ギンガメアジの群れ@粟国島を簡単キレイに撮影するには? 清水淳が徹底解説
前回は、先のマリンダイビングフェアで発表になったこの春の新製品についてお話ししましたが、今月は、今が旬の沖縄・粟国島でのギンガメアジ撮影について解説します。コンパクトなミラーレス一眼とRC(リモートコントロール)ストロボを使った撮影手法です。一般的なデジタル一眼であれば、そのままこの手法が使えるので、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
モチーフになるカメラはOM SYSTEMのOM-1。小型軽量のコンパクトデジカメ・TGシリーズの撮影システムを一回り大きくした、サイズ感に似合わない実力を持つカメラ。センサーサイズが小さいマイクロフォーサーズ機ながらフルサイズ機に負けない解像感と透明感のある画像が特徴的です。
粟国島のギンガメアジ
粟国島は沖縄本島の中心地・那覇市から北西に60kmほど離れた位置にある島です。潮当たりが良く回遊魚が多く見られる「筆ん崎」というポイントでは、4〜7月にかけてギンガメアジの群れが高確率で見られるため、ダイバーに大人気です。私も大好きなポイントで、ギンガメ玉をカメラに収めようと足繁く通っています。流れが速く上級者向けのポイントでもあるので、ダイビングスキルが必要なのはもちろん、カメラの設定やハンドリングにもコツがいります。
カメラ
OM SYSTEM OM-1
レンズ
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL8mmFishEyeF1.8PRO
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り値
F5.6
シャッター速度
1/250
ホワイトバランス
水中
仕上がり
水中
ハイライト&シャドーコントロール
HI 0,MID 0,SHA -3
フラッシュ
ON/RC M1/1
ISO
250
ストロボ
UCS-Q1RC-WHT×2
撮影地
沖縄/粟国島
カメラ
OM SYSTEM OM-1
レンズ
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL8mmFishEyeF1.8PRO
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り値
F7.1
シャッター速度
1/250
ホワイトバランス
水中
仕上がり
水中
ハイライト&シャドーコントロール
HI 0,MID 0,SHA -3
フラッシュ
ON/RC M1/1
ISO
250
ストロボ
UCS-Q1RC-WHT×2
撮影地
沖縄/粟国島
これらの作品は今年の5月に撮影したものです。動きのあるワイドな被写体であるギンガメアジを、なるべく簡単にキレイに撮るための設定やコツをお伝えしていきます。
カメラの基本設定
まずは、カメラの基本設定から。すべてを書き出すことは記事のスペース上難しいので、重要なポイントをピックアップしてご紹介します。
今回の撮影では、ストロボはAOI社Q1RCを使うのでフラッシュRC(リモートコントロール)はONにセットします。OM-1でINONやSEA&SEAのストロボを使う場合には、フラッシュRCモードをOFFにセット。
ピクチャーモードとホワイトバランス
OM-1には水中専用のピクチャーモードとホワイトバランスがあるので、それを私は使っています。青被りを防いで発色の良い画像が手に入りますが、好みもあるのでその辺りは自由に選択ください。もちろんRAWデータをJPEG画像と一緒に記録するモードで撮影をして、撮影後にRAW現像を楽しむのも一つの手です。
AFモード
動きのある被写体を撮影していくので、迷わずC-AFを選択しましょう。シャッターボタンを半押ししている間、ピント合わせを繰り返してくれるので常に動いているギンガメアジの群れには最適です。被写体認識は入れなくてもOK。
AFターゲットモード
ワイド撮影なので、画面の全点を使いカメラに自動で被写体を選ばせたいところですが、AFエリアは全点を選定せずにカスタムで全点より一回り小さいエリアを設定しましょう。
全点を使わない理由は、水面や水底にあるコントラストの高いところにAFターゲットを持って行かれないようにするためなので、その部分を省いたエリアを作るのがコツです。要するに画面の端ギリギリには主要な被写体がないと言うことです。設定の仕方は下記になります。
撮影モード
撮影モードは、大きく分けて2種を使い分けています。
プログラムオート
まず、天候が良く、明るい水中で比較的流れがなく穏やかな海況であれば、順光環境に身を置いて自然光の要素をふんだんに取り入れて撮影します。その場合は、露出モードをプログラムオートに設定してフルオートの感覚でラクな撮影を楽しんでいます。露出補正で背景のブルーを調節して、ストロボはTTLオートを利用してカメラ側のフラッシュ補正で調光する、まるでTG-6を水中ワイドモードで使ったようなイージーな手法で楽しめます。
カメラ
OM SYSTEM OM-1
レンズ
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL8mmFishEyeF1.8PRO
撮影モード
P(プログラムオート)
絞り値
F6.3
シャッター速度
1/250
露出補正
-1.7EV
ホワイトバランス
水中
仕上がり
水中
ハイライト&シャドーコントロール
HI 0,MID 0,SHA -4
フラッシュ
ON/RC TTL AUTO
ISO
200
ストロボ
UCS-Q1RC-WHT×2
撮影地
沖縄/粟国島
カメラの設定は以下のとおりです。
この場合のダイヤルの設定はダイヤルに露出補正とフラッシュ補正を割り振ります。
