ミラーレス一眼OM-1に任せてメキシコ・セノーテを撮影! 作例&撮り方大公開
10月5日発売になったOM SYSYTEM OM-1の専用ハウジング「AOI UH-OM-1」と2022年3月に発売されたミラーレス一眼カメラ「OM SYSTEM OM-1」を持って、新型コロナウイルスのパンデミック前まで私のライフワークにしていたメキシコ・セノーテの水中撮影を再開してきました。セノーテには十数年前に当時のOLYMPUS新製品の広報用撮影で初めて訪れて以来、すっかり心を奪われてしまい、毎年数度通うようになっていました。歴代のOLYMPUSミラーレス機でセノーテを撮影していたので、性能が一段とアップした新型のOM-1での撮影をすごく楽しみにしていました。
今回はOM-1とAOI UH-OM-1の組み合わせで、簡単手軽にセノーテを撮影するセットアップや撮影のコツをお伝えしながらレビューをしていきます。
セノーテダイビングとは?
日本からの海外渡航の制約もようやくハードルが低くなってきた12月4日に沖縄を出発。現地メキシコのプラヤデルカルメンまで約2日間の移動でした。プラヤデルカルメンをベースに日本人インストラクター松永さんが経営されている「イグアナダイバーズ」にケアしていただき、6日間撮影してきました。
「セノーテダイビング」には、あまり馴染みがない方も多いかもしれませんね。セノーテは、メキシコ随一のリゾート地・カンクンがあるユカタン半島にあります。石灰岩地帯に見られる陥没穴に地下水が溜まった天然の泉で、ユカタン半島には4,000~5,000ほどのセノーテがあると言われています。
ユカタン半島には川が少なく、雨が降ると水が地下に浸透して、地下水脈となって海に流れ出ていきます。長い年月の間に地下水脈内の空洞が鍾乳洞化していき、海水面が上下することなどで地面が陥没すると、そこに水が溜まり水中鍾乳洞となります。この場所でダイビングをするのがセノーテダイビングです。説明が短すぎて乱暴ですが、興味がある方は調べてみてください。
水温は一年を通して平均25度前後。我々一般ダイバーが行動するエリアは、開口部周辺で、激しい流れはなく、水面が開けている場所でのみ楽しみます。狭いトンネルの中を人がやっとくぐり抜けるような場所には行きません。
セノーテは淡水ダイビングなので、海水と違って塩のベトベト感がなく、概して透明度が高く、100mに達する場所もあります。
ダイビングする際は一人のガイドに対し4名までのゲストダイバーで1チームになり、あらかじめポイントに敷設されているガイドラインに沿って一列に並んでコースを進みます。
作品
セノーテは大きく分けると3つに分類できます。そしてそれぞれに合った撮影パターンがあります。
①横穴系。横穴の大きなトンネルを進んでいき、陥没した部分に地表から差し込む光を狙うパターン。
②竪穴系。開口部から縦に長く差し込む光の束を狙って撮影するパターン。横に広がっているセノーテと違い、縦に広がっているので水深も十分に取れます。
③浅い大きな池のような場所で、水草や水中から見上げる地表の景色を狙うパターン。
それではまずは「①横穴系」の作品を見ていただきましょう。
①横穴系の作品
セノーテ
タージマハ
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-1.7EV
絞り値
f1.8
シャッター速度
1/30
ホワイトバランス
CWB(4200K)
ISO感度
AUTO(1250)
フォーカスモード
S-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-1
撮影初日で、撮影者もモデルさんも浮力調整が決まらずブレが出やすい状況でした。できる限り明るい場所で、奥行きが出やすい環境を探して撮影するように気を付けています。
セノーテ
タージマハ
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-1.7EV
絞り値
f1.8
シャッター速度
1/30
ホワイトバランス
CWB(4200K)
ISO感度
AUTO(400)
フォーカスモード
S-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-1
海でのダイビングでは水中ホワイトバランスを使うことが通常ですが、横穴系のセノーテはカスタムホワイトバランスで冷た目に調整します。オートホワイトバランスを使うと、カメラがホワイトバランスをコロコロ変えてしまい、露出の決定に差し障りが出ることが多いので、そのようなテクニックを使います。
浮力の調整が完璧に決まってくるまでは、撮影者も水中でピタっと止まれずカメラが動きブレがでます。モデルさんもトリムが決まらないとフィンを始終動かすことになり、被写体ブレが出てきます。そのため、初日、2日目はISO AUTOの設定を200-6400、ターンニングポイントを1/30と比較的速い速度で感度アップするように設定しています。ダイビングに慣れてきた3日目からはISO AUTO設定を200-6400、1/15としています。
セノーテ
ドスオホス
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-2.0EV
絞り値
f1.8
シャッター速度
1/30
ホワイトバランス
CWB(4200K)
ISO感度
AUTO(4000)
フォーカスモード
S-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-1
撮影2日目。大好きなセノーテ・ドスオホスでの撮影。
