トンガの人たちと越智カメラマンの交流から学んだこと ~新米ガイド体験記・week3~
前回、お伝えした通り、現在ババウにはホエールスイムのライセンスを持つ会社は17社ありますが、私がガイドとして参加している間に利用した会社はそのうち2社。
■親子クジラと近くで泳ぐために必要なこと ~新米ガイド体験記・week2~
https://oceana.ne.jp/from_ocean/57797
しかしこの2社、実はオーナー同士が犬猿の仲……(笑)
2社でクジラをシェアしながら泳ぐのはもってのほか、緊急事態だからという時だって、トイレの貸し借りすらも断られるほどで、不仲ぶりは相当なもの。
しかし、それはただオーナー同士の話であって、働いているトンガ人スキッパーやガイド同士は普通に仲良し。
彼らは、オーナーや会社云々よりも、個々の関係を大切にしている印象があります。
Week3の2日目のことでした。
この日は朝からクジラを探すのにババウ中が苦戦していました。
風向きを考慮して、私たちを乗せた、ローがスキッパーのストライカ号は、North bayから北の外洋エリアでクジラを探すことに。
船を進めていたところ、North bayでナティの操船するフェニックス号が親子を発見して追従しているのが見えました。
ストライカとフェニックスの会社が犬猿の仲なわけですが、スキッパー同士、越智さんも含めて仲がよいので、「良いクジラがいたら教えてほしい」と予めお願いして、ナティを横目に北上を続けました。
しかし北側にはなにもいなく、海もかなり荒れていたので早々に引き揚げ、ナティの居たNorth bayに戻ると、「親子と泳いでいる、シェアして泳ごう」と連絡がもらえました。
この時、ナティは、ボスのアランに聞かれないよう、他の船が聞いている無線は使わずに、こちらだけにわかるようにして連絡をしてくれていました。
クジラの親子をシェアして泳ぎ始めると、またナティから無線が入りました。
「どうやら、アランがこっちにくるらしい」
ナティのボスであるアランは、ババウのホエールスイムのパイオニア。
クジラへの想いの強さから、人一倍ホエールスイムのルールに厳しく、ルールにきちんと明記されていない「クジラをシェアする」という行為を基本的には嫌う人です。
アランが来るということで、シェアを終えなくてはならなくなりましたが、ナティのグループも十分な時間クジラと泳いだわけではありません。
ですがナティは、「TAKA(越智さん)のゲストにはこの良いクジラをもっとたくさん見せたいから、自分たちはここで終わりにする。アランにはTAKAに譲ったと連絡しておく」と言って、シェアしている姿をアランには見せまいと立ち去ってしまったのです。
しばらくしてアランがNorth bayに到着し、そして衝撃的なことを言ったのです。
「クジラをシェアさせてくれないか?」
アランと犬猿の仲である会社の船と協力、ましてやクジラをシェアするなんて、今までだったらあり得ないことです。
後でナティに報告すると「Amazing! ホエールスイムが始まって以来初めてのことだ!」と本当に信じられないといった表情。
アランとクジラをシェアしたあと、越智さんも「アランが“マロ・アピト(ありがとうございました)”と言って去って行った(笑)」と心底驚いていましたが、「でも、2社とも今年は自分がかなりの日数(30日以上くらいずつ)チャーターしているし、12年もやっているから両社ともに信頼もしてもらっていると思う。まあ、ある意味、仲の悪い2社を使うっていうのもクジラを見るために有効だったりするのかも」と、笑っていました。
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2015年度は、今年1月に放送されたテレビ番組の影響もあってか、例年の2倍以上ものゲストがババウに来訪予定。
フィジーやサモアでJICAの活動を行う女性2人がババウに旅行中で、レストランで会ったのですが、ババウにきた瞬間から「日本人? TAKAは知っているか?」「TAKAのゲストか?」と聞かれたと話していましたし、私も担当した3週間のホエールスイムでも、「TAKAが乗っているのなら、特別に自分たちの前にクジラを見ても良いよ」と言って譲ってくれたりもしました。
また、week2の時は、ハネムーンカップルがホエールスイムをキャンセルしてでも、モウヌ島に1泊したいというので、宿泊したのですが、その時も「越智さんのゲストだからと、いろいろとオーナーのアランさんにも良くしてもらえました」と喜んでいました。
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ババウでホエールスイムが始まってから約20年。
そのうち12年間通い続けている越智さんは、今やほとんどのボートスキッパーやガイド、レストランのスタッフだって知り合いのことが多い。
「自分が知らない人まで、ハイ!TAKA!って挨拶してくるから、あれ?この人どこで会ったっけかな~と、会話するのをどうしようと思うときも多いよ。間違ったこと言ったら悪いし(笑)」。
今年トンガに来て強く思うのは、通常のインストラクターやガイド業務、ツアーコンダクター業務とは異なる部分が多いことも、この「ガイド」という仕事だということ。
「現地の人と交流できているから、信頼されているし、それは胸を張れることで絶対に必要なこと」と越智さんも言うように、海に入るスキルや、クジラへのアプローチのスキルだけでなく、そこで活躍する現地の人との交流の大切さを学んだ3週間でした。
ナティは前々から「TAKAの誕生日はいつだ?」としきりに聞いてきていたのですが、9月3日の朝、「昨晩はゲストの他に、2社のクルーも集まってくれてお祝いしてくれたよ」と写真が送られてきました。
毎年トンガで迎えているとはいえ、現地の人から誕生日を祝いたいと思ってもらえるってとても幸せなことですよね。
私が帰国する前日、バーでビリヤードをしながら、「明日帰国するけど、また9月半ばにはババウに戻ってくるから、また来月会ってね」と伝えると、少し悲しげな表情を見せてくれたガイドがぱぁっと笑顔になってくれたのは、一番嬉しかったこと。
経験はまだ浅いけれど、「TAKAのスタッフは頑張っている」って思ってもらえるように来月も精一杯努めたいし、そしていつか、「最初に会った時はまだ若かったのにね」なんて言われる日がくるといいなと思っています。
今、一度帰国していますが、9月14日に、再度、ババウへ出立します。
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