ミラーレス一眼「OM SYSTEM OM-1」の水中マクロ撮影
先月はミラーレス一眼カメラ「OM SYSTEM OM-1」と10月5日に発売になった専用ハウジング「AOI UH-OM-1」を使用した、メキシコ・セノーテでのワイド撮影を紹介させていただきました。今月はOM SYSTEM OM-1のマクロ撮影について紹介していきましょう。
今回の撮影は、私が住む沖縄本島那覇をベースに撮影可能なダイビングポイントを選んで撮影してきました。恩納村ボート、辺戸岬、本部ビーチ、名護ビーチ、慶良間ボート、といろいろな場所へ行ってきました。
ハウジングは「AOI UH-OM1」、補助光は「AOI UCS-Q1RC」、「RGBlue SYSTEM02:re TWIN LIGHT PREMIUM COLOR」を使用しています。レンズは①M.ZUIKO DIGITAL60mmMC、②M.ZUIKO DIGITAL30mmMC、③ZUIKO DIGITAL50mmMC+EC20の3本を使っています。
今回は、それぞれのレンズで撮影した被写体と撮影システム、撮影時のカメラ設定を詳しく紹介していきます。
3つの趣の異なるマクロレンズ
それぞれのマクロレンズに専用のレンズポートが用意されています。一つのレンズポートで数種類のマクロレンズを併用することはできません。マクロレンズの最大倍率を生かすためには、カメラのレンズ先端面の直前にポートのガラス面を位置させなければなりません。
①60mmMCが望遠的なマクロレンズなのに対し、②30mmMCは広角的な要素を持ち合わせたマクロレンズ。③50mmMC+EC20はマイクロフォーサズ規格で100 mmなので、超望遠マクロレンズといえます。
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左から③50mmMC+EC20、①60mmMC、②30mmMC
OM SYSTEM社のレンズロードマップには新型の90mmマクロレンズが2023年にデビューすると記されているので、それをすごく楽しみにしています。
ハゼ撮影の好きな私の場合は、通常ひと世代前ののZUIKO DIGITAL50mmMC+EC20を使うことが多いです。
それではOM-1のマクロの撮影の世界をお楽しみください。
➀M.ZUIKO DIGITAL60mmMCの作品と撮影システム
作品
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撮影協力:fill color
撮影モード
M(マニュアル)
絞り値
f2.8
シャッター速度
1/250
露出補正
+0.7EV
ホワイトバランス
水中+2R -2G
仕上がり
水中
ハイライト&シャドウコントロール
HI 0,MID 0,SHA -3
フラッシュ
OFF
ISO
AUTO/800
ライト
RGBlue SYSTEM02:re TWIN LIHGT PREMIUM COLOR
撮影地
沖縄/名護市
可愛らしいナカモトイロワケハゼのペア。60分近く粘って、この一瞬を収めました。柔らかくライティングを回し、ピントを開放F値で使ってボケ味を出しました。二匹の目にピントを合わせることは至難の技ですが、忍耐でクリアさせます。
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撮影モード
M(マニュアル)
絞り値
f2.8
シャッター速度
1/320
露出補正
+0.7EV
ホワイトバランス
水中+2R -2G
仕上がり
水中
ハイライト&シャドウコントロール
HI 0,MID 0,SHA -3
フラッシュ
OFF
ISO
AUTO/800
ライト
RGBlue SYSTEM02:re TWIN LIHGT PREMIUM COLOR
撮影地
沖縄/本部
通称「ゴリチョビーチ」と呼ばれるダイビングポイント。小指の爪程度の小さな被写体。広いポイントの中で探すのが大変でした。いろいろな体色の個体がいるようですが、今回見つけたのは赤の個体。砂を白く出すために、少し明るめに露出補正を調整しました。
撮影システム
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防水ハウジング
UH-OM1/AOI
レンズポート
FLP-02/AOI
ブラケット
MPBK-02/MP
アーム
MP ARM M&MPA-S03AD /MP
アームフロート
MP ARM FLOAT/MP
クランプ
MP CLAMP/MP
ライト
RGBlue SYSTEM02:re TWIN LIHGT PREMIUM COLOR
モニター画面用拡大鏡&遮光フード
