サンゴ礁を科学する(第15回)

40年前の沖縄は今どうなっているのか? 日本サンゴ礁学会の若手優秀発表賞の研究

宮古島の高野エリアのサンゴ(撮影:むらいさち)

撮影:むらいさち

沖縄県サンゴ礁保全推進協議会主催「おきなわサンゴ礁ウィーク2015」が大盛況開催中です(2015年2月28日~3月8日まで)。

海をもっと身近に感じる楽しいイベントや、より深く学べるイベントなど大人も子ども達も一緒にサンゴ礁について考えています。

今回は、イベントで常設展示している、「沖縄の潮間帯2014」ワーキンググループの調査報告をご紹介します。

「沖縄の潮間帯2014 ~沖縄の潮間帯 1974との比較~」という研究で、日本サンゴ礁学会第17回大会にて、若手優秀発表賞を受賞しています。

このグループのメンバーは、ご自身の研究テーマは別に抱えながらも、沖縄本島の各地を巡って、潮間帯(磯、ビーチ、港等)の現在と40年前の風景や環境の変化、生息生物種の比較をされている意欲的な若手研究者たちです。

中心的メンバーである水山さんにコメントをいただきました。

Q. どのような思いで調査を始められたのですか?

「沖縄の潮間帯現状調査報告~沖縄の潮間帯―1974(西平守考博士著)~」を読んだ時、西平守考先生の声が聞こえたように思いました。

「あれから40年。今の沖縄はどうなっていますか?」「誰かが調べないとわからないままですよ」と。

果たして学生だけでやり遂げられるのか不安しかありませんでしたが、「自分たちの身の周りにある自然は、自分たちの足で通って、自分たちの目で見て、自分たちの頭で理解しないといけない」という思いが募り、数名の学生とともに計画を立てました。

それから実際に西平先生にご挨拶にうかがうと、「楽しみながら、遊ぶつもりで取り組みなさい」とご声援をいただきました。

サンゴ礁学会記事(提供:座安)

沖縄の潮間帯2014ワーキンググループの皆さん

Q. ご自分の足で歩いてみてどう感じられましたか?

それまでは気にも留めなかった海岸に降り立つと、今まで意識しなかった小さな貝類やヤドカリ、クモヒトデなどの生き物が本当にたくさんいることに驚きました。

40年前に撮られた1枚の写真から場所を特定するのは予想以上に難しく、生き物についての詳細な調査は行えませんでしたが、90地点中10地点が埋め立てなどによってなくなっていることを明らかにしました。

同時に行ったゴミの調査や廃油ボールの分布状況調査では、全体としては明らかな改善傾向が見られたことに驚きました。

サンゴ礁学会記事(提供:座安佑奈)

名嘉眞での調査の様子

今年は立て直した計画とともに、40年前に各地点で観察された生き物が今も見られるのかを明らかにしたいと思います。

■水山克(みずやままさる)さんプロフィール

琉球大学大学院理工学研究科

サンゴ礁学会記事(提供:座安)

日本サンゴ礁学会第17回大会にて、若手優秀発表賞授賞式での水山さん(左)

そんな興味深い研究調査は、「おきなわサンゴ礁ウィーク2015」の会場に展示されています。
また、研究者と触れ合えるイベントもあります。

現在の沖縄の海岸が、40年前はどんな様子だったのか実際にご覧になりたい方は、ぜひ会場に足を運ばれてみてはいかがでしょうか?

サンゴ礁学会記事(提供:座安佑奈)

1974年と2014年の恩納村瀬良垣の様子

■にーにー・ねーねーが語る沖縄のサンゴ礁
~若手研究者によるサンゴ礁紹介

サンゴ礁学会記事(提供:座安)

【日時】 2014年3月8日(日) 10:00~17:00
【場所】 沖縄県立博物館 県民アトリエ
【主催】 日本サンゴ礁学会若手の会・沖縄の潮間帯2014ワーキンググループ
【対象】 子ども~大人(※座談会は中高生のみ)
【申込】 不要、会場へ直接お越しください ※座談会の参加のみ要申込
※詳細情報:サンゴ礁学会若手の会ブログ

