ミラーレス一眼OLYMPUS PENの新型EPL-10用ハウジングセットアップ解説
操作が手軽なのに、一眼レフ譲りの画質の高さを誇るミラーレス一眼。手の届きやすい金額ですし、コンデジからもう少しステップアップしたい方におすすめしたく、ミラーレス一眼徹底解説の連載を始めました。初回はデジタル一眼レフ、ミラーレス一眼、コンデジの違いについて、2回目は「撮影用LEDを併用したワイド撮影」、3回目は「撮影用TWIN LEDライトを使ったマクロ撮影」について解説しました。
コンパクトで購入コストのハードルも低く、それでいて操作も簡単なミラーレス一眼ですが、水中での撮影がますます楽しくなる「EPL-9/10」のハウジングに新型が出ました。
今回は意外
と問い合わせの多いセットアップについて。この新型ハウジング「AOI UH-EPL10R」と「AOI USC-Q1RCストロボ」を新品の箱から出して組み上げていく過程を解説します。
目指すはUH-EPL10ワイドシステム清水スペシャル。
新型ハウジング「AOI UH-EPL10R」の特徴
「AOI UH-EPL10R」は今話題の小型軽量ハイパワーのリモートコントロール型水中ストロボ「AOI USC-Q1RC」のリモートコントロール(RC)に完全対応したOLYMPUS E-PL10/9用のハウジングです。外観はまったく変わらないように見えますが、ハウジング内部のコントロール基盤がRC対応型にアップデートしました。今までマニュアルでのストロボ調整しかできなかったE-PL10も、カメラのオート機能で露出をコントロールさせながら、ストロボの光量調整もTTLオートと、ストレスフリーでできるようになりました。TGシリーズのような簡単な撮影手法で水中撮影が楽しめます。
その前に、新型ストロボAOI USC-Q1RCとカメラとストロボが通信をしながら発光量をコントロールするRC(リモートコントロール)システムについて簡単に解説します。
AOI USC-Q1RCストロボ
OLYMPUS製カメラに自動調光対応、複雑な操作不要で水中撮影が楽しめるストロボです。多くのダイバーが愛用する”TGシリーズ”にももちろん対応、本格的なミラーレス機ならシャッター速度1/4000でのシンクロも可能と超高性能。OLYMPUS独自のRCフラッシュシステムに準拠したAOIの「RCモード」が、光量を確実にコントロールします。小型のボディながら、光量はガイドナンバー22。フル発光時でも0.85 秒でチャージが完了するため、シャッターチャンスを逃さず撮影が行えます。また撮影用としても機能する大光量のLEDライトを搭載しているので、接近撮影時にはLEDライトを光源に、スチール撮影・ムービー撮影ができます。1台で2役をこなす頼もしいストロボです。「水中ストロボ撮影に興味はあるけど難しそう」とためらっている”TGユーザー”にもオススメの1台です。ボディカラーはホワイトとブラックの2色。
1. RCシステムで発光コントロール
2. GN22の大光量
3. 大容量リチウムバッテリー
4. リサイクルタイム0.85秒
5. 大光量LEDライト搭載
6. カラーバランスの整った発光色温度
7. モデリング発光
8. 画期的なスヌート撮影機能
RC(リモートコントロール)システム
UCS-Q1RCは、OLYMPUSのデジタルカメラに搭載された「ワイヤレスRC フラッシュシステム」に対応した水中ストロボです。光量調整や発光モードの選択などをストロボ側で行わず、すべてカメラ側で操作が可能。撮影中にストロボに手を伸ばす必要がない、画期的なシステムです。
「RCシステム」は、レンズを通った明るさからカメラが発光量を自動的に制御する調光モード。カメラ側でデジタル光信号によって発光をコントロールできるため、一般的な水中ストロボのTTL調光に比べ、より正確に光を制御できます。“失敗しないストロボ”と言っていいでしょう。
もちろん、発光/非発光の選択やマニュアル操作で光量をコントロールすることも可能。カメラと連動したTTLオート撮影だけでなく、TTLオート撮影時の発光量の補正をカメラ側で調整することもできます。さらに、OLYMPUSの従来モデルの水中ストロボ・UFL-3では対応していなかった高速シンクロ(FP発光)にも対応しています。
これから組み上げるシステムを一堂に集めてみました。
ハウジングの箱を開けると、中身はこんな感じ。
ハウジングの組み立て
まずはハウジング自体の組み立てから行います。
ハウジングから標準ポートを外す
ハウジングとベルトレンチを用意します。ベルトレンチはAOI純正品「AOI PR-01」が別売で用意されていますが、ホームセンターなどでも入手可能です。
PORT RELEASEボタンを押して、正面から見て半時計方向へ回す。結構硬く外れにくいので慣れも必要。
フィッシュアイレンズ用のポートを装着
ワイド撮影に欠かせないフィッシュアイレンズを付けるためのポートを装着します。LUMIX G FISHEYE 8mm F3.5にはAOI DLP-05がフィット、OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL8mmFISHEYE F1.8の場合にはAOI DLP-05+ER-PN_PN-24の組み合わせになります。OLYMPUS純正フィッシュアイはLUMIXに比べてレンズ長が長いので、中間に延長ポートが必要になるわけです。
