ミラーレス一眼被写体別撮影テクニック「ニシキテグリ」[後編]
AOIの超小型水中ハウジング「AOI UH-OM1」と軽量小型で水中での携行にストレスのないOM SYSTEM OM-1MKⅡ、そして超高速オートフォーカス(以下、AF)のM.ZUIKO DIGITAL60mm F2.8 Macro を使ったニシキテグリ撮影の続編をお届けします。
前編を振り返って
水温が上がる前の5月前半に行った前回のロケ。撮影の雰囲気を理解しながら最適な撮影システムの構築を目標にocean+α編集部のスイカさんに同行をお願いしました。普段ミラーレス機を使っていないスイカさんが特別な練習をしないで快適に撮影できた撮影システムなら、「これからミラーレス機を使ってみようかな?」という方にも自信を持ってお勧めできるからです。
ミラーレス一眼被写体別撮影テクニック「ニシキテグリ」[前編]
その結果、暗い環境でもニシキテグリの不可解な動きにしっかりとAFが作動してピンボケを防ぐことができました。そして、シャッターを押すだけで、OM-1 MKⅡと専用水中ストロボAOI-Q1RCが通信を行い正確なストロボ発光をコントロールしてくれるので、鮮やかな体色が魅力のニシキテグリの姿を捉えられます。スイカさんも「こんなに綺麗にくっきり撮れるなんて、やっぱりコンデジとミラーレスだと全然違うんですね。重さや使い勝手もそう変わらないのに驚きです」と大満足でした。
今回の後編では、スイカさんが使った基本セッティングを元に撮影データを精査して、さらに成功率を高めて楽しさが増すようなセッティングを研究しました。
撮影時の様子
一年のうちで一番日が長い頃。暗くなってくるのは19時過ぎでした。
17時、インスペクションでニシキテグリが潜むサンゴをチェックに、軽くダイビングをします。ストロボの発光チェック、AFの確認、エントリーに使う潜降ロープから撮影場所までのルート確認など、念入りに確認を重ねていきます。
薄暗くなり始めた19時頃にニシキテグリ産卵撮影をスタート。大潮周り前日の夕方も産卵シーンが見られたと言うことから、今夜も期待できると船長からアドバイスを受けてエントリー。
この辺りが怪しいと狙いをつけた場所で待つが、一向にニシキテグリが現れず少し焦りを感じています。そこへバディーが呼びにきてくれました。行ってみると既にオスとメスがペアになってウロウロしている状況でした。
減光して赤フィルターを付けたRGBlueのライトが薄暗く被写体を照らし始めます。ニシキテグリのペアをモニター上に捉えて撮影していくと、ユニークなカットも撮れました。
根気よく追従していくとそのチャンスがやってきました。RC/TTL秒間5コマ連写でまるで雷が落ちたようにビカビカにストロボが唸ります。ピント合わせにいくというよりか、テレビゲームのマシンガンゲームのように撃ちまくりました。
その撮影を通して感じたのですが、減光が充分ではないライトをニシキテグリに当てると産卵をやめてしまうので、NDフィルターをしっかり付けることが重要。極端に暗いライトなら赤フィルターがなくても産卵に影響はないです。
フィッシュアイさんから発売されている光量をデジタル表示できるタイプなら、光量ボリューム2〜3%の微小照射であれば問題ないということでした。私の場合は、Kenko ND8PROをセットして最小ボリュームのRGBlueのSYSTEM01で撮影しています。
着底している状態での撮影になりますが、砂を激しく巻き上げる方がいました。その巻き上がった砂はピント合わせに悪影響を与えるばかりか、写真にもベールが掛かったようなノイズを生むので、巻き上げないように細心の注意を払いながら撮影に臨んでいただきたいです。
ニシキテグリ産卵撮影
OM-1MKⅡ用スペシャルチューニング
使用機材
カメラ
OM SYSTEM OM-1MKⅡ
レンズ
M.ZUIKO DIGITAL60mmMacro F2.8
ハウジング
AOI UH-OM1
レンズポート
AOI FLP-02
補助光
AOI USC Q1RC×2
グリップ&ブラケット
MPBK-02
アーム&クランプ
AOI CP-02-SLR
赤色補助光
RGBLUE システム01+RGBLUE RF-0149mm+Kenko PRO ND-849mm+
