沖縄離島のダイビング旅2017(第6回)

イソギンチャクの白化がもたらした芸術性

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天気が悪いほど、チャンス?
さて、どんなダイビングをしようか……

石垣島・MOSS DIVERSでの取材期間中の2日間、梅雨の影響もあり、天候が悪かった。撮影どうしようと思って船に乗り込んだが、オーナーの森敬太さんが、「さあ、こういう日こそ、テンション上げていっきましょう〜!」と明るく出迎えてくれた。でも、笑顔なんだけど、目が笑ってない……。

「目が笑ってないけど、大丈夫?」と尋ねると、「え、ええ、こういう時こそ、逆にチャンスだと思っています! はい!」とさらに前向きな返事。何がチャンスなんだろ? と思いながら目を見ると、目が、遠くを見ている……。

笑いながら遠くを見ているMOSS DIVERSオーナーガイドの森敬太さん

笑いながら遠くを見ているMOSS DIVERSオーナーガイドの森敬太さん

「と、とにかく、マクロメインで何か今しか撮れないものとか考えようよ。なんかさ、サンゴの白化はもう元に回復してるか、ダメになっちゃってるかどっちかだけど、潜っていて、すごく気になったのが、白化してるイソギンチャクなんだよね。あれ、結構あちこちのポイントで見られる?」とリクエストしてみる。

「はい! 結構見られます!」と森さん。

「あれとクマノミ絡めて撮影してみたいんだよね〜」ということで、撮影テーマが決まった。

サンゴ同様に、昨年の高水温で白化した
イソギンチャクたちは今

昨年の高水温の影響で石垣島の約90%のサンゴが白化した。サンゴだけでなく、クマノミなどが共生するイソギンチャクも、同様に高水温の影響で白化したのだが、サンゴのようにその後死滅するものは少なく、徐々に元の状態に戻ってきているものが多く見受けられるという。

白化したイソギンチャクに共生するクマノミ(左)と通常の状態のイソギンチャクに共生するハマクマノミ(右)

白化したイソギンチャクに共生するクマノミ(左)と通常の状態のイソギンチャクに共生するハマクマノミ(右)

高水温で白化して死滅してしまうのは残念なことなのだけど、サンゴにしろ、イソギンチャクにしろ、「白化」そのものは、何も知らない人にしてみれば、「真っ白で綺麗!」に見える。
いや、それがどんな状況かわかっているダイバーでさえ、「美しい」と感じる人は多いに違いない。風前の灯火とでも言うのだろうか……。

自分も、不謹慎かもしれないけど、死滅する前の白化した美しいサンゴ群落は、機会があれば撮影してみたいと思うし、白化したサンゴが産卵するシーンなんか撮影できるなら、是非撮影してみたいというのが正直な気持ちだったりする。

今回、すでに白化したサンゴは回復したか、あるいは死滅してガレてしまったかどちらかなので、一面サンゴの白化した風景は撮影できなかった。
一方で、イソギンチャクは未だに白化したままの点在していて、当然のようにクマノミたちがそこに共生している様子が観察できた。

白化したイソギンチャクに埋もれるクマノミ。結構お気に入りの写真

白化したイソギンチャクに埋もれるクマノミ。結構お気に入りの写真

森さんによると、「少しずつ元にもどってきてるイソギンチャクもありますよ」とのこと。確かに、半分だけ白化から回復してきている個体なども見受けられた。

白化したイソギンチャクとクマノミの共生に
美しさと芸術性を感じる

しかし、ここでも不謹慎なこと書くようだけど、元にもどったイソギンチャクの中にいるクマノミよりも、白化したイソギンチャクと共生しているクマノミの写真の方が、撮影意欲が湧いてきて、色々な想像力を掻き立てられてしまう。

「ゲストのリクエストには全力でお答えします!」というのも、MOSS DIVERSのモットー。本当は、先にアップしたかぶり物ネタも、森さんとしては、「本当は硬派なサービスなので、そんなに露出したいわけでは……」とボソボソ言いながらも、いざ撮影となると、一生懸命に協力してくれた。そういうところが、ゲストから慕われている理由なのだろう。

という事で、どのポイントでも、白化したイソギンチャクとクマノミの撮影をサポートしてくれた。

背景全部を白化したイソギンチャクにして撮影できる構図がベスト

背景全部を白化したイソギンチャクにして撮影できる構図がベスト

青い海中をバックに撮影しても映える

青い海中をバックに撮影しても映える

白化した事で、少しピンクがかったイソギンチャク。「心が澄んでいる人には、ハートに見えます」とのこと

白化した事で、少しピンクがかったイソギンチャク。「心が澄んでいる人には、ハートに見えます」とのこと

背景が綺麗というだけで、こういう切り取り方もしたくなってくる

背景が綺麗というだけで、こういう切り取り方もしたくなってくる

同じく、顔の一部だけを切り取って撮影した

同じく、顔の一部だけを切り取って撮影した

イソギンチャクだけの写真も絵になる……と思いませんか?

