サンゴ礁を科学する(第4回)

増える、集まる、食べる、攻撃する…サンゴのいろいろな生態

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今日はサンゴの体のつくりと、その動物らしい一面を紹介させていただきます。

イシサンゴの仲間には一個体で暮らす単体性サンゴと、多くの個体で暮らす群体性サンゴがいます。
たとえば、この写真のダイオウサンゴ「一群体」は、2メートル以上はある巨大なものです。

ダイオウサンゴ(提供:座安 佑奈)

しかし、近づいてみると、数ミリの「個体」がたくさん集まっています。
ダイオウサンゴの場合は、上から見ると丸い形をしている部分が一個体です。一群体の中にある個体は全て分裂によって増えたクローンなのです。

ダイオウサンゴ(提供:座安 佑奈)

数ミリの個体が集まり、群体を形成している

では、一個体はどのような作りをしているでしょう?

こちらはイシガキオオトゲキクメイシという種類のサンゴの断面標本です。

イシガキオオトゲキクメイシの断面標本(提供:座安 佑奈)

実は、生きている部分は表層だけで、この軟体部はポリプと呼ばれています。

ポリプは自分で分泌して作り出したカップのような形をした石灰質の骨格に収まっていて、骨格は時間が経つにつれて蓄積し、どんどん上へ伸びていきます。

浅瀬では、干潮で干上がってしまうぎりぎりまで成長して、上方向への成長がストップした大きなハマサンゴを見る事ができます。

ハマサンゴ(提供:座安 佑奈)

この場合も、生きているのは表層部分だけです。
今、私たちが目にしているサンゴ礁の島々やサンゴ礁地形は、もともとはこれら小さなポリプが分泌した骨格なのですからスケールの大きな話ですよね!

ポリプの口の周りには、昼間は引っ込んでいる事の多い触手があります。
普段は動かないように見えるサンゴも、じっくり見ていると動物らしいところを見せてくれます。

例えば、この写真では隣のサンゴとの陣地争いのために、手前のイボサンゴが攻撃用の触手を延ばして枝状のサンゴを攻撃しています。

陣地争いをするイボサンゴ(提供:座安 佑奈)

また夜に姿が変わるサンゴとして、ミズタマサンゴ(バブルコーラル)が有名ですが、他にも姿が豹変するサンゴはたくさんいるんですよ。

昼間は触手を延ばさず地味と言われてしまう種類のサンゴたちも、夜には活発に触手を延ばし、口を開けている姿が観察できます。

ナイトダイビングではプランクトンを食べているシーンに出会えるかもしれません。
ぜひ次回のナイトダイビングで注目してみて下さい。

ミズタマサンゴ(バブルコーラル)昼間(提供:座安 佑奈)

昼のサンゴ

ミズタマサンゴ(バブルコーラル)夜間(提供:座安 佑奈)

夜のサンゴ

また最近は、手軽にタイムラプス撮影(注: 一定の間隔をあけて撮影した静止画をつなげて、動画のように見せる撮影)ができるようになり、オーストラリアの研究者が、サンゴをタイムラプス撮影した映像がBBCニュースでも取り上げられていましたので、興味のある方はぜひ映像をご覧になってみて下さい。

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writer
PROFILE
沖縄出身の父に連れられ海に通い、水中にいることが大好きで、中高は水泳部。

大学入学と同時に始めたスキューバダイビングに夢中になり、海中世界を知って欲しいとダイビング雑誌で読者モデルをする傍ら、キラキラした南国の海で、いつも中心にいるサンゴという生物に強く惹かれていく。

大学院は京都大学理学研究科に進学し、サンゴについて学び始める。
英領バミューダにあるバミューダ海洋研究所に留学後、2013年度、京都大学瀬戸臨海実験所にて博士号取得。

現在は沖縄科学技術大学院大学でサンゴの研究に取組んでいる。
趣味でも仕事でもよく潜る。
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