バッテリーチャージ
陸上でハウジングの水没チェックができるリークセンサーを使用するには、充電が必要です。通常ボタン電池を使用しているハウジングが多い中、タイプCケーブルで充電ができるようになっています。
約1.5時間で充電完了。バッテリーがフル充電されていれば、2日間作動します。
メンテナンス・動作確認
リークセンサーが動作するか確認をしましょう。同時にハウジングのメンテナンスも行っていきます。
ここまで行ったら、リークセンサーの動作確認をしましょう。リークセンサーは、カメラの水没をチェックする仕組み。陸上ではハウジングの空気を抜いて圧力を下げ、その状態でも外から空気が入ってこないかをセンサーが検知することで、水没しないか確かめることができます。
・ポンピング前はブルーの点滅
・ポンピングをしていくと黄色の点滅に変わる
・適正圧力になると黄色点灯
・黄色と赤の交互点滅は脱気しすぎのため、ポンプを外して赤いバキュームリリースバルブを半時計方向へ少し回して圧力を逃す
・黄色点灯になるとバキュームアナライジングが始まる
・3分間の計測で問題がなければ緑の間隔の長い点滅に変わる
この後カメラの電源をパワーOFFするとバキュームセンサーもモイスチャーセンサーも一時休止し、消費電力が抑えられます。そして、カメラの電源を再びパワーONすると、ハウジング内のバキュームセンサーとモイスチャーセンサーが働き始めます。賢いシステムです。
ブラケットの組み立て
ハウジングやストロボを取り付けるためのブラケットを組み立てていきます。まずは、ブラケットにMPダイレクトベースを接続します。
基本的に水中で使用するネジにはグリスを塗布します。腐食したり、固着して外れなくなるのを防ぐ効果があります。
次にクランプの準備です。
クランプは、使用前に一度すべて分解して、ネジ部にグリスを塗布します。ネジの雄側、雌側共に爪楊枝を使って塗布しましょう。グリス切れすると摩耗、腐食、固着が起きるので使用後に分解して洗浄&グリスアップが必要です。
ハウジングとブラケットの接続
ブラケットの準備ができたら、ハウジングをブラケットに装着します。
ストロボのセッティング
次にストロボのセッティングを行いましょう。
バッテリーは専用バッテリーを専用充電器で充電して使用します。特殊バッテリーで指定バッテリー以外は使用できないので注意。
電池を入れる前に、OリングリムーバーでOリングを外し、Oリング溝とOリングを清掃しましょう。ストロボのOリングにはグリスを米粒大2個程度塗布。回転して固定するキャップなのでやや多めに塗りましょう。
専用バッテリーを装填しましょう。
電池を入れたらダイヤルの位置をRCにセット。ボタン右、左共に一緒に長押しするとパワーON、左ボタン長押しでパワーOFFとなります。左ボタンを押すとLEDライト25%パワー、もう一度押すとLED50%パワー、もう一度押すと、LED100%パワーに点灯します。もう一度押すとLEDがOFFになります。
右ボタンのLEDはバッテリー残量のインジケーターになります。グリーン点灯は50%〜100%、黄色点灯は49%〜25%、赤色点灯24%〜10%、赤色点滅は10%以下。
一回の充電で1500回のフル発光が可能。今まで毎日電池交換を行っていましたが、このQ1RCなら3日に一度でもOK。フル発光時のリチャージタイムは0.85秒なので、シャッターチャンスに相当強いです。テニスボール2個程度の小さなボディにパワーとインテリジェンスが詰め込まれています。
ハウジングとストロボの接続
このUH-EPL10Rはハウジング内のLEDを使ってストロボへ信号を送ります。ただ単に光らせるだけではなく、RC(リモートコントロール)で1回の撮影で複数回ストロボを発光させるので、細くて貧弱な光ファイバーケーブルは使用できません。613芯のマルチコア方式の光ファイバーケーブルを使用しなければなりません。
あとはそれぞれをクランプとアームで接続すればOKだ。
水中向けカメラのセットアップ
最後にカメラの水中撮影向けのセットアップを紹介します。
カメラのセッティングを確認しやすくする
「ライブビュー・スーパーコントロール・パネル」をONにすることで、OKボタンを押したときにカメラ内のセッティングが一目でわかるように表示させることができます。
メニューボタンを押して歯車のCを呼び出す。
リモートコントロールをONにする
E-PL10/9でQ1RCを同調させるにはRC(リモートコントロール)をONにセットする必要があります。このRCコントロールパネルは、撮影時にOKボタンを押してスーパーコントロールパネルを表示させた状態でINFOボタンを押すと表示されます。
これで、TGシリーズの操作と同じように露出補正とフラッシュ補正の2つの光の量を簡単にコントロールできるようになりました。
そのほか、簡単に水中撮影を楽しむには以下の設定をおすすめしています。
撮影モード:P(プログラムオート)
ホワイトバランス:オートホワイトバランス
ISO:オート
オートフォーカス:S-AF
AFエリア:全点
セットアップは完了しましたか?次回はこのシステムを使って実際に水中撮影を楽しんでいく様子をお届けします。
インスタライブで詳しく解説!
