サンゴ礁を科学する(第3回)

サンゴは動物?植物?それとも石?

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サンゴはどうぶつ。

海でよく遊ぶ人にとっては当然のようなことでも意外に広く知られておらず、前に進学校でアンケートを行ったところ、50人中半分くらいが、正解のどうぶつ、残り半分くらいは植物、そして3人ほどは岩と回答してくれたことが印象的でした。

さて、それではサンゴは何の動物のなかまでしょうか?

今日は“広い意味”でのサンゴの紹介をしていきます。

ソフトコーラル、ファイヤーコーラル、宝石サンゴ、イシサンゴ…色々あってややこしい?!
これらは生物学的には、クラゲやイソギンチャクと同じ「刺胞動物門」に分類されます。

「門」は生き物をなかま分けするため作られた枠の名前(学術用語)で、図のような細分化がされています。
一般的にはこれらの枠は単純に○○類と言い換えて使われることも多いです。

学術用語の門や類

刺胞動物はさらに、体のつくりによって、ヒドロ虫綱、箱虫綱、鉢虫綱、花虫綱の4つに分類されます。

耳慣れない名前ですが、それぞれ、
・ヒドロ虫綱=カツオノエボシなど多くのクラゲ、
・箱虫綱=悪名高いハブクラゲなど、
・鉢虫綱=ミズクラゲやタコクラゲなど、
皆さんよくご存知の動物たちです。

そして、サンゴは花虫綱とヒドロ虫綱に含まれます。
刺胞動物の中で、骨をつくるなかまをサンゴとよんでいます。

ハブクラゲ(提供:座安佑奈)

ハブクラゲ。沖縄本島でも出始めてきましたので注意

花虫綱は、ソフトコーラル、ウミエラ、ヤギ、宝石サンゴなどの含まれる八放サンゴ亜綱と、イソギンチャクや「サンゴ礁の海」と聞いてイメージするようなイシサンゴなどが含まれる六放サンゴ亜綱に分けられています。

ヒドロ虫綱には、サンゴ礁にいるアナサンゴモドキ(ファイヤーコーラル)などがいます。

サンゴやコーラルと一口に言っても色々なグループの生き物が含まれていて、寒い海から暖かい海、深海から浅海まで広く適応して暮らしています。

八放サンゴのなかま(提供:座安佑奈)

八放サンゴのなかまたち

私自身はイシサンゴの一部、ダイビングでよく見られるような“狭い意味でのサンゴ”の研究に関わっているのですが、祖母に「サンゴの研究をしている」と伝えたところ、「いつか素敵なネックレス待っているよ(にやり)」と言われたことがあります。

おばぁ、残念、私が調べているのは宝石サンゴとは別のグループなんだよね。

ファイヤーコーラルとイシサンゴ(提供;座安佑奈)

ファイヤーコーラルとイシサンゴの見分けはつきにくい。どちらにしても触らないでね

ちなみに、海で遊んでいた人がサンゴにつかまって刺されたなんて話。
あれはヒドロ虫綱のアナサンゴモドキのなかま(ファイヤーコーラル)の仕業である事が多いです。

見た目はよく似ていますし、刺さないサンゴであっても握れば海水でふやけた肌には硬くてケガをしたり、サンゴの方も人が握ったり上に立ったりすると傷ついてしまうのでお互いに触らない方がいいですよ。

胸キュン☆サンゴ展

ちょうど夏休み期間中、サンゴについてもっと楽しく、もっと学べる場があるのでご紹介します。

鳥取県立博物館「胸キュン☆サンゴ展~私を深海(うみ)につれてって~」が2014年8月31日まで開催中です。

学芸員で深海のサンゴ研究者である徳田さん、みどころを教えて下さい!

「今回の展覧会では、サンゴ礁のサンゴだけでなく、南極や深海サンゴを数多く展示しています。また、世界最古のイシサンゴ化石など貴重な化石標本も見ていただけます。ほかにも生物水槽の展示、展示室各所で貴重な深海など各種映像の上映、ポリプをつくる体験コーナーなどもあり、子どもから大人まで楽しんでいただける展示となっております。鳥取にお越しの際はぜひお立ち寄りください」

展覧会の詳細はこちらのURLをご覧下さい。

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writer
PROFILE
沖縄出身の父に連れられ海に通い、水中にいることが大好きで、中高は水泳部。

大学入学と同時に始めたスキューバダイビングに夢中になり、海中世界を知って欲しいとダイビング雑誌で読者モデルをする傍ら、キラキラした南国の海で、いつも中心にいるサンゴという生物に強く惹かれていく。

大学院は京都大学理学研究科に進学し、サンゴについて学び始める。
英領バミューダにあるバミューダ海洋研究所に留学後、2013年度、京都大学瀬戸臨海実験所にて博士号取得。

現在は沖縄科学技術大学院大学でサンゴの研究に取組んでいる。
趣味でも仕事でもよく潜る。
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