オーストラリア東海岸、関戸紀倫Dialy〜ドライブ&ダイブサファリ〜(第9回)

【Day11】 105年もの間、水中に潜む沈船「ヨンガラレック」は、濃密な生態系の宝庫!

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かすかに見える船体が歴史を物語っていた オーストラリア東海岸、関戸紀倫Dialy〜ドライブ&ダイブサファリ〜

客船「SSヨンガラ」、悲劇の沈没から105年。
今では、珊瑚が根付き、たくさんの魚が群れる超有名ダイビングポイントとなっている。
多くのダイバーに愛されている「ヨンガラレック」は、期待を上回る迫力で、僕を迎えてくれた。

Day11~ヨンガラレック~

沈船に見えないレックポイント
「ヨンガラレック」とは?

7:00に起床し、器材のセッティングなどを終わらせる。
すると、バイロンベイ(Byron Bay)やサウスウエストロックス(South West Rocks)同様、お店の前にボートがあり、毎回ダイビングから帰って来たらボートを上げるスタイル。
器材を積み込んだら乗船前にブリーフィングだ。

愉快で優しいヨンガラダイブのクルー達

愉快で優しいヨンガラダイブのクルー達

ブリーフィングはお店で事前にしっかりとわかりやすく行われていた

ブリーフィングはお店で事前にしっかりとわかりやすく行われていた

今回潜るポイント「ヨンガラレック(Yongala Wreck)」は潮の流れもあり、外洋に位置しているため、注意点や見どころなどが、事前にしっかりレクチャーされた。

「ヨンガラレック」について少し説明しよう。

1911年3月、メルボルンからケアンズへ航海中だった客船「SSヨンガラ」は、多くの乗客と乗組員とともにクィーンズランド州の小さな町、エア(Ayr)沖およそ22kmのところに沈没した。
いまだに原因は、詳しくはわかっていないが、おそらくサイクロン(オーストラリアバージョンの台風)による事故だと考えられている。
実は、最後にタウンズビル(Townsville)沖で船が目撃されてから、詳細は不明なままだったが、およそ50年後に、たまたまダイバーが発見したという。
「SSヨンガラ」が沈没した位置は、岸からおよそ22kmで、グレートバリアリーフからもおよそ30km離れている。
つまり、岸とグレートバリアリーフの間に沈んだのだ。

この辺りにはもともと珊瑚礁もなければ岸もなく、魚が住み着く場所は存在しなかった。
そこに突如現れた、全長105mもある船に、岸から流れ着いたマングローブなどにしか生息しない生態系や珊瑚礁にしか生息しない生態系が住み着きはじめる。

発見されることとなる1958年当時、すでに船の原型はなく、サンゴと魚がたくさんいる、ただの根だと思われていた。
それが、「SSヨンガラ」だと発見される決め手になったのが、かすかに見えていた船の名前のプレート。
ついに、およそ50年前に沈んだ船と判明した。

時が経ち、沈没から105年。
今では何万ものテンジクダイの仲間や多くの小魚の群、回遊魚、サンゴなどが生息していて、遠くからは全く船の原型は感じられない。

サンゴや小魚が船一面を覆っていて船の原型がわからない程

サンゴや小魚が船一面を覆っていて船の原型がわからない程

かすかに見える船体が歴史を物語っていた

かすかに見える船体が歴史を物語っていた

群れる小魚と狙う捕食者たち
濃密な生態系を目の当たりに

早速、サービスから5分ほどのなにもないビーチに到着。
スタッフがトラクターで大きなボートを牽引して、手慣れた作業で船を海に下ろす。

トラクターでビーチまで船を運び下ろしている様子

トラクターでビーチまで船を運び下ろしている様子

船に乗り込み、エアからポイントまでは約30分。
説明したように、ポイントは周辺に風をさえぎる海岸、岩、珊瑚礁などはなく、風をもろに受けるので船はかなり揺れていた。
しかも、今日は大潮なので流れも強そうだ。

スタッフが、沈船から伸びているブイに、移動用のロープを準備してエントリー開始だ。
ロープを離さずに、ロープを引っ張るような感覚でゆっくり潜降していく。
ちなみに船の水深はトップで15m、水底が26mとダイバーにはやや深め。
基本的には自由潜降は禁止だ。
透明度が悪い時など、流れがあるときは船体を見失いやすくとても危険なので、必ずロープ潜降することが決められている。

