沖縄離島のダイビング旅2017(第11回)

久米島の新アイドル? 愛しの愛しの……アオウミガメの“欲しがり”小太朗、そしてモジャ美

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映画の感動的なワンシーンを見ているような、ウミガメとの出会い

「パパ〜ん!」「小太朗〜!」
そのアオウミガメは、父親の胸に飛びこんで行く小さな子供のように、エスティバン

のオーナーガイド、川本剛志さんの腕の中に、両前ヒレを思いっきり伸ばして、飛びついた。父親? は、本当の娘?(息子? 孫?)をその胸に招き入れるように、優しく手を差し伸べる。

まるで映画での親子の感動の再開シーンを見ているかのような光景。

少し前にダイブエスティバンのHPに川本さんが書いていたのだけど、今、久米島に体中を優しく掻かれるのが大好きな、小さいアオウミガメがいる。
以下エスティバンのHPから抜粋

昨年の初夏から、最初は、じっくりと見つめ合うところから始め、ゆっくり時間を掛けて馴らしたアオウミガメ・・・(^_^;)この子は、綺麗好きで、甲羅掃除が大好き。自分で甲羅を岩に押し当てて掃除してたのを、こちらが手〈爪で〉で恐がらせないように、そっと優しく掃除を手伝って時間を掛けて馴らし、甲羅だけじゃなく身体全体も触れ合える様になり、今では、終わった後も、更に「して欲しくて」戻って来るようになった。スタッフの健太郎が言った名前が、あまりにも合ってたので付いた名前・・・(^_^;)名前は、「欲しがり小太朗」・・・。

でも、実は雌なんだけど・・・・( ̄▽ ̄;)


エスティバンスタッフブログ「欲しがり小太朗・・・。

取材前にこの情報を確認していて、知ってはいたので、いつかは会えるかな〜くらいに思っていた。
川本さんと僕の共通の知り合いで、少し前に久米島で潜ったゲストの人からも、LINEで、「なついているカメが可愛いよ。小さいうちにまた会いたい」なんて連絡と一緒に小太朗の写真が送られてきていた。

欲しがり小太朗、実際どんだけフレンドリー何だろう?

小太朗がいるのは、ウーマガイというポイント。リーフの上を泳いでいるとサンゴ礁の窪みに小さなアオウミガメを見つけた。「いたいた、あれが小太朗」そんな感じで川本さんは、こちらに目配せして、静かにカメに近づいて行くと、はめていたグローブを外し、そっと甲羅を撫で始めた。
カメは逃げることも、抵抗することもせず、その行為を受け入れている。

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明らかに気持ちよさそうに撫でられている。一度撫でるのをやめた直後、最初のシーンのような瞬間が。
そう、「パパ〜ん!」と飛び込んで来たというよりは、「もっと掻いて〜ん!」とおねだりしてきたシーンなのでした。

欲しがり小太朗、もっとカキカキして欲しがっていたんですね。川本さん、ブログにも掻いて、……あ違った、書いていたんだけど、小太朗と名付けられているけど、実はメス。でも、“欲しがり花子”とかだと女の子の名前だから、“欲しがり”はちょっとまずいだろうと変な気の使い方をした川本さん。
と言うことで、小太朗という男名にしたんだそう。なるほど……なのか?

もう一匹のアイドル候補の名前はモジャ美

実は、別のポイントにも同じように時間をかけて、慣らそうとしている若いアオウミガメのメスがいる。その子の呼び名は、“モジャ美”。結構身体に藻が生えてるから、モジャ美。つまり小太朗のように慣れて来たら“欲しがりモジャ美”となるわけだね。

小太朗は女の子の名前じゃまずいだろうって言いながら、何故この子は女の子みたいな名前で、しかもモジャ美ってかわいそうじゃないですか?

