サイパンに来てくれるゲストのために〜現地ダイビングガイドが語った台風26号(2018年)からの復興の軌跡〜
この記事を読んでくれているみなさんは覚えているだろうか。
昨年2018年10月25日未明にかけて、北マリアナ諸島における観測史上最強と言われる台風26号「イートゥ(Yutu)」がサイパンを直撃した。
実は、2015年8月にも台風13号による甚大な被害を受けており、それから3年を経て、またや自然災害に見舞われた。
しかし、最大瞬間風速が秒速80mにもなったという今回の台風の規模での直撃は過去に例はなく、その2015年の台風を遥かに凌ぎ、北マリアナ諸島の中でもサイパン、サイパンにほど近いテニアン両島は未曾有の被害を受け「大規模災害宣言」が発令されることになる。
当時の様子を、北マリアナ諸島のダイビングショップで形成される北マリアナ諸島ダイビング事業者協会Northern Mariana Diving Operators Association(以下NMDOA)の会長でもあり、MSCサイパンのガイドとしても活動している山口仁さん(通称:トシさん)にお話を伺った。
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MSCサイパンの山口仁さん
「サイパンに来てくれるゲストのためになんとかしないとね!」と笑顔を見せるトシさん。
所々に台風の爪痕は残るものの、現在では、問題なく観光客、ダイビングゲストを受け入れている。
深刻な被害から地道な復旧作業を経て、歩みだしたサイパンの軌跡をたどっていこう。
台風による深刻な被害
お店や車もボロボロに……
トシ
台風が過ぎ去った後、状況を確認すると、島の木々や前回の台風の時に木からコンクリート製に変わった電柱などもなぎ倒され、たくさんの住居の屋根なども吹き飛ばされていました。
ショップの方も、屋根であったりテラスが吹き飛ばされたりといろいろありましたが、飛来物により移動手段である車の窓が割れたり穴が空いてしまったりしたのが、何よりつらかったです。
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MSCサイパンのショップ前も木がなぎ倒されていた
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トシさん所有の車も窓ガラスが割れるなどの被害に
トシ
電気や水などのライフラインも復旧するのにかなり時間がかかりました(結果として2ヶ月半、事務所には電気が来なくて、場所によっては半年近くかかりました)。
作業や疲労が重なったせいか、画面がついていないテレビの前でぼーっとしていて、気がついたら数時間何もせずにいた時は、さすがにまずいなと思いましたね(笑)。
ただ、被害が大きかったからか、逆に復旧のスピードは比較的早かったように感じます。
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取材中、車窓から見えた風景
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建築物の屋根が吹き飛ばされるなど、台風の爪痕が今も残る[
トシ
NMDOAとして、翌日からすぐに復旧活動へ。
何よりゲストが早く潜れるようにしないといけない!その一心でダイビングポイントに繋がる道などの倒木をとにかくチェーンソーで切って切って切りまくって、台風の翌日から”ジェイソン”になりました(笑)
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台風直後。木がなぎ倒され、道が塞がれていた
復旧作業をスタート
元のサイパンを取り戻したい!
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ラウラウビーチに繋がる道路にて、当時の被害を話して下さるトシさん
トシ
サイパンの人気ポイント「ラウラウビーチ」に繋がる道も倒木が激しく、チェーンソーで切っていくわけですが、海岸まで3日間かかり、海まで出ていくと今度は道が崩落していて……。
これはさすがにショックでしたが、その道路を修復するために反対側から更に3日間かかり、さらに道路を1日がかりで直しました。
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台風直後の海岸沿い、ビーチに繋がる道路。雨、風、波によって道路は破壊されていた
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現在の道路。懸命な復旧活動により蘇り、現在は問題なく通行することが可能だ
トシ
けど、マリアナ政府観光局やNMDOAの仲間を中心に、一般ダイバーの方々までみんなすごく協力的に動いてくれて……。
ビーチクリーンなどの清掃活動も行い、日に日にきれいになり、同時に海中のラインなども修復し、比較的早い段階で問題なく潜れるようになりました。
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台風直後はラウラウビーチの駐車場なども破壊され使用不可な状態に
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取材時(2019年3月)の駐車場の様子。しっかりと整備され、安全な状態でダイバーを迎え入れてくれる
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サイパンの中心街・ガラパンの様子。現在は復旧している
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ガラパンではさまざまな催しも開催され、賑わっている
「きてくれるゲストのために」
ガイドから見えるサイパンの未来
すでに、ガラパンなどサイパンの中心街は台風の被害を感じさせる事なく店舗も通常営業をしている。
一方で、被害が大きかったという島の南側への移動中に車窓から見える景色は、台風から半年経った今もその爪痕を色濃く残しているように感じた。
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サイパンは過去、日本の統治下にあった時代があったが、当時からある日本家屋もこの台風で破壊されてしまったそうだ
「次のダイビング、どこに行こうか?海も大事だけど、ガイドも大事だよね」
多くのダイバーから、そんな声をよく耳にする。
「まだまだ元には戻っていないけど、サイパンに来てくれるゲストの為になんとかしないとね!」
燦々と照りつく太陽の光を浴びながら話を伺わせていただいた際、時より見せてくれたくったくのない笑顔。
そんな笑顔から自然災害にも負けない輝きと、これからのサイパンの未来を感じずにはいられない。
何より「ゲストの為」と恥ずかしげもなく言い切る熱い心。
復興の為にという気持ちも良いだろう、けど、こんなガイドたちの元でならどんなサイパンでも楽しむことができるだろう。
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美しい夕焼けと波の音ととともに過ごす極上の時間をサイパンで感じてほしい
supported by MSCサイパン
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1972年に設立されたMSCサイパンは、これまで無事故の老舗ダイビングショップ。
オーナーの山口仁さん(トシさん)は、サイパン歴25年。
海も陸も何でも知っているのはもちろん、面倒見がよい、頼れるサイパンのお兄さん的存在です!
また、NMDOA(北マリアナ諸島ダイビング事業者協会)の代表でもあり、NMDOAを通してサイパンのダイビングの安全や発展に力を注いでいます。
Address:PO box 501142 Saipan MP 96950
TEL:+1(670) 233 0670
URL:http://www.mscsaipan.com/
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