ミラーレス一眼 水中撮影徹底ガイドby清水淳(第11回)

水中撮影機器メーカーAOIの2023年新作ハウジング、レンズポートとは? 水中写真家・清水淳が解説

この記事は約9分で読めます。

先月は、OM SYSTEM OM-1と外部ストロボを使ったワイド撮影について説明、解説をしました。今月は、先のマリンダイビングフェアで発表された、この春の新製品についてお話ししていきましょう。

「OLYMPUS EM-10Ⅳ」用の水中ハウジング「UH-EM10 Ⅳ」

コンパクトデジタルカメラでの水中撮影では圧倒的な人気を誇るTG-6からのステップアップとして、リーズナブルでコンパクトなミラーレス一眼の「OLYMPUS E-PL10」を今まではおすすめしてきました。しかし、メーカーの販売終了とともに市場在庫も薄くなった状況を受け、AOI社がミラーレス一眼「OM-D」シリーズに対応した後継機を発表しています。

カラーは全モデルの「UH-EPL10」同様、ホワイト(WHT)とブラック(BLK)の2色。大きさはほぼ同じですが、各所に改善が施されました。

UH-EM10Ⅳ-WHT

UH-EM10Ⅳ-BLK

全モデルがE-PL系のデジタルカメラだったのに対し、今回はOM-Dシリーズのデジタルカメラの水中ハウジングになりました。カメラ自体がランクアップしてEVF(液晶ビューファインダー)がなかったE-PLからEVF搭載のカメラになったので、ペンタ部分があるためにその分ハウジングが縦方向に大きくなりましたが、ほぼ同じ大きさと言っても良いレベルに仕上がっています。

UH-EPL10にはAEL&AFL(AEロック、AFロック)ボタンが装備されていませんでしたが、上級機同様にAEL&AFLボタンが追加装備されています。

UH-PL10に搭載されるマルチファンクションユニットには、ハウジング内の圧力をモニターするバキュームリークシステムと水分を感知するモイスチャーセンサー、そして外部ストロボをLEDで発光させる機能が搭載されています。前モデルではストロボのトリガー発光の取り出しのみが行われていた「外部ストロボシンクロLEDシステム」が、こちらの新機種ではOLYMPUS純正のRC(リモートコントロール)信号のコマンド発光に対応しています。その結果、OLYMPUS純正の水中外部フラッシュ「UFL-3」や、AOI社の水中ストロボ「USC-Q1RC」でのリモートコントロールのシステムが利用可能になっています。RCを使うとカメラが必要で十分な外部ストロボの発光量を自動調整してくれるので、失敗が少ないストロボ撮影が簡単にできるシステムです。マニュアル発光させる場合でもストロボに手を伸ばすことなく、カメラ上で細かくマニュアル発光量の調整が可能です。

他社の水中ハウジングでは、別売のオプションになっていることの多い「バキュームリークバルブ」、「バキュームポンプ」も製品価格に含まれる標準装備になっています。使い勝手は、ほぼ前モデルと同じと感じました。カメラの性能がアップしていることが違うくらいで、コンパクトで軽量なミラーレス水中撮影システムとしてこれからもユーザーに支持されていくことでしょう。

カメラに標準的にセットされることの多い「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mmEZ」レンズ用のレンズポート「FLP-06」とズームギア「AOI LG-OM-1442EZ」も標準装備としてセット販売されるので、追加購入する物がほとんどいらない親切な商品と言えます。ブラケットと外部ストロボのみ用意すれば、即水中撮影が可能です。

簡単なスペックをピックアップすると

カメラ

OM SYSTEM OM-1

製品名

UH-EM10Ⅳ

対応カメラ

Olympus OM-D E-M10 Mark IV

材質

ポリカーボネイト

耐水圧

45m

レンズポートサイズ

OLYMPUS PENポートシステム

LED外部ストロボトリガー

OLYNPUS RC (TTL AUTO, MANUAL, FP TTL AUTO, FP MANUAL)
マニュアル発光トリガー(プレ発光キャンセル)