水深10m付近にたどり着くと、ようやく念願「SSヨンガラ」が見えてくる。

船全体を覆っているテンジクダイの仲間で、船体がはっきりと見えない。
小魚が何万と群れている。
すると、「シュー!」っと何かが僕の近くを横切った。
超巨大なロウニンアジだった。
よく見るとロウニンアジだけではなくギンガメアジやカンパチなどの魚が、小魚を狙っていた。

ロウニンアジやハタなどが小魚を目の前で追う

ロウニンアジやハタなどが小魚を目の前で追う

船の周りをグルグルしていたタカサゴの群れ

船の周りをグルグルしていたタカサゴの群れ

「シャー!」
小魚が逃げる音が聞こえてくる。
よく見ると、一匹一匹の魚のサイズが大きい。
ただでさえ強面のロウニンアジが、エサに夢中で近くを猛スピードで通るので、なおさらちょっと怖いけど、間近でここの食物連鎖が観察できる。
もちろん船の周りには、海の食物連鎖の頂点に君臨するサメなどの捕食者がさらに狙っていたり、巨大なマダラエイや大きなタイマイが居たり、中層を見るとバラクーダやツバメウオが群れていた。

中層に群れていた巨大ツバメウオ

中層に群れていた巨大ツバメウオ

しかし、それだけではなかった。
ここには、もっと大きな主が住み着いていたのだ。

タマカイやギターシャーク……
大物がどれだけいるんだ!?

その正体は体長がおよそ3m位あるタマカイだ。
3匹居て、1匹はすぐ逃げちゃう子だった。
しかも体の周りには多くの小魚が付いていて、遠目から写真を撮ろうにも全然撮らせてくれない。
でも、他の子はあまり逃げないので、ゆっくり寄らせてもらった。

体長3mはありそうな巨大なタマカイは3匹住んでいる

体長3mはありそうな巨大なタマカイは3匹住んでいる

すると奥の方で、なにやら大きな影が動いた。
近寄って見るとギターシャーク(トンガリサカタザメ)が、優雅に泳いでいた。

ここの海は、時期によってはマンタやザトウクジラなどの大物を見ることもできるらしい。
とにかく大物が豊富すぎる海だ!

優雅に泳いでいたトンガリサカタザメ。別名ギターシャーク

優雅に泳いでいたトンガリサカタザメ。別名ギターシャーク

船の船首部分から撮影したが言われてみないとわからない

船の船首部分から撮影したが言われてみないとわからない

今回はそんなに透明度はよくなかったけれど、次回は透明度がいい時に、船全体などの写真を撮ってみたい。
ダイビングから上がってきて、他のゲストも興奮しながら「本当に魚影が濃いね」など、みんな念願の「ヨンガラレック」を潜れて喜んでいました。

「ヨンガラレック」は
実はハードルの高いポイントだった

今回のゲストはほとんどが外国人(オーストラリア人以外)で、世界的に有名なポイントというのがわかった。
「ヨンガラレック」へのボートは、今回の利用したサービスの「ヨンガラダイブ(Yongala Dive)」と100km南にある街、タウンズヒビル(Townsville)からしか行けないポイントで、しかもサービスは2つのみ。
そして、タウンズビルからポイントまでは、片道3時間かかるらしいので、船酔いとの格闘になりそうだ。

「ヨンガラダイブ」は、宿泊施設(ドミトリールーム)も完備していてキッチンも使える。
また、他の人と部屋をシェアしたくない人は、プライベートルームをチョイスできる。
エアは小さ町なので夜は自炊するか、車で30分かけてレストランに行くかだ。
しかし、みんなで料理を作るのも悪くない。
ということで、ダイビングが一緒だったゲストと一緒にパスタを作って、ダイビング話で一晩中盛り上がった。

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writer
PROFILE
1988年7月6日生まれ
東京にフランス人の父、日本人の母の間に生まれる。生まれて間もなくフランスのパリに移りフランス人として成長し10年。父は写真家、ダイビングインストラクター。
小さい時から父にフィリピン、タイ、ガラパゴス諸島など自然豊かな場所に連れて行ってもらい、いつの間にか自然が大好きになる。時が経ち2010年にダイビングを始め2011年から沖縄でダイビングインストラクターとして活動。2013年からオーストラリアのダイビングクルーズ船にて働くことになりそこで船内販売用に写真を撮る。今度は撮った写真をソーシャルネットワークにも載せたりするようになり友達に『世界にはこんな場所がある!こんな海がある!』などと紹介するのが楽しくなる。2014年10月にクルーズ船の仕事を終え帰国前にオーストラリアを一周することに決め念願の一眼レフを手に入れ放浪。 現在は、自然写真家として水中写真をメインに世界中を撮影し活躍中。
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