ストロボ光センサー
AOI LTP-02
前回と撮影システムに変更はありません。レンズは、M.ZUIKO DIGITAL90mm F3.5MacroIS PROとM.ZUIKO DIGITAL60mm F2.8のどちらかとやはり悩みました。やや遠くから同じ大きさで撮影が可能な90mmMacroの方が良いかと思いましたが、産卵行動になるとカメラが近づいてもまったく動じないと言うことを聞いていますので、よりAFの動きが俊敏な60mmMacroを選択しています。
基本設定
撮影モード
M(マニュアル)
絞り
F8.0
シャッター速度
1/250
ISO感度
400
フラッシュ
ON /RC TTL
Q1RCのモード
RC
フラッシュ補正
-1.0EV
ホワイトバランス
水中
仕上がり
水中
フォーカス
コンティニュアスAF
フォーカスレンジ
Cross
ドライブ
連写
変更したポイントは2つ。
まずひとつ目は、ピント合わせの正確さより動きに追従させることを優先し、AFエリアをSmallからエリアの広いCrossに変更しました。
ふたつ目はISOをマニュアルのISO400に変更しました。カメラと被写体との距離、設定したF値を再度精査した結果、ISOをAUTOに設定した前回では、フラッシュ発光時にはISO200に自動設定されます。その結果ストロボの発光量が1/4程度になりTTL自動調光を使った連写では秒間2〜3コマ程度がにしか対応できず、バリバリと連写で撃ちまくるといった感じはならずコマ落ちする結果になります。
そこで、その結果を踏まえてOM-1MKⅡの感度をISO400まで上げるとTTL自動調光を使った撮影でも秒間5コマの連写撮影に成功。下記のキャプチャー写真は、ISO200で撮影した秒間5コマのセッティングの結果とISO400で撮影した秒間5コマのセッティングの結果を比較してみました。
ISO200のセッティングでは連写の速度にストロボの発光が追いつかない状態が見られますが、ISO400のセッティングでは秒間5コマのセッティングに完璧に対応してコマ落ちがない状況が確認できます。秒間5コマのRC/TTL自動調光が可能なストロボはAOI Q1RC以外にはありません。バッテリーが特殊な大型大容量の18650タイプを使用しているので
その恩恵を受けることが可能なのです。
というわけで、2回に渡って臨んだニシキテグリ撮影でした。
参加させてもらう前までは、結構ハードルが高そうな撮影だと思っていました。じっくりと作戦を立てて、機材とシステム、セットアップを構築してからチャレンジしてみたらこんなに簡単で楽しい撮影は久しぶりでした。深いエリアにいるハゼの撮影も楽しいですが、夜のダイビングでじっくりマクロ撮影はアドレナリンが出る楽しさを感じました。
来年もさらに楽しい企画を予定していきます。撮影会もぜひ開きたいと考えていますので、読者の皆さんも、またお誘いしますね。
☆オートフォーカスが物凄く正確で俊敏にお仕事をします。
動きの早いマクロの被写体であるハナダイやスズメダイなどにもオートフォーカスが追従します。ワイド撮影なら画面全体から被写体を判別して最適なAFポイントを決定します。
☆Ai被写体認識「鳥」が水中撮影での魚にフィットします。
☆水中ホワイトバランス搭載で青被りしらず。水中撮影では起きやすい青被りをOM SYSTEM独自の技術で鮮やかな水中シーンが得られます。静止画のみならず4K60Pのムービーでも威力を発揮します。
☆小型軽量のボディーでも一日3DIVEに対応する大容量バッテリー搭載。
フルサイズのミラーレス機にありがちバッテリーのスタミナ不足はOM-1MKⅡにはありません。
☆専用ハウジングは小型軽量のハウジングが準備されています。
AOIのOM-1用ハウジングAOI UH-OM1なら前モデルのOM-1はもちろんOM-1MKⅡも収納が可能です。
☆水中ワイド撮影に使うフィッシュアイレンズもマクロ撮影に使う60mmマクロレンズもレンズ自体がコンパクト設計で水中撮影システムを組んだ場合にでも大きなサイズにならないので、ダイビング中の携行が苦にならないのが嬉しいです。
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