撮影の手順としては、ギンガメアジの群れを見つけたら、モニターを見ながら背景の露出を決めていきます。親指側ダイヤルを操作して好みの背景色に仕上げます。露出補正値がマイナス側に大きくなるにつれ背景は濃いブルーになり、±0.0に近づくにつれて明るいブルーになります。アプローチを開始したら、試し打ちをしながらフラッシュ光量が過多にならないように人差し指側ダイヤルを操作。激しい逆光でなければ、失敗はないはずです。
マニュアル露出モード
水底から見上げるような逆光構図の場合にはフラッシュTTLオートが効きにくい状況になるので、次に説明するマニュアル露出モード&マニュアルフラッシュ発光を考えます。
カメラ
OM SYSTEM OM-1
レンズ
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL8mmFishEyeF1.8PRO
撮影モード
M(マニュアルモード)
絞り値
F6.3
シャッター速度
1/200
ホワイトバランス
水中
仕上がり
水中
ハイライト&シャドーコントロール
OFF
フラッシュ
ON/RC M 1/2
ISO
250
ストロボ
UCS-Q1RC-WHT×2
撮影地
沖縄/粟国島
もう一つの露出モードは、絞りとシャッタースピード、ISO感度をマニュアルで調整していくM(マニュアル)モードです。多くのハイアマチュアの方がこの手法を使っていますが、慣れないと操作が複雑に感じるとともに、失敗写真が大量に生まれることもあります。粟国島のダイビングは時に流れもあり、移動距離も長いので、カメラの操作以上にダイビングの技術も必要になってくることも少なくありません。そんな中でカメラの設定を調整することは、ちょっとハードルが高く感じるかもしれません。しかし、M(マニュアル)モードと言ってもシャッター速度と絞り値はさほど動かさずに固定して、明るさの調整はISO感度を上げ下げして背景の露出を決めていくので、慣れれば難しくない撮影手法です。
シャッター速度の設定はOM-1のX接点(※)である1/250。絞り値の設定は、早朝や雨天で水中が暗いならF4.0、曇天ならF5.6、ピーカンの晴天ならF8。ISO感度は、背景のブルーが好きな濃さになるところを探りましょう。おおよそISO100〜1000くらいとなります。ISOの変更は、コントロール画面から変更もできますが、レバーの設定を変えてダイヤルにISO感度を割り振る手もあります。どちらでもやりやすい方法を選びましょう。
※X接点=そのカメラの最速フラッシュ同調速度。エントリーレベルのカメラは1/160〜180、ハイスペックカメラで1/250
レバー2の時に人差し指ダイヤルをISO感度変更に設定する方法は以下の通りです。
これで、レバー1の時に親指側ダイヤルで絞り、人差し指側ダイヤルでシャッター速度、レバー2の時に人差し指側ダイヤルでISO感度の変更ができます。
露出モードマニュアルの場合には、ストロボの光量調整をTTLオートからマニュアル発光に切り替えて調整する方法も試してみましょう。ギンガメアジの群れを下から煽るように撮影するとTTL調光が効きづらくなります。そこで強制的に決まった光量を発光するように、カメラ側から信号を出してコントロールします。OM-1とQ1RCとの組み合わせなら、左右のストロボに手を伸ばして光量調整ノブを動かさずにカメラ上からRC(リモートコントロール)でストロボの光量をコントロールできます。これは便利な方法なので、使っていきたいテクニックです。
実際には、ストロボの発光量の調整をRCコントール画面でフラッシュボリュームコントロールをします。大雑把な感覚になりますが、被写体まで少し距離があり「フラッシュ光が届きにくいなぁ」と思ったら1/1。被写体に極接近していたら1/2。このように数値を選ぶと細かく発光量を変化させることが可能です。1/1=フル発光になりますが、1/2発光までは1/1.3、1/1.6と細かく発光量を変更することが可能。被写体を目の前にしてモニター上の数値を変える余裕がない場合には、親指側ダイヤルを操作して絞りを変える方法で、瞬時にストロボの光量を変えることもテクニックの一つになります。
ストロボのセッティング
今回、外部ストロボはAOI- Q1RCに最新型のドーム型拡散板を取り付けたタイプを使用しました。新しいドーム型拡散板「SD-02」は拡散率が大きいので、今までのストロボセッティングから少しストロボの向きを変更する必要があります。ノーマル状態のQ1RCであれば、レンズと同じ方向でしたが、そのセッティングだと中央部に光が集まりすぎてムラが出ます。そこで左右のストロボをやや外向きにセットします。
ギンガメアジの群れ全体にストロボ光を回すのはなかなか難しいですが、泳ぎながらの撮影になるのでアームのセットやストロボの向きが変わっていないか?光ケーブルが外れていないか?など基本的な失敗がないように気をつけます。また、粟国島ダイビングの独特なルールもあるので、エントリー前にガイドとの詳細な打ち合わせは必要です。夢中になりすぎて他の撮影者とクロスしたり、群れの中に強引に突っ込んだりしないように、一歩引いて俯瞰で周りを見渡す注意も必要になります。
粟国島のギンガメアジ撮影は、これからがピークの時期を迎えます。毎年7月上旬までは楽しめるので、エキサイティングな撮影を皆さんに楽しんでいただきたいです。私が所属する水中撮影教室でも毎週金曜日から月曜日の週末にかけて撮影ツアーを開催しています。興味のある方は是非お尋ねください。
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本連載では毎回記事掲載の次の日にインスタライブでみなさんの質問にもお答えしながら 解説していきます。今月は6月7日(水)の20:00からInstagramでライブを行います。最新情報をお届けしますので、皆さんのご参加ぜひお待ちしています。
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