UMG-01/AOI
②M.ZUIKO DIGITAL30mmMCの作品と撮影システム
作品
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撮影協力:fill color
撮影モード
M(マニュアル)
絞り値
f3.5
シャッター速度
1/320
露出補正
0.0EV
ホワイトバランス
水中+2R -2G
仕上がり
水中
ハイライト&シャドウコントロール
HI 0,MID 0,SHA -3
フラッシュ
OFF
ISO
AUTO/640
ライト
RGBlue SYSTEM02:re TWIN LIHGT PREMIUM COLOR
撮影地
沖縄/名護市
60mmの作品と同じダイビングポイントで撮影。綺麗な貝殻を住処にしているナカモトイロワケハゼのペア。お洒落なおうちを誇らしげにしているような雰囲気を感じました。水草も砂もバックのブルーも、うまく被写体を盛り立てています。
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撮影モード
M(マニュアル)
絞り値
f3.5
シャッター速度
1/320
露出補正
-0.3EV
ホワイトバランス
水中+2R -2G
仕上がり
水中
ハイライト&シャドウコントロール
HI 0,MID 0,SHA -3
フラッシュ
OFF
ISO
AUTO/200
ライト
RGBlue SYSTEM02:re TWIN LIHGT PREMIUM COLOR
撮影地
沖縄/慶良間
ウデフリツノザヤウミウシの仲間を友人のカメラマンが見つけました。隣に潜むワレカラの大きさから想像すれば、このウミウシがいかに小さいかがわかっていただけると思います。今回使ったM.ZUIKO DIGITAL30mmMCは倍率が60mmMCより高くなっています。ただし、レンズ直前で捉えなくてはならないので、撮影の難易度は上がります。
撮影システム
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防水ハウジング
UH-OM1/AOI
レンズポート
FLP-04/AOI
ブラケット
MPBK-02/MP
アーム
MP ARM M&MPA-S03AD /MP
アームフロート
MP ARM FLOAT/MP
クランプ
MP CLANP/MP
ライト
RGBlue SYSTEM02:re TWIN LIHGT PREMIUM COLOR
モニター画面用拡大鏡&遮光フード
UMG-01/AOI
③ZUIKO DIGITAL50mmMC+EC20mの作品と撮影システム
作品
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撮影モード
M(マニュアル)
絞り値
f4.0
シャッター速度
1/250
露出補正
+0.3EV
ホワイトバランス
水中+2R -2G
仕上がり
水中
ハイライト&シャドウコントロール
HI 0,MID 0,SHA -3
フラッシュ
OFF
ISO
AUTO/125
ライト
RGBlue SYSTEM02:re TWIN LIHGT PREMIUM COLOR
撮影地
沖縄/恩納村
恩納村には、ハゼがたくさんいるダイビングポイントがいくつかあります。今回訪れた場所は意外に水深が浅かったため、被写体に向き合う時間が長くとれました。このZUIKO DIGITAL50mmMC+EC20は、35mmフィルム換算で200mmにもなる超望遠マクロレンズ。遠くから大きく狙えるので、臆病なハゼ撮影にはぴったりです。
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撮影モード
M(マニュアル)
絞り値
f4.0
シャッター速度
1/320
露出補正
±0.0EV
ホワイトバランス
水中+2R -2G
仕上がり
水中
ハイライト&シャドウコントロール
HI 0,MID 0,SHA -3
フラッシュ
OFF
ISO
AUTO/1000
ライト
AOI UCS-Q1RC
撮影地
沖縄/辺戸岬
マクロ撮影の被写体の中で、私が特に好きなものがこのアケボノハゼ。美しい体色になんともいえない魅力があります。柔らかい綺麗な背景の中に配置させたいと思っていたら、意外に浅い水深37m付近で見られました。
撮影システム
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防水ハウジング
UH-OM1/AOI
レンズポート
ER-PN_OD-37/AOI+PER -E01×,PAD-EP08/OLYMPUS,50mmMCポート/INON
ブラケット
