沖縄離島のダイビング旅2017(第8回)

ダイバー憧れの西表島「オガン・三の根」で、幻のカスミアジの大群を狙え! ~モデル絡みの撮影にチャンレンジ~

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西表を代表する豪快ダイビングスポット・オガン

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西表島でうなりざきロケといえば、切っても切れないのがオガンでのダイビングだ。
オガンとは通称で、正式名称は「仲之御神島(なかのかみしま)」。西表島の南西約15kmにある岩礁で、その周囲は豪快な地形や、大物、群れを狙える西表島を代表するダイビングポイントとなっている。

このオガンにこだわり、西表島で一番潜っているのが、うなりざき西表店
中でも人気が高いのが、三の根。
ここでは、このシーズン100匹を超えるイソマグロの群が間近で見られることで人気がある。多くのダイバーが、このポイントにも潜ることを楽しみに、西表、そしてうなりざきにリピートしてくるのだ。
しかし、孤島なため、風が吹くと潜れなかったり、天気が良くて、現地についても、時にロープ潜降も困難なほどに激流になることもあり、潜るのを諦めて引き返すことも多い。

オガン・三の根では定番のイソマグロの群れ

オガン・三の根では定番のイソマグロの群れ

しかし、この三の根には、さらにダイバーを魅了する群れが生息している。“幻”とまで言われるカスミアジの群れだ。
イソマグロの群れとカスミアジの群れなら、多くのダイバーが、イソマグロの群れの方が良いと思うのが普通だろう。しかし、ここのカスミアジの群れは、多い時には、おそらく1000匹近くが群れる。

「こんなにカスミアジが群れている海は、知らない」とは、世界中の海を潜り込んだベテランダイバーの言葉。自分も多くの海を潜って来たが、カスミアジの大きな群れを見たことがあるのは、パラオのペリリューコーナーくらいだ。

しかし、問題なのは奴らはかなりシャイだということ。

普通にダイビングしていたら、あっという間に逃げられてしまうので、少しでも見れたらラッキー。撮影できたら超ラッキーというくらいの遭遇難易度。うなりざきのチーフガイドの森脇純一さんいわく、遭遇率は30%。
撮影するとなると、当然の事ながら、さらに確率は下がる。だからこそ、“幻”であり、脚力に自信があるリピーターの中には、この“幻”のカスミアジの群れを狙ってオガンをリクエストする人も多いと聞く。

「ダイバー絡みのカスミアジを撮影してみろ」
ハードルの高いリクエスト

うなりざき西表での取材は、これで4回目になる。取材担当ガイドが森脇純一さんなのは、今回で3回目。
一度目の取材の時から、「三の根では、誰もまともに撮影したことのない、カスミアジの群れを狙って欲しい」と、うなりざきオーナーの吉坊に言われて、三の根でかなりハードな潜り方をしてカスミアジを狙って来た。
そして、最初の取材で撮影し、吉坊に「これはすごい!」と言わしめたカスミアジの群れの写真がこれ。

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「こんな写真はなかなか撮れないよ」と気に入ってもらえたのは良かったが、それ以降、うなりざき西表でのロケでは、このカスミアジの群れを撮影することが、当然のようにマストアイテムとなってしまった。

これほどの群れはなかなか撮影できなかったものの、昨年もそれなりにカスミアジの群れの撮影ができた。遭遇率だけで言えば、初回よりも2度目の方が高かった。

「カスミアジ簡単に見れるじゃん」

昨年の遭遇率の高さで、自分も調子付いてしまったところもあったかもしれない。「カスミアジだけ撮影するのはプロの水中カメラマンだから簡単だろうって思われちゃうから、次回は、モデル絡みで撮影して見てよ」と吉坊。

それって、水中カメラマンのスキルや運だけじゃなくて、モデルのスキルや、ガイド、カメラマン、モデル三者の阿吽の呼吸みたいなものが、すごく重要になってくる。今までは、ガイドの森脇さんの動きや、何を求めているかを観察し予測しながら群れにアプローチするだけで良かったが、さらにモデルとの瞬時の意思の疎通等も重要になってくる。

