2015トンガ・ホエールスイミング(第4回)

新米ガイド体験記 ~ホエールスイム2015・week1~

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トンガホエールスイミング2015親子(撮影:稲生薫子)

week1初日に見た親子

トンガホエールスイム2015のweek1が終了。
8月15日の朝7:00に帰国するゲストを空港に見送った後、これを書いています。
今回は一週間丸々1人でガイドをして、感じたことを素直に書いてみたいと思います。

Week1は、ゲスト延べ12人がババウに入り、4日間2隻に分かれてホエールスイムを楽しみ、1隻は越智さんが、もう1隻は私が日本人ガイドとして乗船した。

トンガは毎年、現地情報に変動があり、道中トラブルも発生しやすい地域なので、(例えばレストランが増えていたり、無くなっていたり、国内線が飛ばなかったり)、ホエールスイムのボート含め、きちんとすべてが手配できているのかを確認するためにもゲストより先に現地入りする必要があった。

その中で、船をチャーターして海のリサーチも行った。

■2015トンガホエールスイミング、スタート! リサーチで親子3組に遭遇
https://oceana.ne.jp/from_ocean/57641

Week1のゲストは8月10日の夕方にトンガタプからババウに入る予定だったが、悪天候のため国内線がババウ上空で引き返し、11日の午前便にリトライされることに。

今回のようにゲストのフライトなどが急遽変更になった時などに、スタッフである自分たちも移動中だった場合はまったく対応ができなくなってしまうこともあって、先に現地入りしていたわけですが、今回は人数が12人と多かったこともあって、不安も大きめ。

国内線は約20人乗りの小型のプロペラ機なので、全員が11日の午前中の便に乗れる保証がこの時はまだなかったが、結果は12人共11日の12時前着のフライトでババウ入りでき、初日はボートの出航を13:00まで遅らせて海に出ることができた。

通常より5時間も遅らせての出港だったし、かなり時間が限られていたにも関わらず、止まっている親子と遊ぶことができて、初日からゲスト全員が満足できる遭遇だった。

トンガホエールスイミング2015親子(撮影:稲生薫子)

■week1初日はシンガーと親子に遭遇。2日目は3頭の親子
https://oceana.ne.jp/%3Fp%3D57663

2日目、越智さんと私だけボートを入れ替わり、私はスキッパーのナティとガイドのウィリアムのボート・フェニックスに乗船し、海に出た。
この日は風が強く、南のエリアにはいけなかったので、North bayからババウ島の反対側まで探しに行ったのだが、クジラには遭遇できなかった。

Hunga島の外側に戻ると、ペアが居たのでトライ。
動き続けているクジラだったので、近くまで船を寄せてもらって、落としてもらう方法でアプローチした。

入る順番や泳ぎのスピードなどにもよって“見れた”“見れない”が分かれるものの、ゲストの中で「見えなかった」と言っている人がいたのは悲しかった。

特にこの日は越智さんの乗るシースケープから「親子の順番待ちができることになった」と連絡が入っていたからなおさら見られなかった人がいたのが悔やまれた。

トンガ・スワローケーブ(撮影:稲生薫子)

スノーケルの楽しめるスワローズケーブで遊んでから帰港した

自然が相手だから誰が悪いというわけではないし、担当してくれたスキッパーのナティだって悔しいのは同じかもしれないけれど、良くも悪くもゲストと言葉が通じてしまう私は、正直、夕食の時に合わせる顔がなかった。

3日目。

私は2日目と同じフェニックスで、越智さんはスキッパーにゲリーが乗るSeadogで海に出た。
Mounu島を左手にFatumanga島付近まで南下。

南下する途中、プロティウスがヒートランを追っているのを見つけたけど、それは見るだけにして南下を続けた。
Fatumanga島付近で、3頭のクジラがブリーチしているのを船上から30分ほど観察した。
3頭が次々にブリーチやブローをあげ、大迫力!

