サンゴ礁を科学する(第2回)

サンゴ礁の消失による損害は年間に推定2兆円以上。サンゴを守る理由とは

オーシャナ読者の皆さんはきっとどこかで、サンゴ礁の保全、サンゴ礁の危機、サンゴを守ろうなどのメッセージを目にした事がある方も多いことでしょう。
また実際に保全活動に参加されたことのある方もいらっしゃるでしょう。

宮古島の白い砂とサンゴ(撮影:越智隆治)

では、突然ですが三択です!

Q. なぜ、サンゴとサンゴ礁は守らなくてはならないほど大切なのでしょうか?

1.美しいから。
2.生態系のバランスをとっているから。
3.人々の生活に役立っているから。

サンゴ隙間魚の群れ(撮影:座安佑奈)

サンゴの枝の隙間には魚がいっぱい

ずいぶん単純な選択肢でしたが、
A. 上記の選択肢はすべて正解です。

我々人間にとってのサンゴ礁の重要性は、国際的な研究プロジェクト「生態学と生物多様性の経済学」で報告されています。

サンゴ礁消失による推定損害額は年間1〜2兆4千億円以上(天然の防波堤としての役割、観光資源、まだ見ぬ医薬品開発などへの物質資源提供、漁業資源など)とされていますが、まさにお金に換算できない価値が眠っていると言えます。

さらにサンゴ礁は5億人もの人々の生活に直結して多面的な価値を与えています(参考までに日本の人口は約1億2年千万人)。

海の生物にとってはどうでしょう?

サンゴは他の生物に住処、隠れ家、餌として利用されています。
南西諸島海域では“キーストーン”種と呼ばれ、生態系バランスの維持に欠かせない生物です。

サンゴ食の生き物の中には、サンゴ自体を食べるものや、サンゴが作り出す粘液を食べるものもいます。

サンゴから放出される粘液(中島亮太博士撮影)

サンゴから放出される粘液(中島亮太博士撮影)

潮の満引きとサンゴ(撮影:座安佑奈)

潮が満ち始めるとサンゴから出された大量の粘液が水面を漂う

この「サンゴ粘液」に関する研究をされているJAMSTEC所属の中嶋亮太博士から、直接お話を聞けるチャンスがあるのでご紹介します。

来たる2014年8月16日(土)にJAMSTEC横浜研究所で一般公開セミナー「サンゴ礁と粘液の話」が開催されます!
ぜひ足を運んでみて下さい。

中嶋博士、当日はどんなお話が聞けますか?

「サンゴ粘液はサンゴ体内に共生している藻類(褐虫藻)が光合成により作り出した有機物がもとになっています。
サンゴ粘液の放出は生体防御をはじめ、サンゴの生育に欠かせない生理的機能に深く関与しています。

たとえば、サンゴ粘液には紫外線を吸収するアミノ酸が含まれ、熱帯の浅海に住むサンゴを強烈な紫外線から守っています。
さらに病原菌を殺したり、サンゴの上に降り積もる砂やゴミを絡め取って除去したりします。

またサンゴ粘液は海水中に放出されると様々なサンゴ礁動物に食べられます。
たとえば、ハナグロチョウチョウウオはサンゴ粘液をもっぱら専門に食べる様子が観察されているし、二枚貝やソフトコーラルもサンゴ粘液を食べます。
動物プランクトンもサンゴ粘液や粘液が絡めとった微生物を求めて積極的に集まってきます」

サンゴガニ(撮影:座安佑奈)

サンゴガニたちも粘液食者

「サンゴ枝の隙間などに生息するサンゴガニやサンゴヤドリガニは、粘液を効率よく集めるクシをもち、サンゴ表面に分泌された粘液をかき集めて食べています。

このようにサンゴ粘液は生態系の重要なエネルギー源としても機能しています。
8月16日(土)の一般公開セミナーでは、サンゴ礁生態系におけるサンゴ粘液の役割についてご紹介します。」

講演者:中嶋亮太(独立行政法人海洋研究開発機構,ポストドクトラル研究員)

※イベントについてはこちら
JAMSTEC サンゴ礁と粘液の話

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writer
PROFILE
沖縄出身の父に連れられ海に通い、水中にいることが大好きで、中高は水泳部。

大学入学と同時に始めたスキューバダイビングに夢中になり、海中世界を知って欲しいとダイビング雑誌で読者モデルをする傍ら、キラキラした南国の海で、いつも中心にいるサンゴという生物に強く惹かれていく。

大学院は京都大学理学研究科に進学し、サンゴについて学び始める。
英領バミューダにあるバミューダ海洋研究所に留学後、2013年度、京都大学瀬戸臨海実験所にて博士号取得。

現在は沖縄科学技術大学院大学でサンゴの研究に取組んでいる。
趣味でも仕事でもよく潜る。
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