サンゴ礁を科学する(第22回)

オニヒトデの駆除、サンゴの移植の是非 ~ダイバーにできること~

ラジャアンパットのサンゴと魚の群れ(撮影:越智隆治)

サンゴ礁を科学する、1年間読んで下さった方々、本当にありがとうございました。
海で起きている現象にもっと多くの方に興味を持つきっかけ作りをしたい、という楽しい気持ちで記事を書かせていただいていました。

そのため肯定派と反対派の意見が分かれる以下の話題については触れにくかったのですが、やはり避けては通れません。
いろいろご意見がおありかと思いますが、最終回に免じて見守って下さい。

オニヒトデの駆除やサンゴ移植の是非。

まず、サンゴも、オニヒトデもモデル生物ではなく、野生の動物です。
どちらもまだ明らかにされていない点が多く、賛成・反対の前に、原因の特定や技術の確立の方が先だと現時点では思っています。

オニヒトデ(撮影:座安佑奈)

サンゴの敵として悪名高いオニヒトデ

オニヒトデの基本知識については、さまざまなサイトで詳しく紹介されています。

例えばこちらをご参照ください。

■日本サンゴ礁学会サンゴ礁Q&A
http://www.jcrs.jp/wp/?page_id=622#q16

はじめに、健全なサンゴ礁にはオニヒトデはある程度すんでいて、サンゴを食べていますが、通常は問題になりません。
多産なメスオニヒトデは1匹あたり、年に数千万個の卵を産むと言われています。

通常は、大量に生まれたオニヒトデ幼生の多くは生き残ることはできず、成熟するまで大きく成長できるのはほんのわずかです。
問題は、時々、大きなオニヒトデが大発生して、その海域のサンゴを食い尽くすほどの食害を与えることです。

2010年にオーストラリアでの発生例をもとに発表された研究結果では、ある海域で富栄養化によりオニヒトデ幼生の食料となる植物プランクトンが増え、オニヒトデ幼生が生き残ってしまうことが大発生の一つの要因となるとされています。

もともとサンゴは透明できれいな海水、つまり栄養塩の少ない海水にすんでいるもの。
富栄養化の原因は洪水、大雨などの他、生活排水もありますので、私たちにも陸でもできる対策がありそうです。

通常のファンダイビング中にオニヒトデを見つけたからといって叩き潰したり、刺し殺したりするのはおすすめできません。

第一にオニヒトデには毒のある鋭い棘が無数にあり、単純に危険です。

さらに地域によっては、漁業者やダイビング業者の方々を中心に、駆除したオニヒトデをカウントすることでモニタリングを行ったり、近くのビーチにオニヒトデの死体や破片が打ち上げられて誤って誰かが刺されたりすることを防ぐため、陸に上げて埋めたりしている所もあるからです。

サンゴ移植
参加して初めて分かること

実は私自身、以前はサンゴの移植全般に対してあまり良い印象を持っていませんでした。
移植をして工事等が進められることに強い抵抗があったからです。

しかし、この1年間で考えが変わってきました。

実際に移植現場での試行錯誤を見聞きしたり、携わっている方々と接する機会が増えて、考えがまとまったり、合点がいったりすることが何度もあったからだと思います。

「移植」とひと言で言っても、サンゴを移動させて工事するための「移設」だけでなく、例えばノンダイバーでも参加可能な、サンゴの小片をプレートに付ける苗作りなどを行う「普及啓発のための移植」、ダイバーや漁業者が植付けおよびその後のメンテナンスなどを行う「回復の手助けをするための移植」などがあります。

特にサンゴとは何か知ってもらう意味での効果は絶大。

実際に苗作りをやってみて、サンゴに興味を持ち、植付けも自分の手でしてみたくなったのでCカードを取得されたボランティアの方もいたそうです。

そう、実際に目にして初めてわかることがあります。
多くの環境問題は私たちの目に見えない形で進行しています。

そんな中、白化や被度減少が観察できるサンゴは環境問題の生物指標とも言われています。
ダイバーやシュノーケラーだけが目にすることのできる変化です。

皆さんも次のダイビングではちょっとだけサンゴに注目してみてください。

そのサンゴの様子、5年前と変わっていませんか?
また、5年後も元気な姿がみられるでしょうか?

そして、ぜひサンゴ保全活動の現場でも体験してみてください。

オニヒトデ駆除活動、サンゴ移植用の苗作りや植付けはボランティアを募集している団体、業者もあるようです。

やはり一番はサンゴが元気に生息できる海にすることが重要と思いますが、そのためにはどうしていけばいいのか楽しく学びながら一緒に考えてみませんか?

最後に、下記サイトでサンゴの種同定ガイド「種子島編」が公開になりましたのでお知らせ致します。

興味がおありの方はぜひお役立てください。

http://www.nies.go.jp/biology/pr/br/02.html

 

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writer
PROFILE
沖縄出身の父に連れられ海に通い、水中にいることが大好きで、中高は水泳部。

大学入学と同時に始めたスキューバダイビングに夢中になり、海中世界を知って欲しいとダイビング雑誌で読者モデルをする傍ら、キラキラした南国の海で、いつも中心にいるサンゴという生物に強く惹かれていく。

大学院は京都大学理学研究科に進学し、サンゴについて学び始める。
英領バミューダにあるバミューダ海洋研究所に留学後、2013年度、京都大学瀬戸臨海実験所にて博士号取得。

現在は沖縄科学技術大学院大学でサンゴの研究に取組んでいる。
趣味でも仕事でもよく潜る。