初日に洞窟の奥の暗いエリアでの撮影であまりにもブレがひどかったので、この日はISO感度の上限を12800に設定してみました。しかしノイズが目立つ仕上がりになったので、再度上限を6400に戻して撮影することに。OM-1とM.ZUIKO DIGITAL8mmFisheyeとの組み合わせで、最大6.5段の手振れ補正が有効な点に期待を込めました。AFの設定も通常の海ではC-AFを使っていますが、今回は正確にピントをじっくり拾う手法でS-AFに設定しています。
セノーテ
ドスオホス
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-2.0EV
絞り値
f1.8
シャッター速度
1/13
ホワイトバランス
CWB(4200K)
ISO感度
AUTO(4000)
フォーカスモード
S-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-1
ガイドラインに沿って一列に並んで進んで行く様子がわかるシーン。3年前にOLYMPUS E-M1MKⅡで同じシーンをISO6400で撮影した際はシャドウ部にノイズがたくさん見えていましたが、OM-1ではほぼ見られません。
次に竪穴系の作品を紹介しますね。
②竪穴系の作品
セノーテ
アンヘリータ
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-1.0EV
絞り値
f1.8
シャッター速度
1/15
ホワイトバランス
CWB(4200K)
ISO感度
AUTO(800)
フォーカスモード
S-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-1
撮影ライト
RGBlue SYSTEM02 プレミアムカラー×2
水深30m付近には淡水と海水の境目があり、そこへ水面から落ちて腐った流木が硫化水素の雲を作るという不思議な景色に出会えます。RGBlueのスポットビームの効果が発揮されるシーンになりました。
セノーテ
ピット
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-2.0EV
絞り値
f1.8
シャッター速度
1/13
ホワイトバランス
CWB(4200K)
ISO感度
AUTO(1250)
フォーカスモード
C-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-3
竪穴系のセノーテ撮影では暗部の階調が大きく出るように、ハイライト&シャドウコントロールのシャドウ側を少し暗めに設定しました。画面中に輝度が高いポイントがいくつも点在するAFのコントロールが難しいシーンです。AFターゲットを5点に設定して、ピントを拾いたいポイントを直接指示します。
中層にピタッと静止してカメラの位置を変えずに、少しずつ動くモデルさんの動きを追従するようにC-AFを選択しています。
セノーテ
マラビージャ
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-1.3EV
絞り値
f1.8
シャッター速度
1/15
ホワイトバランス
CWB(4200K)
ISO感度
AUTO(800)
フォーカスモード
C-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-3
今回の撮影で一番のお気に入りの作品です。竪穴タイプのセノーテの中でも入口が狭くて中が広く深いので、夏至の時期でなくても光の束が垂直に近く落ちているように撮影できる場所です。水深も深く、長時間の撮影になることが予想されていたので、呼吸ガスは32%のナイトロックスを準備していただきました。安全と快適性をキープしていただいた「イグアナダイバーズ」さんに感謝します。
セノーテ
マラビージャ
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-2.7EV
絞り値
f1.8
シャッター速度
1/40
ホワイトバランス
CWB(4200K)
ISO感度
AUTO(200)
フォーカスモード
S-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-1
モデルさんにカメラを渡し、清水を撮影してもらいました。今回新しいサイドマウントのBCを持っていきました。イグアナダイバーズのオーナー松永さんは、本格的なケーブダイビングのインストラクターなので、いろいろとアドバイスをいただきました。
浅い池のようなセノーテの作品も紹介しますね。
③水面から地表の景色を映した作品
セノーテ
カーウォッシュ
撮影モード
P(プログラムオート)
露出補正
-0.7EV
絞り値
f3.2
シャッター速度
1/200
ホワイトバランス
水中ホワイトバランス
ISO感度
AUTO(200)
フォーカスモード
S-AF
ハイライト&シャドウコントロール
Hi:0,Mid:0,Shd:-1
撮影ライト
RGBlue SYSTEM02 プレミアムカラー×2
水中から見上げた陸上の風景が不思議感たっぷりに仕上がりました。波がないので水中から陸上の様子がはっきりとわかります。手前の赤い花みたいなものはハスの葉っぱです。RGBlueの広角系ライトSYSTEM02 プレミアムカラーを全力照射させて色を出しています。逆光になるシーンなので暖色系のライトを使わないと発色が豊かになりません。このシーンではホワイトバランスをオートにしています。
撮影に使ったシステム
撮影システムその①