MPBK-02/MP
アーム
MP 18-25ADAPTER/MP
クランプ
MP CLAMP/MP
ライト
AOI USC-Q1RC
レンズホルダー
MPLH67
モニター画面用拡大鏡&遮光フード
UMG-01/AOI
OM-1のマクロ撮影時のセットアップと撮影の仕方
OM-1には、OM-D E-M1MKⅡに搭載されたような水中モードは搭載されていません。マクロ撮影でのOM-1のセッティングはマニュアルモードを使います。補助光には水中撮影に特化した超小型LEDライトシステムや、AOI USC Q1RCのようなリモートコントロール搭載の専用ストロボを使用します。
ライトの光を嫌う被写体の場合は、RCシステムに準拠したUCS-Q1RCストロボ2灯をTTL AUTOで使います。今回の被写体はどれもライトを嫌わない被写体だったので、発色の良さとOM-1の自動露出制御のしやすさからRGBlue SYSTEM02:re TWIN LIGHT PREMIUM COLORを選びました。
動きが非常に速い被写体でない限り、カメラの設定は、絞りは開放F値、シャッター速度は1/250〜1/320を使います。明るさのコントロールはISO感度を上下させてコントロールしますが、ISO感度をAUTOにしておけば、OM-1の場合は自動で適正露出に調整されます。好みで少し暗めや明るめと作風をコントロールする場合は、露出補正を親指側のダイヤルに割り振っておきましょう。それを動かすだけの簡単な操作で、個性を活かした作風が楽しめます。
ストロボを使う場合は、背景の明るさのコントロールと、被写体に当てるストロボ光の強さの調整と、2つの露出を調整しなければなりません。その場合にISOは200に固定して、人差し指側ダイヤルにフラッシュ補正を、親指側ダイヤルに露出補正を割り振っておくと使いやすいでしょう。
LEDライトを使うメリットとしては、画面全体の露出をまとめてコントロールできるので、作業が簡単になり、被写体とのやりとりに専念できます。被写体の明るさと背景の明るさとのバランスは、ライトの強さを変えれば変更可能になります。一般のユーザーの場合は、ストロボと撮影用LEDの両方を準備することがコスト的に難しい場合も多々あると思います。その場合には、AOI USC-Q1RCがおすすめです。LEDライトとしての機能も持ち合わせたRCストロボなので、ストロボとしてもLEDライトとしても機能します。
AOI製OM-1専用防水ハウジングUH-OM1は、カメラのFVFを覗けるように設計されていません。小型化とコストの抑制を考慮した結果、省くことになりました。その代わりにモニター部分を覗けるように、遮光フードが付いた拡大鏡「UMG-01」をAOI社は用意しています。シニアの方やマクロ撮影でシビアなピント合わせが必要な場合には、このアクセサリーを装着して撮影するといいでしょう。今回のマクロ撮影ではすべての作品で、このUMG-01を使用しています。
OM-1は「AI被写体認識AFが素晴らしい」と陸上のカメラマンの間で話題になっているようです。実は水中シーンでも、AI被写体認識AFの効果を確認できています。
トリッキーな動きをするハゼやスズメダイ、ハナダイの仲間の撮影で、被写体を認識&追尾する場合、通常のマクロ撮影ではシングルかスモールを選択します。OM-1でA1認識をONにしておくと、四角の枠が被写体を追いかけて、さらに魚の目を探し始めます。その機能を使いたい時に呼び出せるように、私はISOボタンに割り振っています。
この機能を使えば、動きの速い被写体への撮影もチャレンジしやすいといえます。他のデジタル一眼に比べても、この点は大きくリードしているといえるでしょう。
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LEDライトを使ったマクロ撮影の設定

ストロボを使ったマクロ撮影の設定
いかがでしたか? OM-1のマクロ撮影なら、システムのボリューム的にはコンパクトデジタルカメラのTGシリーズを一回り大きくした程度、撮影のしやすさはデジタル一眼の中ではずば抜けて簡単といえるでしょう。それでいて画質は、フルサイズ一眼レフに劣らないどころか優れている一面を持ち合わせています。
今月は1月25日の20:00からInstagramでライブを行います。今回のOM-1のマクロ撮影について細かく解説していきます。皆さんのご参加ぜひお待ちしています。
インスタライブで詳しく解説!
本連載では毎回記事掲載の次の日にインスタライブでみなさんの質問にもお答えしながら解説していきます。
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