イソギンチャクだけの写真も絵になる……と思いませんか?

他にも様々な表情が
楽しめる石垣島の海

もちろん、白化していないイソギンチャクとクマノミもいる。森さんのおすすめは、ビタローの根の「クマノミ保育園」。小さなクマノミたちだけが共生していて、一番大きな個体も、他とほとんど変わらない。
確かに、保育園みたいに見える。

ビタローの根にある、クマノミ保育園

ビタローの根にある、クマノミ保育園

自分が一番気に入ったのも、ビタローの根のメインの根だった。サンゴはダメージ受けてしまっていたけど、スカシテンジクダイなどが群れる根にあるイソギンチャクとクマノミ、これがポイントになって、結構気に入る写真が撮影できた。

ビタローの根。スカシテンジクダイの群れと、クマノミ

ビタローの根。スカシテンジクダイの群れと、クマノミ

とにかくクマノミ撮影を中心に潜らせてもらったけど、もちろん、その他の石垣島の海の魅力も存分に紹介してくれる。

呼吸を終えて、海底に戻ってきたカメ吉

呼吸を終えて、海底に戻ってきたカメ吉

大崎タートルリーフに生息しているアオウミガメのカメ吉は、写真のような構図で撮影しやすい。人馴れしていて、特に呼吸のために水面に浮上して、また海底に戻ってくるときに、逃げて行かないからだ。
ちなみに、海外のダイバーに紹介するときは、“Lucky turtle”なのだそう。

マンタシティーポイントのマンタ

マンタシティーポイントのマンタ

マンタのシーズンは、これから! 遭遇率も高くなる。最近では、石垣、西表周辺でブラックマンタの目撃情報も出ていて、注目を集めている。日本でブラックマンタが見れるのは、なかなか珍しい。難しいかもしれないけど、マンタのリクエストをして、ぜひ狙ってみては?

どんな状況でも、明るく元気がモットーの森さん。雲の合間から少しだけ見えた青空をバックに、笑顔の森さんを撮影してみた。日焼けした顔に露出を合わせたら、結局バックは白くとんでしまった。これも、白化したイソギンチャクとクマノミ撮影と同じ効果?

どんな状況でも、明るく元気がモットーの森さん。雲の合間から少しだけ見えた青空をバックに、笑顔の森さんを撮影してみた。日焼けした顔に露出を合わせたら、結局バックは白くとんでしまった。これも、白化したイソギンチャクとクマノミ撮影と同じ効果?

【森敬太さん】
MOSS DIVERS オーナーガイド。悪天候でも、それをチャンスと捉えるくらい、いつも陽気で元気いっぱい。座間味島、パラオ・ペリリュー島、西表島、石垣島を渡り歩き、石垣島でのガイド歴は10年目。ゲストのリクエストには、全力で答えます! という頑張り屋だ。パラオのペリリューでは、ハードなドリフトダイブのガイド経験もあり、癒し系だけでなく、ハードなダイビングも任せてられるスキルを持っている。水中撮影にも精通。ダイビング経験本数は約10000本。

■Supported by
石垣島ダイビングセンター MOSS DIVERS モスダイバーズ

MOSS2017

左から、クロちゃん、オーナーの森さん、森さんの息子ゆうたくん、娘あやのちゃん、奥様エリさん

独立してから3年目の新しいダイビングサービス。
Mはmemories、Oはocean、Sはsun、Sはstarで、「思い出作りを大切に、海で繋がる輪、太陽のように暖かく情熱的な心で、星の数だけの出逢いを」という意味を込めて、MOSS DVERSと名付けたそう。

MOSS2017

モスダイバーズが使用するダイビングボート

ランチは美味しいハンバーガーとポテト……ではなくて、森さんの奥様、エリさんのお手製ランチ!! これがまたリピートしたくなるんです。ダイビングのリクエストではなくて、ランチのリクエストも入ることがしばしばというほど、エリさんのランチファンは多い。

MOSS2017

八重山ソーキそば。お肉もエリさんが煮たそう!めちゃうま

娘のあやのちゃんの大きな瞳には、老若男女問わずロックオン間違いなし。
陸も海も楽しみたいダイバーはぜひMOSS DIVESへ!

沖縄県石垣市石垣501-1 1階北
TEL/FAX 0980-87-5244/0980-87-5245
E-mail : info@mossdivers.com
URL : http://www.mossdivers.com

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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