トンガホエールスイミング2015ブリーチ(撮影:稲生薫子)

しかし、この日も昨日に引き続き風があり、Fatomanga島のある南エリアは相当荒れていたこともあり、スキッパーのナティも「泳ぐにはとても良いクジラだけど、波が荒くて危険だから泳げない」と判断。

3頭のクジラには別れを告げ、次のクジラを探すことにした。

Hungaの沖合で、Seadogがヒートランを追っているので、こちらが泳げていないのならシェアしてくれると連絡が入った。
今日はまだ入水が出来ていなかったので、分けてもらうことにしたのだが、私たちがヒートランに追い付いたころには時すでに遅しと言った感じで、越智さんたちが見たようなアドレナリンが放出されるようなヒートランを見ることはできなかった。

ヒートランには3回入水したが、1回目は5頭、2回目は見られず、3回目は2頭を確認するにとどまった。
その後はクジラの姿は船上からは確認できたものの、泳ぐことはできず、昨日のグループ同様スワローズケーブで遊んで帰港した。

トンガ・スワローケーブ(撮影:稲生薫子)

ヒートランに遭遇したとはいっても、すでに大した迫力もなかったし、クジラもゆっくり泳いでいただけで、正直ヒートランを見た気分にはならなかった。

帰港して、もう一つのグループがヒートランがすごくよかったと興奮して話しているのを聞いて、嬉しい反面、自分のグループの人にそのヒートランを見せられなかったことに申し訳ない気持ちでいっぱいで、またもや100%は喜べない自分と、自分にイライラする自分がいた。

この2日間、ババウ全域でコンディションが良くなく、全然クジラが見れていないというのは他の船のスキッパーからも聞いていたことだったけど、私の心はそんなに広くなく、越智さんの乗るもう1隻と比べてこちらの船が2日間続けて満足できる遭遇でなかったことを本当に悔やんだ。

クジラを満足して見られなかった悔しさを、ゲストは私に当たってもらえばいいけれど、私は誰にも当たることはない。
「そんな日もあるから気にしてないですよ」と、ゲストから言われても、皆に笑ってもらうことができなかったことが悲しくて、ベッドの中でちょっと涙が出た。

これで明日の最終日も遭遇できなかったらと不安でいっぱいになりながら眠りについた。

トンガホエールスイミング2015モウヌ島(撮影:稲生薫子)

帰港する前に、世界ビーチリゾートランキング1位に選ばれたことのあるMounu島にアンカリングした

最終日、この日は私と越智さんが再度船を交換して、私はスキッパーのゲリーとガイドのレッドと海に出ることになった。
ゲリーとレッドは白人だったがとても気さくで、しかしクジラを見せたいという気持ちは強い2人だった。

昨日まで、クジラをほとんど見せられていなかったので、船のサイドに立ってブローを探し続けた。
Neiafuを出港してからすぐHunga島の沖で1頭のクジラを発見した。

初めに見つけたのはゲストの女性で「ヒレ、出た!」の発声をきっかけにそのクジラを追いかけた。

レッドがチェックのために荒れる海の中に入ってくれたものの、クジラはフレンドリーでないのか、なかなか姿を見せてくれない。
レッドを避けるようにして、違う位置から何度もブローをしてみせた。

諦めかけていた時、越智さんの乗るフェニックスから入電があり、「Fatumanga島の近くでペア2組合わせて4頭と泳いだ」と。

今日もこっちの船はダメか……時間はまだ11:00前だったけど、昨日までの2日間を思い出して1人落ち込んでいた。
あとで越智さんに聞いたら、電話や無線に出る私の声が、相当落ち込んでいる感じだったと言われた。

スキッパーのゲリーに、ひとまず今のシングルを追いかけるのはやめて、連絡のあったFatumanga島の近くで探したいと告げ、そちらに向かった。
しかし、フェニックスの居たOvaka島とFatumanga島の間ではブローを見つけることは出来ず、風の少ない島の内側に移動することになった。

トンガホエールスイミング2015モウヌ島(撮影:稲生薫子)

Mounu島にてドローンで撮影。島影は風が少し落ち着く

しかし、今日はここからが違った。

今日はゲストが最終日だということと、他の船と連絡を取ってなんとしてもクジラを見せたいと伝えると、いろんな船と連絡を取ってくれ、11:30の時点てペアのボートの順番待ちができることになった。