自然光のみの場合はこのコンパクトなセットを持っていきました。軽いので片手で持って撮影が可能です。TG-6にワイドコンバージョンレンズをセットしたシステムをひと回り大きくした感じです。
カメラ
OM SYSTEM OM-1
レンズ
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL8mmFisheyeF1.8
ハウジング
AOI UH-OM-1
レンズポート
AOI DLP-05+ER_PN-PN-24
ブラケット
MPBK-02
撮影システムその②
被写体にライトを当てて露出や発色を上げたい撮影をする場合にはこのシステムを使います。何度も通っているセノーテであれば、どんな撮影システムを持っていけば良いのか予測がつきますが、何が出てくるかわからない場合にはこのセノーテ用フルセットを準備します。
というわけで通常はこのセットを組んでいきます。
カメラ
OM SYSTEM OM-1
レンズ
OLYMPUS M.ZUIKO DIGITAL8mmFisheyeF1.8
ハウジング
AOI UH-OM-1
レンズポート
AOI DLP-05+ER_PN-PN-24
ブラケット
MPBK-02
アーム
MPアーム2Lセット&MPフロート
ライト
RGBlue SYSTEM02:re プレミアムカラー×2
照明機材
2種類のライトを準備しました。一つ目は被写体に光を当てて露出を満足させたり、発色を良くさせたりする目的の広角系の撮影用LEDライト。もう一つは暗いセノーテで、スポット光を照射させて効果を得るためのスポットビーム系のLEDライトです。
セノーテの中では、ほぼ自然光撮影になります。ただし、自分の位置を示すためにライトは常時点灯させる必要があります。その場合に広角系大光量LEDを点灯させたままにすると、明るすぎて残念な結果にしかなりません。そのため、常時点灯用にはスポット光のLEDを携行します。
モデルさんはスポット光のLEDを手に持っていきますが、私はカメラを持っているので、常時点灯用のこのLEDライトはBCに着けて下げておきます。さらにバックアップの小型LEDライトも準備しています。
広角系のLEDライト
広角系のLEDライトには「RGBlue SYSTEM02:re PREMIUM」を持っていきました。
演色性が高く、無機質になりやすいセノーテでも暖色系のライティングが得られます。最小光量だと1000分、全力でも120分の連続点灯が可能な大容量バッテリーですが、水中重量が大きいので着脱式のフロートシステムを装着しました。
スポットビーム系のLEDライト
スポットビーム系のLEDライトは「RGBlue SYSTEM02:re SPOT BEAM」です。
バッテリーの大きさで2タイプ選べます。今回は両方持っていきました。
モデルさんに持っていただいて強烈なビーム光をダイビング中照射させるなら、大型のタイプが良いか?と考えていました。しかし一日2ダイブであれば、小さなタイプでも十分に間に合いました。
カメラの設定
セノーテの撮影は少し特殊です。ほぼ自然光での撮影になり、真っ暗な所もあれば、地表の開口部から強烈な光が差し込み非常に明るい環境もあります。シーンに合わせていちいち設定を変えなくてもきれいに撮れるように、絞りもシャッター速度もISO感度も、すべてカメラに任せる設定を選びカメラに仕込みます。
代表的でキーになるセットアップを抜き出して紹介します。
撮影モード
P(プログラムオート)
ISO感度
AUTO(200~6400)
AFモード
S-AF
ドライブ
シングル
フォーカスエリア
C1(カスタムで全点とLARGEの中間程度をセット)
ホワイトバランスはCWB/4200K,AWB,水中WBを使い分け、撮影時に明るさを調整する際は露出補正で行います。
というわけで、ザックリとセノーテで撮影したハイライトを見ていただき、撮影システムや設定について解説させていただきました。前モデルE-M1MKⅡに比べて容積的にも重量的にもコンパクトになり、長い階段の昇り降りにカメラを持っていくダイバーには優しくなったOM-1の撮影システム。
感度的には、大判プリント向けにISO6400が無理なく使えて、InstagramやFacebookなどのSNSがメインの発表の場所ならばISO12800も十分に機能します。難しい手法を使わずに、簡単にハイクオリティな作品を残せる“魔法のカメラ”といえるでしょう。
海外撮影となると、飛行機搭乗時の手荷物の重量制限があるため、撮影機材が小型で軽いもののほうが助かります。コンパクトなマイクロフォーサーズの最新型ミラーレス一眼は、いろいろな意味で可能性が広がると実感しました。
撮影時の細かいテクニックは、インスタライブで紹介していきますのでそちらもお楽しみに。
インスタライブで詳しく解説!
本連載では毎回記事掲載の次の日にインスタライブでみなさんの質問にもお答えしながら解説していきます。
お世話になったダイビングサービス
イグアナダイバーズ
メキシコ・プラヤデルカルメンにある日本人スタッフ常勤のダイビング・シュノーケルサービス。オーナーの松永さんはセノーテダイビングの専門インストラクター資格を保持する本格派。セノーテ撮影ならイグアナダイバーズにご相談されることをおすすめします。(清水)
E-MAIL:info@iguana-divers.com
TEL:+52-1-984-146-5114
HP:https://www.iguana-divers.com
Facebook:https://www.facebook.com/iguanadivers
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