ミラーレス一眼 水中撮影徹底ガイドby清水淳(第6回)

【新製品レビュー】11/18発売ミラーレス一眼OM SYSTEM OM-5を水中撮影レビュー

この記事は約9分で読めます。

コンデジからもう少しステップアップしたい方におすすめしたく、ミラーレス一眼徹底解説の連載を始めました。初回はデジタル一眼レフ、ミラーレス一眼、コンデジの違いについて、2回目は「撮影用LEDを併用したワイド撮影」、3回目は「撮影用TWIN LEDライトを使ったマクロ撮影」。4回目、5回目でE-PL9/10とその新型ハウジングのセットアップについて解説しました。

そして今回は、11月18日にOMデジタルソリューションズから発売されたばかりのOM SYSTEM OM-5を、皆さんより一足早く使ってみました。
対応する水中ハウジングはあるのか?水中モードは搭載されているか?大きさは?価格は?などいろいろと興味がありますよね。

OM SYSTEM OM-5

OM SYSTEM OM-5のスペック

まずは大まかなスペックを見てみましょう。

OLYMPUSから独立したOMデジタルソリューションズからデビューするミラーレスカメラで、初めてカメラのペンタ部分にOM SYSTEMのロゴを冠したモデル。同社の基本ポリシーとして「カメラは持ち出さなければ意味がない」ということで、本体重量は366グラム、幅125.3mm×高さ85.2mm×奥行49.7mmと小型、軽量の持ちやすいボディーに強力な防塵防滴性能が施されています。さらに最大6.5段の5軸手ぶれ補正や多彩なコンピュテーショナルフォトグラフィー機能(※)、我々にとても嬉しいホワイトバランス「水中」と仕上り「水中」も搭載されています。

撮像センサーはE-M5MKⅢと同様、有効画素数2037万画素LiveMOSセンサー、画像処理エンジンはE-M1MKⅢと同様の「TruePicⅨ」が搭載され、先のフラグシップ機同様のハイスペックなミラーレスカメラとしてデビューしました。詳しいスペックは書ききれないほど多いので、メーカーのサイトを参照してください。
▶︎OM SYSTEM公式サイト

ボディーの形状もサイズもOM-D E-M5MKⅢとまったく同じことから、収納できる防水ハウジングはAOI社のUH-EM5Ⅲがぴったりではないか?と想像して試してみたところ、なんとフルスペックで使用できることが確認できました。水中での使い勝手などは後で記載します。まずはまったく同じカメラに見えるOM-5とE-M5MKⅢを比較してみましょう。

※コンピュテーショナルフォトグラフィー機能:デジタル技術で画像を重ねることで高精細にしたり、被写界深度を深くしたり、時間差で撮影したりする新しい技術。

OM-5とEM-5MKⅢの違いって?

OLYMPUS OM-D E-M5MKⅢ

OM SYSTEM OM-5

パッと見た感じでは、ロゴの印刷が違っただけでまったく同じカメラに見えます。メーカーから出ている情報を元にどこが違っているか?スペック上で比較すると下記のようになります。

OM-5 E-M5MKⅢ
手ぶれ補正 5軸6.5段 5軸5.5段
光学IS連携手ぶれ補正 7.5段(〜望遠域) 6.5段(〜望遠域)
画像処理エンジン TruePic Ⅸ TruePicⅧ
フォーカスモードに追加 星空S-AF、星空S-AF+MF
測距エリアモードに追加 カスタム1〜4
連続撮影枚数 RAW 18コマ(30fps) RAW 23コマ(30fps)
RAW 149コマ(10fps) RAW 150コマ(10fps)
動画連続撮影制限 無制限 約29分
動画撮影機能追加 縦位置動画
動画プロファイルに追加 OM-Log400
高解像度撮影に追加 手持ちハイレゾ
特殊撮影に追加 ライブND
デジタル端子 UVC/UAC対応 USB2.0 Micro B
防塵防滴性能 IP53 対応
FL-LM3(フラッシュ) 同梱無し 同梱