1時間以内には自分たちの番が回ってくるだろうということで、早めにランチを食べて順番を待つことにした。

時を同じくして、フェニックスから今度はFatomanga島の近くで親子と泳いでいると連絡が入った。

しかし、止まらずに動いている親子なので、先回りして落としてもらう方法を取っているとのこと。
ゲリーと相談した結果、確実性の高いペアの順番待ちを継続することにした。

1時間もたたずして、順番が来た。

しかし、ここで驚く事実が聞かされた。ペアではなく親子だと言うのだ。
いつペアから親子になったのかはわからなかったが、とにかく親子であるならば、止まってくれさえすればゆっくり泳げる。
ここからはひたすら、「お願いだから止まって」と懇願し続けた。

親子はニュージーランド人スキッパーとトンガ人ガイドの乗るKiwimajicとシェアで泳ぐことになった。

各ボート20分交代と決め、ゲリーからGOの合図が出たので最初のグループと飛び込むと、目の前には10m付近に止まる親子の姿が。
「あぁ、ありがとうございます」まさしくそんな気持ちだった。

トンガホエールスイミング2015親子(撮影:稲生薫子)

帰港しなくてはいけない時間が来たが、ゲリーにもう一度トライさせてほしいと頼み、トータルで3回入水させてもらった。
時間にして1時間は親子と泳げた。

親子と泳いでいる途中でふと、「あれ? この親子、見たことある、もしかしたら初日に遭遇した親子かも」と思った。

その場で確証がなかったので言わなかったけど、あとで写真を確認するとやはり初日に遭遇した親子だった。
2日目に、越智さんが順番待ちして泳いだ親子も、このクジラだったと聞いた。
そうだとすると、この親子は、少なくとも4日間は、Hunga島周辺にとどまり続けたことになる。

トンガホエールスイミング2015(撮影:稲生薫子)

この特徴的な背びれの欠け方で初日の親子と同じと判断した

とにかく、辛かった中日を飛び越えて最高の最終日にしてくれたこの親子に感謝した。
来週も居続けてくれるといいけど。

親子とのスイムを終えて帰港する際「今日は本当によかった、最高の1週間でした」とゲストに笑顔で言われた時には正直泣きそうになった。

やっぱり笑顔になってもらいたい、楽しかったって言ってもらいたい、そのためには経験も知識も運も必要だけど、やっぱりスキッパーやガイドに、こいつのためにクジラを探してあげようと思ってもらえる人間であることも大切であると学んだ。
これは前から越智さんにも言われていたことだけど、今回でつくづく実感した。

今日のババウは青空が広がり、さわやかな気候。

土日は現地のスキッパーなどと飲んだり遊んだりして交流を深めながら身体を休める。
現地の人と交流することはガイドとしてやっていく以上、クジラを探す上でも、この小さな島に滞在する上でもとても大切なことであるし、それに現地の人と交流ができ始めている今はちょっぴり楽しみでもある。

トンガパラダイスホテル

ドローンで撮影。下の黒い屋根は宿泊しているパラダイスホテル

また月曜には新しいゲストがババウに入り、クジラ探しの1週間が始まる。

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writer
PROFILE
成蹊大学文学部国際文化学科卒業。
ナレーター、司会、ダイビング・モデルとして、TV、雑誌、モーターショー、トークショーなどで活躍。宝くじのキャンペーンガール「幸運の女神」では、46都道府県を旅する。

2013年からは、大物運・海況運をつかさどる「海の女神」へと転身し、舞台を海に変えてオーシャナの突撃体験レポートを担当。
潜水士資格も取得し、2014年は伊豆大島復興観光大使「ミス椿の女王」として、伊豆大島をはじめとした被災地復興支援活動にも尽力する。

「ダイビングがきっかけで、物の見方も感じ方も生き方も180度変わり、自分の周りまでもキラキラ輝き出したことを実感。 
いろんなことを体験しながら、たくさんの“きっかけ”を届けていきたいです」

【経歴】
・第25期 日本テレビイベントコンパニオン
・第11~12期 スバルスターズ
・第33期 宝くじ「幸運の女神」
・第23代 ミス椿の女王(2014.2~)
・第29代「ミス熱海・桜娘」(2016.1~)
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