マルチファンクショユニット

バキュームリークセンサー
モイスチャーセンサー
外部ストロボ同調LED発光

電源

Built-in Rechargeable Lithium Polymer Battery (3.7V)

充電時間&バッテリーオペレーション時間

By USB Charger DC5V、 0.5A (not included)Approx. 1.5 Hours for a full charge

バッテリーオペレーション時間

Approx. 2 Days (Based on 3 Dives/Day and 1 Hour/Dive)

重量

835g(陸上値、レンズポートを含む)

サイズ

177.9mm (W) x 139.8mm (H) x 151.2mm (D)

価格

¥138,000(税別)

このハウジングを使った作例はこちらです。

カメラ

OLYMPUS E-M10Ⅳ

レンズ

M.ZUIKO DIGITAL 14-42mmF3.5-5.6EZ

撮影モード

P(プログラム)モード

絞り値

F5.6

シャッター速度

1/80

ISO感度

IS0400

露出補

±0.0EV

フラッシュ

OFF

LEDライト

RGBLUE SYSTEM02 TWIN LIGHT PC

ブラケット

MPBK-03

撮影地

沖縄本島/名護市

OM SYSTEM OM-5用の水中ハウジング「UH-OM5」

次の製品は、昨年秋にデビューしたOM SYSTEM OM-5用の水中ハウジング「UH-OM5」です。2022年11月にこちらの連載で皆さんにお伝えしたOM-5のカメラインプレッションでは、前モデルのOLYMPUS EM5 MKⅢとOM SYSTEM OM-5のボディサイズが同じなので、E-M5MKⅢ用のハウジング「UH-EM5Ⅲ」を流用して制作したインプレッションでした。しかし、ついにOM-5用のハウジングとして「UH-OM5」が発表になりました。

というわけで、このハウジングは新発売のカメラOM-5と、従来機であったE-M5MKⅢの両方のカメラに対応することになります。名前が似ているので紛らわしいですよね。

今回のマイナーチェンジでは、ハウジングの材質がスケルトンのブラック樹脂になりました。ハウジング内が透けて見えるわけです。ユニークなデザインで、今までにない画期的なハウジングといえるでしょう。材質以外でのポイントは、外部フラッシュのLEDコマンダー「STR-04」がRC対応になって、「STR-05」として標準装備になった点です。以前はカメラの同梱フラッシュFL-LM3をカメラに取り付けて発光させるか、マニュアル発光のみ対応のLEDコマンダー「STR-04」を装着する方法でした。しかし今回同梱される「STR-05」によりトリガーフラッシュのチャージ待ちが必要なくなり、リチャージタイム0.8秒のQ1RCの性能をフルに活かしたRC発光システムが使用可能になったのは、すごく嬉しいことです。このRC対応のLEDコマンダー「STR-05」は、時期を見て単独での販売もあるとの情報を得ていますので、旧型のUH-EM5MKⅢユーザーの方にも朗報といえます。

FL-LM3装着時

STR-05装着時

  
簡単なスペックをピックアップすると

製品名

UH-OM-5

対応カメラ

Olympus OM-D E-M5 MarkⅢ、OM SYSTEM OM-5

材質

ポリカーボネイト

耐水圧

60m

レンズポートサイズ

OLYMPUS OM-Dポートシステム

LED外部ストロボトリガー「STR-05」

OLYNPUS RC (TTL AUTO, MANUAL, FP TTL AUTO, FP MANUAL)
マニュアル発光トリガー(プレ発光キャンセル)

マルチファンクショユニット

バキュームリークセンサー
モイスチャーセンサー

電源

Built-in Rechargeable Lithium Polymer Battery (3.7V)

充電時間&バッテリーオペレーション時間

By USB Charger DC5V、 0.5A (not included)Approx. 1.5 Hours for a full charge

バッテリーオペレーション時間

Approx. 100hours

重量

1340g(陸上値)