まあ、そんなことは僕にはどうでもいいのだけど、モジャ美と川本さんの写真も撮影した。

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モデルダイバーとウミガメ絡みで、雑誌のカバー写真にでも使えそうな構図になってしまった。おまけに川本さん内股だし。“月刊●イバー”とか、上の方に入れてみたくなるんですけど……。

相思相愛? 小太朗と川本さんの素敵な関係

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小太朗に戻る。この写真なんか、「もうパパ離さないから〜」みたいに、川本さんの腕にしがみついている。

川本さんも川本さんで、息継ぎに浮上した小太朗が早く戻って来てくれないかと、愛おしそうに海面にいる小太朗を見上げながら、いつまでも待っている。その間、当然僕も待たされる。

海面に呼吸に浮上した小太朗を愛おしげに見守る川本さん

海面に呼吸に浮上した小太朗を愛おしげに見守る川本さん

……どんだけ愛しちゃってるんですか、川本さん。

バハマでも年頃のメスイルカに多く、人に触られたがる子が出現することがあったり、フロリダのマナティなんか、子供の頃は、何匹も体に群がってきて、口でもしゃもしゃとウエットのスキンを甘噛み(痛くないです)し始める。時には、足に顔を挟んで眠ってしまう子もいたりする。

お年頃のメスイルカは時に触られるのを好むようになる場合がある。バハマドルフィンサイトのタイセイヨウマダライルカ

お年頃のメスイルカは時に触られるのを好むようになる場合がある。バハマドルフィンサイトのタイセイヨウマダライルカ

人気者になると困ること。これかの配慮も必要になってくる

そうは言っても気持ち的には少し複雑な心境もある。
今、世の中は、生態系に影響するからという理由で、野生動物にむやみに触れたりする事や、餌付けに対してネガティブな風潮になっている。かくいう自分も新聞社出身でもあり、「カメラマンは常に観察者であって、その場に介入すべきではない」というような教えの元に育って来た時代もあり、野生の生き物に触れる事に全く抵抗を感じないわけではない。

しかし、哺乳類と爬虫類のちがいはあるにせよ、野生の生き物の中には、僕らの想像を超えるほど、人間を受け入れてくれる個体がいたりして、それはそれで出会うとまるでおとぎ話のような体験と、時には人生を一変させるような感動を得られることもあるのだということも知っている。

今後人気が出て来たら、小太朗やモジャ美との交流に関しての、事前のブリーフィングも重要になるだろうし、それなりのルール作りも必要になってくるだろうな。

そうは言っても、やっぱり野生動物との素敵な体験は魅力的

そんなことを考えながら、自分としてはもう十分に二人? の交流シーンを撮影できたので、目で「もう十分」と合図したり、オッケーサイン出したりしたのに、一瞬はこちらを見るんだけど、すぐに小太朗に向き直り、「こたろ〜! こたろ〜!」とレギュレーター越しに名前を呼びながら、小太朗を掻き続けている川本さん。おいおい……。

「これで、こたろ〜じゃなくて、よっしゃしゃしゃ! とか言ってたら、まるでムツゴロウさんじゃんか……」

「あの……、もう、小太朗はいいんですけど」

でも、そういう心の訴えも虚しく、小太朗と戯れ続ける川本さん。そんな幸せそうな二人をしばらく見守るうちに、羨ましくなって来て、僕もちょっとだけ撫でさせてもらいたくなって来た。

色々と葛藤しながらも、結局小太朗を撫でさせてもらうことに。

「……か、可愛い。まじかわいい!」これが首を撫でさせてもらった後の率直な感想なのでした。
そして僕も「キャワユイな〜こたろ〜」と小声で名前を呼んでいたのでありました。

僕もちょっとだけ小太朗の首を撫でさせてもらっちゃった

僕もちょっとだけ小太朗の首を撫でさせてもらっちゃった

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■Supported by DIVE ESTIVANT

老若男女問わずに楽しめるダイビングをゲストに演出してくれる。久米島随一の大型ボート(53フィート)と小型ボート(40フィート)の2隻のダイビングボートでダイビングを対応。シャワー、トイレ、お茶やコーヒーなども完備され、船上も快適。スタッフは皆魚の生態に詳しく、今はブラックウィーターダイブなどもとりいれて、新たな海の魅力を演出し続けている。冬はザトウクジラのホエールスイムが人気。

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〒沖縄県島尻郡久米島町比嘉160-69
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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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