<常設展示>
【日時】 3月8日(日) 10:00~17:00
【内容】
-サンゴ礁の生き物観察コーナー
-若手研究者の研究紹介ポスター
-写真展:「沖縄の海岸:40年前と現在」

<サンゴ礁座談会 ~サンゴ礁研究者と語ろう!~>
【日時】3月8日(日) 13:30~15:15
【対象】中学生・高校生(既卒生、高専生も可)15名
【申込方法】(1)氏名、(2)学校名・学年、(3)連絡先、(4)若手研究者への質問・みんなで話してみたいこと をcoral35week@gmail.comまでご連絡ください。
【内容】最新の研究テーマをはじめ、研究のおもしろさやその研究を始めたきっかけ、研究者になるための進路など、中学生・高校生の皆さんが気になる質問にサンゴ礁研究者がお答えします!

<若手研究者の研究紹介>
【日時】3月8日(日) 15:30~16:30
【内容】サンゴ礁研究を行っている若手研究者がポスターを使った研究紹介を行います。現在進行形で進んでいる研究に触れてみませんか?

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

サンゴ礁を科学する(連載トップページへ)

  1. なぜ日本のサンゴは世界に誇れるのか?「サンゴ礁を科学する」新連載
  2. サンゴ礁の消失による損害は年間に推定2兆円以上。サンゴを守る理由とは
  3. サンゴは動物?植物?それとも石?
  4. 増える、集まる、食べる、攻撃する…サンゴのいろいろな生態
  5. サンゴは何にストレスを感じているのか?白化とストレスの関係
  6. ダイバーだからできる、サンゴ保全のボランティア活動
  7. 海水魚25%以上の種が生息する、地球の0.1%に満たないサンゴ礁のしくみ
  8. サンゴも感染症になる⁉ わからないことが多いサンゴの病気
  9. 中国船のサンゴ密漁で話題の、深海に棲む美しい宝石サンゴ
  10. 海底の砂地が海洋酸性化を食い止める!? サンゴ礁の二酸化炭素ストレス
  11. 日本人なら知っておきたい、日本人研究者のパラオでの活躍 ~パラオ熱帯生物研究所~
  12. 魚は犬以上の嗅覚を持つ!? 体臭で敵を欺くサンゴ礁に棲む魚の擬態
  13. サンゴ分類のルネサンス期!? ~大西洋に浮かぶバミューダのサンゴ礁~
  14. 楽しみながら環境について考えるイベント「おきなわサンゴ礁ウィーク」開催
  15. 40年前の沖縄は今どうなっているのか? 日本サンゴ礁学会の若手優秀発表賞の研究
  16. まるで宇宙の星屑のようなサンゴの一斉産卵
  17. 一斉産卵だけじゃない!? サンゴの産卵いろいろ
  18. マイクロプラスチックから海を守ろう! ~海の生き物と微小ゴミの問題~
  19. サンゴの研究者が提案! ダイバーが意識すべき6つの潜り方
  20. 世界初のサンゴのゲノム解読でわかったこと 
  21. サンゴに住み込む生き物たち ~健康なサンゴ群体“Coral Holobiont”~
  22. オニヒトデの駆除、サンゴの移植の是非 ~ダイバーにできること~
writer
PROFILE
沖縄出身の父に連れられ海に通い、水中にいることが大好きで、中高は水泳部。

大学入学と同時に始めたスキューバダイビングに夢中になり、海中世界を知って欲しいとダイビング雑誌で読者モデルをする傍ら、キラキラした南国の海で、いつも中心にいるサンゴという生物に強く惹かれていく。

大学院は京都大学理学研究科に進学し、サンゴについて学び始める。
英領バミューダにあるバミューダ海洋研究所に留学後、2013年度、京都大学瀬戸臨海実験所にて博士号取得。

現在は沖縄科学技術大学院大学でサンゴの研究に取組んでいる。
趣味でも仕事でもよく潜る。
FOLLOW