世界最小・最軽量のフルフレームが水中へ ― SONY α7CⅡ × AOI UH-A7CⅡで挑むチューク沈船 ―
ソニーα7C II専用に開発された、コンパクトかつ最軽量のフル機能水中ハウジング「AOI UH-A7C II」が、この秋いよいよ登場した。小型ボディながら、フルフレームの性能を余すことなく引き出すこの新モデルは、水中写真家が求めてきた「機動力と表現力の両立」を実現。プロの撮影現場で磨かれたノウハウを凝縮し、信頼性と操作性を高次元で融合させたハウジングだ。
「AOI UH-OM-1」で高く評価されたバキュームリークシステム、モイスチャーセンサー、HSS対応ストロボLEDを一体化したマルチファンクションユニットを継承。さらに今回は、カメラとハウジング間の信号伝達を完全コードレス化。セッティング時間を大幅に短縮し、より直感的な操作を可能にした。
さらには、標準ズームキット「FE 28–60mm F4–5.6」にも完全対応し、レンズポートとズームギアを標準装備。購入後すぐに本格的な水中撮影を始められる完成度を誇る。この「キットレンズでどこまで表現できるのか」というテーマについては、2025年6月公開の記事で詳しく検証しているので、そちらも是非チェックしていただきたい。
そして今回のテストでは、この「UH-A7C II」にフィッシュアイレンズシステムを組み合わせ、本格的なワイド撮影に挑戦。舞台は、レックダイビング の聖地・チューク。前回のSONY α7 IVによるレビュー撮影と同一ロケーションで、A7C IIとの比較検証を実施した。
フルフレームの描写力と、コンパクトボディが生む機動性。その両立がもたらす「新しい水中撮影の自由度」を、ぜひ前号の記事と見比べながら体感してほしい。

世界最小・最軽量のフルフレームマシン
SONY A7CⅡ& AOI UH-A7CⅡをひと言で表すなら、「世界最小・最軽量のフルフレームシステム」がぴったりだろう。これまで大型機材を敬遠してきたフォトグラファーも手放せなくなるほどの水中でのバランスの良さ、長時間のダイブでもストレスを感じさせない操作感を誇る秀逸な完成度をみせている。
驚くべき高感度特性と描写力
今回の撮影でもっとも印象に残ったのは、A7CⅡの高感度特性の優秀さだった。これまで私は、ノイズを避けるためISO3200〜6400を上限としていた。特にブルーの背景では粒状のカラーノイズが目立ちやすく、撮影条件を厳しく制限していた。しかし、A7CⅡでは同条件でもノイズが非常に少なく、トーンの階調もなめらか。暗部に潜むディテールまでしっかりと残り、水中の静けさをそのまま写し取ることができた。
「エントリーモデル」の枠を超える表現力
一般的にA7CⅡは「エントリーモデル」と分類されているが、実際の描写力はそれ以上。細部の再現性が高く、被写体の質感や立体感を緻密に表現してくれる。特に沈船の鉄肌や、長い年月を経た錆の質感、そして差し込む光の柔らかなグラデーションまで、見事に再現している。
自然光を生かす、静寂の作風
私の撮影スタイルは、外部ストロボで「照らし上げる」のではなく、自然光やダイバーのライトによる柔らかな光を生かすもの。木漏れ日のように淡く差し込む光が、沈黙の中に息づく時間を照らす――そんな情景が好きだ。そのような低照度環境では高感度撮影が欠かせない。A7CⅡは、まさにその繊細な光のニュアンスを美しく拾ってくれるカメラだ。
フルフレームが切り拓く「静かな表現」
チュークの沈船群は、時に水深40mを超える深度に眠っている。そこでは太陽光も届かず、ストロボを使っても光が吸収されやすい。
それでもA7CⅡの描写は力強く、暗部の階調を丁寧に拾い上げ、立体感のある映像を生み出してくれる。この性能は、私の作品の幅を確実に広げてくれると実感した。
今回のチュークで得た成果は、単なる機材テストではなく、「表現の進化」そのものだった。フルフレームのダイナミックレンジと、コンパクトな取り回し。この両立を実現したSONY α7CⅡは、水中写真の新しいスタンダードになる可能性を秘めている。暗いトーンの作品が多いが、それはチュークの静かな美を伝えたいという意図の表れ。どうか、そこに流れる時間と光を感じ取ってほしい。
使用機材
SONY α7CⅡ
AOI UH-A7CⅡ ハウジング
CANON EF 8–15mm F4L FISHEYE USM(Metabonesアダプター使用)
AOI UCS-Q1i ストロボ ×2灯
再び、チュークの海へ