ざっくりとまとめてみました。
その中から水中撮影に関係しているところをピックアップしていきましょう。

画像処理エンジン

オートフォーカスもホワイトバランスの効き具合も、画像処理エンジンの性能に左右されます。E-M1MKⅢで搭載されているエンジンは、高性能で定評があるタイプ。
E-M5MKⅢより水中ホワイトバランスを効かせた自然光撮影で、差が出てきそうです。

防塵防滴・耐低水温

防塵防滴性能がO-M1と同等のIP53の防塵防滴と、-10度の耐低温性能を備えたことは大歓迎です。このOM-5を収納する防水ハウジングUH-EM5Ⅲには、水密状況を事前にテストできるバキュームリークセンサーが備わっています。しかし、ダイビングのインターバルタイムに行うポート交換のようにテスト時間がほぼない場合には、リークの可能性が高くなります。不用意なリークにも高性能なシーリングは心強い限りです。

手ぶれ補正

ボディー単体で6.5段の手ぶれ補正は、素直に嬉しい性能アップ。水中でもフラッシュOFFの撮影では、低速シャッターを使う場合が多々あります。私が大好きな洞窟内の風景撮影などでは、1/8秒などと超スローシャッターを使う場合もあるので。
星空AFと合わせて手持ちでの星空撮影でも、大きな武器になりそうです。

縦位置動画記録

撮影した画像をInstagramを使って楽しむ方には絶対に嬉しい機能が、この動画縦位置記録。今までの機種にはこの機能がなかったので、縦位置で撮影した場合には、撮影後に編集ソフトを立ち上げて画像データの向きを修正する必要がありました。また、動画撮影ではE-M5MK3が連続撮影制限29分に対し、OM-5は制限がなくなりました。加えてWEBカメラ機能を搭載。カメラをPCにUSBケーブルで接続すると、専用ソフトを使用する必要なく、利用が可能となります。

作例

撮影モード

M(マニュアル)

シャッター速度

1/640

絞り値

f2.8

露出補正

+1.3EV

ISO感度

AUTO(ISO640)

フラッシュ

OFF

まずは高倍率マクロから。
デジタルズームを使わずに、M.ZUIKO DIGITAL60mmMacroレンズの最短撮影距離で撮影したサンゴのアップ。ポリプはビシっとシャープに、背景はフワッと明るめに撮影してみました。ピント合わせの動きは高速AFを誇るレンズだけあって、スムーズに最短付近を探します。
ボタンへいろいろなコマンドを振り分ける機能が充実しているので、AFLボタンにMF切り替え機能を振り分けて、固定したいピントが来たときに瞬時にマニュアルフォーカスへ固定して撮影します。RGBlueライトの鮮やかな発色を生かした作風に仕上げました。

撮影モード

M(マニュアル)

シャッター速度

1/640

絞り値

f5.6

露出補正

+0.3EV

ISO感度

AUTO(ISO3200)

フラッシュ

OFF

淡いピンクのサンゴの中に潜むカンザシヤドカリを、これも最短撮影距離付近で狙ってみました。サンゴのポリプと違い、ラフにアプローチをすると引っ込んでしまうのでオートフォーカスをコンティニアスにセットしながら慎重に距離を詰めていきます。UH-EM5ⅢにはEVFモニターを覗くためのピックアップファインダーが付いていないので、カメラ背面の大型モニターへ拡大鏡AOI UMG-01をセット。マクロ撮影の細かいピント合わせには、必要なアクセサリーです。
両目にしっかりピントが合うように、絞りはやや絞り気味のf5.6をチョイス。f2.8とf4.0を現場で使ってみて被写界深度が足りないとの判断からF5.6を選択。シャープでスッキリとした仕上がりになりました。

撮影モード

P(プログラム)

シャッター速度

1/125

絞り値

f2.5

露出補正

-1.0EV

ISO感度

AUTO(ISO200)

フラッシュ

OFF

ちょうどこのカメラのレビュー中に、和歌山から友人が遊びに来てくれました。スナップショット風にEMMONSでのワンショット。
引きの自然光での発色をチェックするのに良い機会になりました。0M-5には水中モードの搭載はありませんでしたが、ホワイトバランスと仕上がりの項目で「水中」が設定されています。ホワイトバランスと仕上がりを「水中」にセットして、発色と抜けをチェック。
ホワイトバランスには補正を加えずに撮影した水深40mのブルーは、ややシアン系に傾く傾向があり好感が持てます。
E-M5MKⅢがやや眠いブルーの発色だったのに対し、彩度が乗った魅力的なブルーの発色が確認できたのは嬉しいです。