単純にサンゴの根やクマノミと絡めてとか、簡単に撮影できる群れと絡めてとかそういうレベルではないものが要求されていたわけだ。

三の根に7ダイブ。
初日の1本目にカスミアジの群れに遭遇する幸運と不運

そして今年。初日のオガン・三の根1ダイブ目。新月4日前。流れはゆるい下げ。
「上げの潮の方が当てる確率は高い」という森脇さん。しかし、ロケ期間中はほとんど下げのタイミングだった。

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昨年までは潮に逆らってカスミアジの群れの出る「カスミガセキ」というエリアまで泳いだが、今年は流れに乗って行けるので楽ではあった。しかし、「下げで観れる確率はかなり低い」と聞かされると手放しでは喜べなかった。

それに場合によっては、「カスミガセキ」で見つからない場合、エントリーポイントである「浅い根」や、さらに西の「限界」というエリアまで、流れに逆らって戻る可能性もある。エントリー直後には、100匹のイソマグロの群れに遭遇。ここで、モデルと群れ絡みの撮影を少し練習し、極力エアを浪費しないように撮影を行うと、カスミガセキに向かって移動を開始した。

イソマグロとモデル撮影は簡単にできたのだけど……

イソマグロとモデル撮影は簡単にできたのだけど……

不気味な形をした岩礁が林立するカスミガセキ

不気味な形をした岩礁が林立するカスミガセキ

しばらくは、不気味な形をした岩礁が林立する海中を流れに乗って移動していた。常に周囲とガイドの森脇さんの行動に視線を走らせ、時折モデル役のルコちゃんの位置を確認していた。

と、おもむろに森脇さんがペットボトルと指示棒を握り、音を出す姿勢を取り始めた。
(カスミいたのか!? でも、ここでペットボトル鳴らすか!)
そう思ったのは、両サイドが岩礁に囲まれ、その上、目の前には、三角形の岩が立ちはだかり、視界がほとんど遮られていたからだ。視界だけではない。

ペットボトルを激しく鳴らすことで、一瞬カスミアジの群れが、こちらにわ〜! と近づいてくることがある。その時のカスミアジの進路も邪魔しているし、おまけに岩の後ろにいる群れも見えない。
撮影条件としては最悪な場所だった。

「すでにカスミアジがこちらに気づいて移動を始めているのが見えたので。やむを得なかったんです」と後で森脇さんから聞かされたが、この時は、(せめてその三角形の岩を越えてからにしてくれ)そう願っていた。

ペットボトルを取り出した森脇さん、写真左端に、問題の三角の岩の端が見える

ペットボトルを取り出した森脇さん、写真左端に、問題の三角の岩の端が見える

しかし、その願いもむなしく、森脇さんがペットボトルを連打し始めた。
(あ〜! しょうがない!)
自分はモデル役のルコちゃんが付いて来てくれることを願いながら、ダッシュで三角の岩を目指した。できるなら、この三角の岩を越えて、反対側の視界の開けた部分まで飛び出したかった。カスミアジがこちらに向かってくる前に……!

しかし、僕の泳力は音に反応したカスミアジのスピードには敵わなかった。三角の岩によって、カスミアジの群れは両サイドに割れてこちら側に流れ混んで来た。

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もう、ここで撮影するしかない。あとはこちらのカメラの向く方向にルコちゃんが入って来てくれることを願うばかりだった。しかし……後方では、二つに割れた群れのどちらに反応していいのか迷ったルコちゃんの姿が。

撮影できたのは、この1カットだけだった。ルコちゃんの後方に微かにカスミアジが写っている。しかし、この撮影のあと、カスミアジたちは、蜘蛛の子を散らすように、岩礁の裏へと姿を消した。

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(だめだ〜!)
そう思いながらも、すぐに気持ちを切り替えて、カスミアジが逃げて行った方へとさらに進んで行った。
(もう一度チャンスが欲しい! 次はもう少し視界の開けた場所で出てくれ!)

