲットライト


UFL-3には1WのLEDターゲットライトが搭載されている。フラッシュ発光時に自動消灯する。OLYMPUSとしてはあくまでもターゲットライトとしているが、マクロ撮影では、動画、静止画共に水中ホワイトバランス&ISO AUTOとの組み合わせで光源として十分に使うことができる。LEDライトの色温度のチューニングと光量のバランスが絶妙だ。大光量ライトを使う方が増えてきているが、露出自体に影響が出る程明るく白飛びする要因になったり、被写体を逃がす原因になるほど強力なライトは撮影には向かない。

今回UFL-3に搭載された小さなLEDは他社のカメラには役に立たないが、オリンパス製カメラの水中ホワイトバランスとISO AUTOの水中モードで撮影すると驚くほど相性が良い。次の作例の暗闇に潜むニチリンダテハゼを驚かせること無く、ターゲットライトとして、光源として利用ができた。同じシーンでフラッシュONとフラッシュ OFF&LEDの比較を行った。どちらもそれぞれ趣のあるカットになった。被写体によって、フラッシュ光、LED光それぞれどちらで使った方が良いのかシチュエーションによって異なるので、両方試してみてみることをお勧めする。

カメラ側の設定

フラッシュON
カメラ:E-PL7
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ
撮影モード:水中マクロ
絞り値:F8.0 シャッター速度:1/80
ホワイトバランス:水中WB
露出補正:-0.7EV
ISO感度:ISO200(AUTO)
フラッシュ:UFL-3×1(-0.3EVRC)
撮影地:フィリピン ボホール

フラッシュOFF
UFL-3LEDをON
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ
撮影モード:水中マクロ
絞り値:F5.6
シャッター速度:1/100
ホワイトバランス:水中WB
露出補正:-0.7EV ISO感度:ISO200(AUTO)
フラッシュ:OFF 撮影地:フィリピンボホール

セット例

セット例
フラッシュ:UFL-3×1
カメラ:TG-3
防水プロテクター:PT-056
グリップ:MP/MPBK-03
アーム:PTSA-03

セット例
フラッシュ:UFL-3×2
カメラ:E-PL7
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0
防水プロテクター:PT-EP12
グリップ:MP/MPBK-02
アーム:MP/MPアームSセット×2

撮影シーンの動画

カメラ:E-PL7
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ
撮影モード:水中マクロ
ホワイトバランス:水中WB
露出補正:-0.7EV
ISO感度:ISO200(AUTO)
撮影地:フィリピン ボホール

アクセサリーの紹介

水中専用フラッシュ UFL-3

カメラ側で発光モード、発光量をコントロールできる水中専用フラッシュ。

水中光ファイバーケーブル PTCB-E02

水中撮影用外部フラッシュ用接続ケーブル。

ショートアーム PTSA-03

水中専用フラッシュを防水プロテクターに接続するための短いアーム。

 

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writer
PROFILE
1964年生まれ。水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影を行ないながら、沖縄・那覇にて水中写真教室マリーンプロダクトを主宰。 また、カメラメーカーの研究開発にも携わり、水中撮影モードや水中ホワイトバランスの開発アドバイザーも務める。1998年にデビューしたOLYMPUS C900Zoomから最新機種まで全てのOLYMPUS水中モデルのチューニングテストを行なっている。カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーメーカーのアドバイザーやテスト撮影の要望も多い。執筆活動では、水中撮影機材の解説や撮影の仕方、楽しみ方の記事をPADI Japan/デジカメ上達クリニック、OMDS/水中デジタルカメラ・インプレッション、マリンダイビング.ウェブ/水中デジカメ撮影教室、オーシャナ/カメラレビューを現在連載中。最近では、「清水淳のマンツーマン水中写真教室」が好評いただき熱意あふれるフォトグラファーたちと一緒に撮影をしている。
公式ホームページ https://shimizu.marine-p.com/ 公益社団法人日本写真家協会会員。
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