サイズ

206.20mm (W) x 181.70mm (H) x 113.55mm (D)

価格

¥178,000(税別)

OM SYSTEM 90mmMacroF3.5用レンズポート

次は2023年の2月にはOM SYSTMから発売になったOM SYSTEM 90mmMacroF3.5用のレンズポートの情報です。現在開発も終わり発売がインフォメーションされていますが、まだ私の手元には到着していません。

到着次第、詳しい情報をお知らせしますが、レンズを収納するシステムとしては、既に用意されているレンズ延長ポート「ER-PEN_OD-37」に新設計の延長型レンズポート「FLP-08」を併用することで、超望遠マクロレンズである90mmマクロレンズが収納可能となります。OM-1を使用される場合にはこのER-PEN_OD-37とFLP-08の組み合わせでハウジングに装着していきますが、EM-5MKⅢ、E-M1MKⅡユーザーの方はハウジング側のマウントをOM-D対応に変換する必要があります。そのため、マウント変換アダプター「AD-LP-01」も追加で必要になります。フォーカスギアはER-PEN_OD-37のギアとダイヤルを利用して駆動させる「LG OM2-90Macro」が準備されるようです。実機が手に入り次第、詳しくお伝えしますね。

製品名

FLP-08

対応レンズ

OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO

セットアップ例/PENマウント

ER-PN_OD-37 + FLP-08

OM-Dマウント

AD-LP-01 + ER-PN_OD-37 + FLP-08
(注意ハウジングにレンズリリースボタンがないハウジングには注意が必要です)

材質

硬質アルマイト加工耐食アルミ合金

耐水圧

60m

重量

320.2g(陸上値)

サイズ

111.5mm (D) X 98mm (H)

価格

¥59,800(税別)

90mmMacroレンズを収納するためにはこの新しいFLP-08を利用する以外に、既存の延長ポートを連結して使用できることも確認できています。しかし、この方法だとフォーカスギアの使用はできません。その代わり、スリムでコンパクトなレンズポートになります。OM SYSTEMの新しいこのマクロレンズは、OM-1で使用する場合にはオートフォーカスの性能が高く、高速で正確なピント合わせで撮影ができます。30mmMacro、60mmMacro、この90mmMacroのどのマクロレンズを使ってもOM-1との組み合わせでは、私の場合、フォーカスギアは使用していません。AFロックやMF切り替えなどと組み合わせて快適なピント合わせが可能です。

既存のレンズポートを組み合わせた90mmMacroポートの例
ER-PN_PN-24×2,ER-PN_PN-34×1,FLP-04×1(UH-OM1の場合)

今回は速報として3つの新しいミラーレス用の機材をご紹介させていただきました。

発売時期、価格などは下記にお問い合わせください。
▶︎AOI製品お問い合わせフォーム

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4月26日(水)20:00〜
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writer
PROFILE
1964年生まれ。水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影を行ないながら、沖縄・那覇にて水中写真教室マリーンプロダクトを主宰。 また、カメラメーカーの研究開発にも携わり、水中撮影モードや水中ホワイトバランスの開発アドバイザーも務める。1998年にデビューしたOLYMPUS C900Zoomから最新機種まで全てのOLYMPUS水中モデルのチューニングテストを行なっている。カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーメーカーのアドバイザーやテスト撮影の要望も多い。執筆活動では、水中撮影機材の解説や撮影の仕方、楽しみ方の記事をPADI Japan/デジカメ上達クリニック、OMDS/水中デジタルカメラ・インプレッション、マリンダイビング.ウェブ/水中デジカメ撮影教室、オーシャナ/カメラレビューを現在連載中。最近では、「清水淳のマンツーマン水中写真教室」が好評いただき熱意あふれるフォトグラファーたちと一緒に撮影をしている。
公式ホームページ https://shimizu.marine-p.com/ 公益社団法人日本写真家協会会員。
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