2015トンガ・ホエールスイミング(第11回)

2009年に出会った母クジラと再会! week5

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トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

WEEK5も無事、参加者全員が海中でクジラを見ることができた。

2隻の船を出し、岡田くん(水中写真家でガイドとして参加)と自分が交代でゲストをケアした。

月曜日、4人でローの船で海に出る。

南に向かうと、ナティが別のゲストを連れて海に出ていて、泳げる親子とエスコートを譲ってくれた。
エントリーすると、母親の左のテールが切れていた。
この母クジラ、何年か前に見覚えがある。
そう思い、テールを中心に撮影を行った。

トンガのクジラ(撮影:越智隆治) トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

ホテルに戻り、過去の親子個体識別表を確認すると、2009年の8月21日に遭遇し、CURIOUS GEORGEと子クジラに名前をつけた親子の母クジラと同じ個体だった。

トンガのクジラ(撮影:越智隆治) トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

親子の個体識別はしているが、なかなかこうした目立った特徴がある母クジラは少ないので、ちゃんと確認していないこともあり、6年ぶりの再会に感動した。
また、そのときの親子の特徴を、子クジラは好奇心旺盛で近寄って来ようとするが、母クジラが嫌がって、泳ぎ去ってしまうと書いてあった。

今回の子クジラも好奇心旺盛で、こちらに寄って来ようとするのだけど、母クジラが同じように、嫌がって僕らを避けるように浮上する。
母親の性格が同じなのはわかるのだけど、子クジラの性格も同じだというのが面白かった。

火曜日は、トンガビギナーのゲストが乗る、6人乗りのナティの船で出港。

最初にゲストがどれくらい船に慣れているか、スキルがあるかをチェックするため、荒れている南のエリアへ。
もし、何も問題なければ、その後の捜索もしやすい。

そこで、3つのヒートランのグループを発見。
一つにアプローチしてみることにした。
しょっぱなからヒートランは厳しいかなとは思ったが、これをクリアすれば攻める見せ方ができる。

トンガのクジラ、ヒートラン(撮影:越智隆治)

しかし、2回ほどエントリーした後に船酔いする人が数名出たので、ヒートランの追跡を諦めて、穏やかな海域へと移動。
ヒートランは10頭くらいいたので個人的には残念だったが、HUNGA島の外洋の風裏で、穏やかな親子と泳げているというので、そこで順番待ちをすることにした。

その間に、シュノーケルの練習をしたり、ランチを食べたりできたので、ちょうど良いかと思ったが、前の船がフォトツアーをやっている船だったのが計算ミスだった。

かなり撮影しやすい親子だったらしく、他の船よりも長く親子をキープしていた。
どうやら、ゲストがこの日、最終日らしい。

(最後の最後に、寄りすぎて親子を驚かして動かさないでくれればいいのだけど)そう思いながら待っていた。
「次でラストにする」とスキッパーから連絡が入った。もう、あまり時間がない。

(どうか動かさないで)という願いは通じず、やはりその船が去った後、親子は移動を始め、子クジラは何度もブリーチングを繰り返した。
初めてトンガに来たゲストたちは、それでも子クジラが何回も目の前でブリーチングするのを喜んで見てくれていたのだけど、自分の中では、(ちくしょう! やりやがった)という気持ちで複雑な心境だった。
(もうしばらく止まらないかも)

同じようにナティも思ったのだろう、「前に回り込んで落とす、もうこの親子は止まらない」と告げてきた。
自分たちの後にも何隻も順番待ちしているし、ナティの船は通常ならば、2時には帰らないといけない。
すでに時間は3時を回っていた。

トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

マレスキングというボートと交代しながら、何度か前に落としてもらい、どうにか見ることができた。
ナティが「時間がオーバーしているから、帰る」と言いだしたのだが、自分には親子が方向を変えたので、もうすぐ止まりそうに見えた。

「頼むから、もう少し、もう少しだけ待ってくれ」とナティに頼んだ。
この状況で諦めるわけにはいかない。

今年は、順調に見られていたし、自分の方から、もう少し待ってと頼んだのは今回が初めてだった。
ナティも自分が悔しがっているのがわかったのだろう。
「わかった」と一言行って、もう少し待ってくれることになった。

ナティは、本当はその日、ホエールスイミングの後にモウヌ島に寄って、人を町まで送り届けなければいけなかったが、それを断って、時間を延長してくれていた。
(これで止まらなかったらシャレにならない。ゲストにも、ナティにも)そう思ったそのとき、激しく動き回っていた親子が完全に止まった。

1回しか入れないけど、とにかく船を寄せて親子にアプローチ。
母クジラは、かなり浅い水深で、テールを上にして頭を下にして眠っていた。
子クジラも、好奇心旺盛な感じで、人が近づいても避ける感じでもなかった。

トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

ヒートランや移動しているときとは違い、ゆっくりと親子を観れたゲストがどう感じていたかを気にするよりは、どうにか見せれてホッとしたというのが正直な心境だった。
結局、通常より2時間オーバーで4時過ぎに港に戻ってきた。

後で、参加していた男性が、「感動して泣いてしまいました」と言っていたのを聞いて、とにかく諦めずに見せれて良かったと思えた1日だった。

翌日の水曜日は、ローと一緒にリピーターと一緒に海に出る。

エンジンの調子が悪くなっていて、もしかしたら午前中で帰らなければいけない状態になった。
それでも、ローが、穏やかな海域で順番待ちしている親子の船に交渉して、本当なら6番目の順番なのに、「エンジンの調子が悪くて、もう帰らなければいけないかもしれないのだけど、順番を先に回してもらえないか」と順番待ちしている全ての船に連絡して交渉してくれた。

他の船から「次に泳いで良い」とオッケーをもらい、アプローチすることに。
これも、普段、皆に良いクジラを譲ってあげたりしているからオッケーをもらえたのだと思う。

しかし、ここでも、前の船の最後のひと泳ぎでクジラが移動を始めてしまった。
昨日と同じ親子だという。

(今週はついてないな)と思いながら、しばらく追跡したが、どんどんと荒れた海域に出て行って、止まる気配が無いので、どうしようかと思っているところへ、ヒートランが外洋からHUNGA島の風裏のエリアに泳いできたのを発見。親子を諦めて、そちらにスイッチした。

ヒートランは、HUNGA島の浅いリーフエリアを南から北に向かって移動していたため、何度も入水して撮影を行った。
ちょうど帰る方向でもあったので、島の北の端まで追跡して終了。
そのままその日は終了して、帰路に着いた。

トンガのクジラヒートラン(撮影:越智隆治) トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

木曜日は、ナティと海へ。
こちらの船は昨日泳ぐことができなかったと聞いていた。
海が荒れていて、船酔いする人が乗っているため、なかなか攻めれないのが辛い。

早めに、穏やかな海域で泳げている親子についている船に連絡を取り、早めに順番待ちを決めておいて、その間に他のクジラを近くで探した。
ペアを見つけたが、どんどんと荒れた海域へと移動していくので、諦めて、親子の方へ向かう。

今回は、あまり問題もなく譲ってもらって、泳ぐことができた。
次の船とシェアしようと思ったら、僕らの前の船が、別の船に許可を出していて、3隻でシェアしなければいけない状態になってしまった。

今週はなんとなく、個人的には、連絡やタイミングが悪い日が多くて、ゲストに申し訳無い気持ちでいっぱいだった。

それでも、かなり浅いリーフで止まっている親子をじっくりと観ることができて、喜んでくれていた。

トンガのクジラ親子(撮影:越智隆治)

この日は、ディナーでハネムーンカップルのお祝いもした。
ナティやボートクルーのビルが、彼女やフィアンセを連れて一緒に食事に参加し、楽しく過ごすことができた。

トンガのクジラ(撮影:越智隆治) トンガのクジラ(撮影:越智隆治) トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

最終日の金曜日は、ローの船でかなり南の外洋へ。

無線を聞いている限りでは、ババウ諸島周辺は、外洋でもかなり透明度が悪いというので、海はまだ波が高かったが、遠出してクジラを探すことに。
ブリーチングやブローを発見してアプローチ。

親子とエスコートだった。

前にドロップしてエントリーしようとしたら、もう一組の親子を発見。
こちらは、エスコートがついていないので、止まる可能性が高いので、そちらにスイッチしてエントリー。

かなり離れているにもかかわらず透明度はイマイチ。
それでも親子が止まってくれていて、母クジラは水深30mくらいにとどまっていて見えづらい。
子クジラも浮上してきても、こちらに寄ってこない感じだった。
しかし、ローが「今日はこれがベストだ。他の船は全然見れてないよ」との話。

遠くて他の船も来られないから、順番待ちの船が後に来る事もないので、この親子に1日つきあうことにした。
しかし、何回目かの休息で、急に母クジラが海中で移動を始めた。
何かと思ったら、エスコートがついてしまった。

もう止まらないかと思ったが、逆にエスコートがついたことで、母親が水深5mも無い浅い深度で、追いつけるスピードでゆっくり移動するようになった。
エスコートも僕らの撮影をサポートするかのように、親子クジラを誘導しているような泳ぎをしてくれた。

トンガのクジラ(撮影:越智隆治) トンガのクジラ(撮影:越智隆治) トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

止まることはあまりなかったが、動いている方が絵になるし、たまに止まると、本当に浅いところで真正面から撮影などもできた。

親子とエスコートの撮影としては今シーズン一番のクジラたちだった。

この週も全員が水中でクジラと遭遇できた。

トンガのクジラ(撮影:越智隆治)

Week5に参加してくれた皆さん、ありがとうございました。

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writer
PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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