乾祥丸(水深20m)
光源はキャットウォークの下に置いたライトとダイバーのスポットビーム、そしてわずかに差し込む環境光のみ。通常であれば暗部が潰れやすく、浮遊物ノイズも顕著に現れやすい条件だ。しかし、今回の撮影ではISO12800という高感度設定にもかかわらず、暗部の階調をしっかり保持し、被写体の微細なディテールを滑らかに描写してくれた。
特に印象的だったのは、ノイズリダクションがディテールを過度に塗りつぶさず、金属表面のサビや堆積した藻の質感を自然なまま再現してくれた点である。黒つぶれしがちな深い陰影の中にも階調の層が残り、スポットビームの強烈なハイライトとの落差を無理なくつないでくれた。
この“質の高い階調のつながり”が、沈黙に満ちたエンジンルームの空気感を表現する上で大きな役割を果たした。また、スポットライトが作り出す非常に強い輝度差は、センサーのダイナミックレンジを試す条件でもある。
光の芯から周囲の暗部まで、破綻せずにグラデーションがつながる描写性能は特筆すべきもので、水中特有の霧状散乱の中でもビームのエッジが美しく成立している。極端な低照度と高コントラストの環境下で、ここまで“水中らしさ”と“金属遺構の質感”の両立ができたのは、まさにカメラの高感度耐性と階調再現力の恩恵といえる。今回の遠征で最も完成度が高く、強く心に残った一枚となった。
撮影モード
M(マニュアル)
絞り
F5.6
シャッター速度
1/25
ISO感度
12800
露出補正
±0.0EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
チューク諸島
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-104 & AOI ER-AX AX-20

清澄丸(水深20m)
極低照度の船内環境では、光量不足によるS/N比の低下や、階調の圧縮、AFの迷走が同時に発生しやすく、機材の限界が露わになるシチュエーションだ。
今回の設定はF4・1/8秒・ISO2000・-1.3EVという、かなり攻めた露出構成だが、その意図は明確である。まず1/8秒という極低速シャッターは、環境光の「残光」「色温度」「わずかな反射」を拾うための選択で、単に明るさを稼ぐだけではなく、船内の“重い空気感”を描写するための戦略的スローシャッターだ。
通常なら被写体ブレのリスクが高くなるが、被写体が比較的安定しており、A7CⅡ側の手ブレ補正に大きく依存する形で、許容範囲に収めている。ISO2000に設定したのは、ノイズ処理と階調再現性のバランスを最適化するためだ。最新世代のセンサーは高ISOでも暗部の階調破綻が少なく、トーンジャンプが起きにくい特性を持つ。
特に水中の低コントラスト環境では、色情報よりも輝度の滑らかさが画質の肝となる。ISO2000程度であれば、ノイズリダクションがディテールを損なわず、微細構造(壁面の凹凸やサビ、浮遊粒子)を適切に保持してくれるレンジだ。
露出補正 -1.3EVは、ライトコアのハイライトを飽和させないための攻めたアンダー設定。水中ライトのビームはダイナミックレンジを圧迫し、オーバーになった瞬間に周囲の階調が失われてしまう。そこで意図的に全体をアンダー側に倒し、ハイライト保持 → 暗部持ち上げを前提としたRAW現像処理を想定した露出設計となっている。
ホワイトバランスAUTOは、異なる光源(外光・ライト・反射面)
が混在する船内環境では安定的に働き、RAW現像での再調整にも柔軟に対応できるため、妥当な選択だといえる。
総じて、今回のシステムは
- •低照度下でのAF安定度
- •高ISOでの階調保持とノイズ抑制
- •スローシャッターでの質感描写
のいずれも、高いレベルで成立しており、暗所の沈船撮影でも十分に“作品レベル”を担保できることが確認できた。
撮影モード
M(マニュアル)
絞り
F4.0
シャッター速度
1/8
ISO感度
2000
露出補正
-1.3EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
チューク諸島
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-104 & AOI ER-AX AX-20