しかし、その思いも届かず、時間切れに。

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船に浮上の合図を送る森脇さん

船に浮上の合図を送る森脇さん

思わず口から出たのは
「うわ!出た!」

フロートを上げ、安全停止、そして、浮上。
ボートは、少し離れた他のグループをピックアップしていて、まだ時間がかかりそうだった。その間も、往生際悪く、カスミアジが下を通過しないかと、自分は何度も海中を見回した。諦めかけて、森脇さんと少し談笑をして、再度思い出したように、下を見ると、なんと! そこには、足元一面、海底から浮上して来たカスミアジの群れが!

「うわ! (カスミアジが)出た!」そう叫んで、慌てて潜降しようと、インフレーターホースを引っ張ってBCのエアを抜こうとしたが、レンタルギアで初日の1本目だったために、自分のBCと構造が違い、引っ張ってもエアが抜けず、無理やりヘッドファーストでバタバタあがきながら潜降したために、接近しての撮影が間に合わなかった。

おまけに、自分の発した叫び声に、森脇さんと、ルコちゃんは、タイガーシャークでも上がって来たのかと思って怯んでしまったらしく、同じく潜降が遅れて、結局、出遅れたと思った自分よりもさらに出遅れたために、どちらも写真に絡むことができなかったのだ。で、撮影できたのがトップにも使用したカスミアジの大群“のみ”の写真というわけだ。

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本来なら、これだけのカスミアジの群れが撮影できたなら、十分満足すべきところなのだ。
おまけに遭遇条件の悪い下げ潮の状態で、水面にいるときに、向こうから浮上して来てくれるそれ自体もラッキーなはずなのに。今回のミッションが、“モデル絡みのカスミアジの群れ”のために、手放しには喜べなかったし、こんな裏事情を話なければ、カスミアジの群れ撮影に成功!で済んだのだけど……。

その後、3日間で6本、三の根にチャレンジしたが、カスミアジの当たりの悪い下げの流れが続き、撮影どころか、水中で姿をみることすらなく終わった。
森脇さん曰く、「それだけ遭遇確率が低いってことの説明にもなるから事実を書いてもらっていいですよ」とのこと。

ハードなミッションさえなければ、今回も初日の1本目で「ついてるな、やっぱり!」で凱旋のはずだったのに。オガンエリアに8本、三の根だけで7本も潜れてラッキーだったはずなのに、なぜか、敗北感しか感じなかった。

滞在中、何人かのうなりざきリピーターが、新月後の週末を利用して三の根でのカスミアジを狙いに来たが、天候が悪くて行けない日もあり、最終日には潜れたものの、カスミアジには遭遇できていないようだった。

“幻”のカスミアジの群れ。
脚力に自信がある方は、運試しに皆さんもリクエストして是非狙ってみてはいかがだろうか。そして、撮影にもチャレンジしてみて欲しい。

自分は、来年もミッションを成し遂げるために、リベンジで西表に来ることになるような気がする。

■Supported by ダイビングチームうなりざき西表店

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オープンして32年の老舗店で、西表でも一番人気のダイビングサービス。
62フィートの大型船3隻と42フィートの小型ボート1隻の計4隻で、様々なダイビングに対応してくれる。

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オガンでのダイビングを最優先したスタイルが人気で、リピーターも多い。
宿泊施設は、全室オーシャンビュー40室、レストラン併設のイルマーレと、西表パイン牛のBBQコースが楽しめるヴィラがあり、多くのダイバーの受け入れが可能。
西表島のお土産には、西表島パインをぜひ!

沖縄県八重山郡竹富町字上原10-172
TEL.0980-85-6146
E-mail:mailto:info@unarizaki.com
URL:http://www.unarizaki.com/iriomote/

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writer
PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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