撮影モード

M(マニュアル)

シャッター速度

1/250

絞り値

f9.0

露出補正

-1.0EV

ISO感度

200

フラッシュ

AOI Q1RC/RCTTL

この一枚のみ、弊社の写真教室を担当していただいている小山学カメラマンに撮影してもらいました。
フラッシュ光のコントロールが見事な作品。画面全体に強すぎず、弱すぎず光が当たり、デバスズメダイのディテールを崩すことなく、補助光の効果を発揮しています。素晴らしいですね。
AOIの純正ストロボAOI USC-Q1RCを使っていますが、フラッシュ光の色温度とOM-5が作る発色とが完璧にマッチングしていると思います。

水中撮影システム

それでは、今回水中撮影テストに使ったアクセサリーを紹介します。
まずワイド撮影システム

レンズ

OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL8mmFisheyeF1.8

ハウジング

AOI UH-EM5Ⅲ

レンズポート

OLYMPUS PPO-EP02

ブラケット

MPBK-04

アーム

MPアームL&18-25異径アーム

アームフロート

MPアームフロート

クランプ

MPクランプ

ストロボ

AOI UCS-Q1RC-WHT

光ケーブル

MPマルチコア光ファイバーケーブル

マクロ撮影では下記のシステムで撮影

レンズ

OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL60mmMacroF2.8

ハウジング

AOI UH-EM5Ⅲ

レンズポート

OLYMPUS PPO-EPO3

ブラケット

MPBK-04

アーム

MPアームMS&MPA-S03AD

クランプ

MPクランプ

LEDライト

RGBLUE SYSTEM02 TWIN LIGHT PC

OM-5を水中撮影で使ってみて感じたこと

今回使ってみたOM-5。
使う前までは、カメラボディーのシルク印刷がOLYMPUSからOMSYSTEMに変わっただけで、中身はOM-D E-M5MKⅢとまったく同じなんだろうなと予測していました。
ボディー形状はまったく同じ、モニターもバッテリーも触った感じもE-M5MKⅢなのですが、幸運にも収納できる防水ハウジングがあるので発売前に水中撮影をレビューできることになりました。
使ってみたら、水中モードこそなくなっていますが、ホワイトバランスと仕上がりに「水中」がセットされていて、水中で使うカメラとしては大きなアドバンテージになっていました。前モデルのE-M5MKⅢに比べるとボディーの形と大きさは同じですが、画像処理エンジンの進化とチューニングの良さが、別次元の画像を作っているようでした。
OM-1には手が届かないけれど本格的な水中撮影を始めたい方や、TGシリーズからのステップアップには比較的リーズナブルで、おすすめできる撮影システムと言えるでしょう。

インスタライブで詳しく解説!

本連載では毎回記事掲載の次の日にインスタライブでみなさんの質問にもお答えしながら解説していきます。

インスタライブ

日時:11月23日(水)20時〜
インスタライブは終了しました。アーカイブはこちらから。


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writer
PROFILE
1964年生まれ。水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影を行ないながら、沖縄・那覇にて水中写真教室マリーンプロダクトを主宰。 また、カメラメーカーの研究開発にも携わり、水中撮影モードや水中ホワイトバランスの開発アドバイザーも務める。1998年にデビューしたOLYMPUS C900Zoomから最新機種まで全てのOLYMPUS水中モデルのチューニングテストを行なっている。カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーメーカーのアドバイザーやテスト撮影の要望も多い。執筆活動では、水中撮影機材の解説や撮影の仕方、楽しみ方の記事をPADI Japan/デジカメ上達クリニック、OMDS/水中デジタルカメラ・インプレッション、マリンダイビング.ウェブ/水中デジカメ撮影教室、オーシャナ/カメラレビューを現在連載中。最近では、「清水淳のマンツーマン水中写真教室」が好評いただき熱意あふれるフォトグラファーたちと一緒に撮影をしている。
公式ホームページ https://shimizu.marine-p.com/ 公益社団法人日本写真家協会会員。
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