本連載では毎回記事掲載の次の日にインスタライブでみなさんの質問にもお答えしながら解説していきます。
日時:9月28日(水)20時〜
インスタライブは終了しました。たくさんのご視聴ありがとうございました。
アーカイブはこちらから↓
↑フォローしておくと見逃しません↑
ミラーレス一眼 水中撮影徹底ガイドby清水淳(連載トップページへ)
- デジタル一眼レフ・ミラーレス一眼・コンパクトデジカメの違いとは?
- 水中撮影にミラーレス一眼は本当に良い?初心者スイカが試した感想と清水氏の解説
- ミラーレス一眼で水中マクロ撮影にチャレンジ!操作は手軽、画質もキレイ、苦労した点は?
- ミラーレス一眼OLYMPUS PENの新型EPL-10用ハウジングセットアップ解説
- 【決定版】ミラーレス一眼「OLYMPUS PEN E-PL 9/10」を水中撮影に使う時のカメラの設定を徹底解説
- 【新製品レビュー】11/18発売ミラーレス一眼OM SYSTEM OM-5を水中撮影レビュー
- ミラーレス一眼OM-1に任せてメキシコ・セノーテを撮影! 作例&撮り方大公開
- ミラーレス一眼「OM SYSTEM OM-1」の水中マクロ撮影
- ミラーレス一眼でホエールスイム撮影! OM SYSTEM OM-1を使用した撮影システム、設定、コツを紹介
- ミラーレス一眼「OM SYSTEM OM-1」の水中ワイド撮影
- 水中撮影機器メーカーAOIの2023年新作ハウジング、レンズポートとは? 水中写真家・清水淳が解説
- ギンガメアジの群れ@粟国島を簡単キレイに撮影するには? 清水淳が徹底解説
- 絶景!渡名喜島の緑の絨毯とオレンジ色の小さな魚の群れをミラーレス一眼で撮影解説
- 初めてのミラーレス一眼におすすめのOLYMPUS EM-10MarkⅣとAOIのNEW水中ハウジング使い方徹底解説
- 水中マクロ撮影ビギナーにおすすめのマクロレンズと撮影方法 ミラーレス一眼徹底解説
- GoPro用マクロレンズ「AOI UCL-03」が登場 GoPro水中撮影は新たな領域へ!
- 動きが速い被写体のマクロ撮影〜マシンガン・マクロシューティング〜
- AOIの新製品情報 メタル製GoProケース他2点を水中写真家・清水淳が解説
- ミラーレス一眼被写体別撮影テクニック「ウミウシ」の撮り方 前編
- ミラーレス一眼被写体別撮影テクニック「ウミウシ」の撮り方 後編
- ミラーレス一眼被写体別撮影テクニック「ニシキテグリ」[前編]
- OM SYSTEM 「OM-1」と「OM-1MarkⅡ」 水中撮影での進化徹底解説
- ミラーレス一眼被写体別撮影テクニック「ニシキテグリ」[後編]
- ミラーレス一眼被写体別撮影テクニック「ケーブ撮影の楽しさ」
- STOP! 水没ミラーレスハウジング 修理依頼から考えるメンテナンスのコツ
- アクションカメラ×AOI UWL-03ワイドレンズ水中撮影レビュー! 最新GoPro、Insta360など4機種比較