ホエールスイムのガイドとはクジラと人間の世界の境界線を引く役割 ~写真家・岡田裕介、3年目のトンガ~
1ヶ月間にわたる3年目のトンガでのザトウクジラとのホエールスイムが終わり、ババウを離れこの原稿を書いています。
今年のホエールスイムは1ヶ月間ほぼ全ての日程をガイドとして乗船し、ゲストの方々をザトウクジラの世界へと案内しながら、自分もカメラを持ち撮影をする毎日を過ごしました。
昨年までの2年間は、トンガに通い続けて12年目の越智さんの水中での姿を見てクジラとの接し方を勉強していました。
今年の課題は、そこで学んだものをガイドとして実行し、ゲストの方々により多くの満足をしてもらえるか。
今年は一緒に潜る機会がないからこそ、越智さんだったらこのクジラにどうアプローチするのか昨年までの記憶を辿りながら試行錯誤の1ヶ月となりました。
今回のガイド経験で身をもって感じた事、それはホエールスイムにおいてのガイドの役割とは、すなわちクジラの世界と人間の世界の境界線を引く役割だということ。
その境界線を一歩でも超えてしまうとすぐにクジラは嫌がって消えてしまう、そんな繊細な見えない一本の線を探り当てるのが仕事。
中でも神経を注いだのはクジラとの距離感、間合いの取り方。
特にゆっくりと休息している赤ちゃんを連れた親子のクジラを見つけたら、驚かせないようこちらもゆっくりと入水し、その後もゆっくりと間合いを詰めながら泳いでいく。
そこで、個性に大きな個体差のあるクジラの性格をしっかりと感じ取り、その見えない線を見つけ、どの位置に留まればよいのかを考える。
その力があれば当然ゲストにもその場での最高のポジションを提供出来る事になるし、それがガイドの見せ場でもあり、力を試されることだとも実感しました。
距離感や間合いの取り方が抜群で、時に優しすぎるぐらい穏やかにクジラと接するガイド達。
そんな彼らの姿に、改めて全てはクジラへのリスペクトと優しさが重要だと学びました。
ガイドの仕事はクジラの個性を読み取りその場で最適な場所をみつける事。
そして、僕らは君達の世界を尊重しているんだよ、そんな事をクジラに理解してもらうこと。
この気持ちが写真を撮るうえでも本当に大切で、実際にそれが出来ている越智さんにしか撮れない写真が確実にあるのです。
これからのクジラと関わりのなかで、いつか自分でも心底納得出来る1枚を撮ってみたい。
しかし、自分が撮りたい写真は、彼らと波長が合わせられるくらい、彼らの事を知ってからではないと撮れないもことも痛感しました。
クジラとの間合いを知り、彼らが気持ち良くいられる境界線を知りたいし感じたい。
その境界線をビリビリと感じられる、そんな時がきたらきっと満足出来る写真が撮れるだろうし、そんなガイドになれたら、ゲストにもより大きな感動を感じてもらえると思うのです。
ザトウクジラはとにかく大きくて迫力があって個性的で、そして何よりも美しい。
何度見てもその感動は変わらないだろう。
そんな生物が地球上に存在していて一緒に泳げるって本当に凄い事。
だからこそ、これからも一緒に泳ぎ続けられるよう僕らは細心の注意を払わなくてはいけないのです。
そして何より、この地に住み働くクルーたちの存在がババウでの滞在をより深く楽しいものにしてくれました。
大切なのは操船するスキッパーやそのアシスタント達の信頼を得て、このガイドこのゲスト達の為に何としても見せてやる、そんな気持ちを持ってもらい、力を合わせて最善を尽くすこと。
何かを成し遂げた時に、一緒になって心から喜べる関係を築けた時の喜びは格別なのです。
また来年もここに来たいなと思えるのはクジラだけではなくて彼らの存在が大きいのは確かです。
見習いとして参加した昨年までの2年間と違い、今回、ガイドとして自分が最前に立ち、期待を持って遥々トンガまでやってきたゲストの方々に、しっかりとクジラを見せなければはいけないというプレッシャーは相当なものでした。
それでも見せられた時の喜びは、そのプレッシャーの分だけ大きく感じられるって事も実感しました。
今年学んだ事を生かして更なるレベルアップを目指し、泳力とコミュニケーション能力をもっともっと身につけて、ゲストの皆さんや現地のクルーに信頼されるガイドになれるよう頑張って行きます。
来年も8月、9月とトンガでのホエールスイムを行います。
今年も週によってのバラツキはあるものの、昨年に引き続きクジラの数は増えているので来年もかなり期待は出来ると思っています。
来年、トンガホエールスイムに興味のある方は、ぜひ、お問合せしてください。
■問い合わせ
tour@oceana.ne.jp
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