富士川丸(水深20m)
富士川丸の象徴的な通路カットは、まあまあの逆光と深い陰影が交錯するため、水中撮影では露出もAFもシビアに振られる難所だ。今回のカットでは、F5.6・1/30sec・ISO12800という、環境光依存の“ローライト極限的設定”で撮影しているが、床の海藻の繊維質や壁面の腐食テクスチャ、モデルの器材類の細部に至るまで破綻なく描写し切れている点は特筆に値する。
高感度12800でも階調が粘り、暗部ノイズが粒状に暴れず、壁面の錆の色相がしっかり分離しているのは、フルフレームセンサーのダイナミックレンジと新世代BIONZエンジンのノイズ処理アルゴリズムの進化の賜物だ。特に暗部の滑らかさは、1/3段〜2/3段ほど露出を追い込んだかのような階調再現性を示しており、水中の青被りや浮遊物による微細な輝度変動にも過度に反応することなく、非常に自然なトーンに収まっている。
使用したCANON EF8-15mm F4LフィッシュアイUSMは、MB-EF-E-BT5経由にもかかわらず良好なAF作動が確認できた。低照度の環境下でもダイバーのマスク周辺を正確に捉えてくれる。
画角端の像流れが少なく,フィッシュアイレンズ特有のパースを活かしながらも、船内の奥行きを立体的かつ緻密に記録している。金属構造物のエッジ描写の鋭さと、青い外光が差し込む水中ならではブルーの階調が、フルフレーム+高性能アダプター運用の“本気の組み合わせ”が十分に実戦的であることを証明している。
撮影モード
M(マニュアル)
絞り
F5.6
シャッター速度
1/30
ISO感度
12800
露出補正
±0.0EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
チューク諸島
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-104 & AOI ER-AX AX-20
アーム
AOI AMC1-BB-8
クランプ
AOI CP-02-WHT
ストロボ
AOI USC-Q1i-WHT×2

愛国丸(水深30m)
深度特有のブルーをどう扱うか? ここにこだわった作品。
60mの海底に横たわる愛国丸。その上部構造物へ向かって垂直に降下するダイバーの姿を、フルフレームセンサーの持つ余裕を活かして捉えた一枚だ。
春に訪れた際より浮遊物が多く、現場の肉眼では青がやや濁って見えたが、撮影データを見ると中層から深度方向へ展開する“濃紺からコバルトブルーへの階調変化”が実に滑らかだ。これは 広いダイナミックレンジと階調再現性 の恩恵であり、水中特有の青の単調さを感じさせない。
F8・1/60というやや締め気味の設定は、外光のみでの撮影としては攻めた構成だが、ISO800でノイズを極力抑えつつ、船体全体の立体感を確保するのにちょうどよいバランス。
特筆すべきは、ディープブルーの中でマスト表面のテクスチャが失われずに残っている点で、これはカメラ側の階調保持とレンズのコントラスト特性が噛み合って初めて成立する。深度30mで撮影した濃い青を「単なる暗さ」にせず、「空間の広がり」として描写することを意識した。
撮影モード
M(マニュアル)
絞り
F8.0
シャッター速度
1/60
ISO感度
800
露出補正
-0.3EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
チューク諸島
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-104 & AOI ER-AX AX-20

伯耆丸(水深30m)。車両デッキの静寂を描く
伯耆丸の船倉は、チュークの沈船群の中でも特異な存在だ。朽ち果てたボンネットトラックが並ぶその空間には、時間が沈殿したような重い静けさがあり、闇の奥に溶け込む黒の階調と、外光が描く冷たいブルーとの対比が、独特の叙情性を生む。前回のロケでは、この“気配”を撮り切ることができず悔しさが残った。
今回は、ストロボ光には頼らず、モデルダイバーのライトを主光源に、車内にも温かい補助光を配置した。ボンネットトラックの階層は想像以上に狭く、体をねじり、機材を極限まで寄せながら構図を探る。
少しでもどこかに触れたらシルトアウトで視界がなくなる。トラックの錆びたラインが浮かび上がる角度は限定的で、その一瞬を掴むための姿勢維持も容易ではないしかし、このシーンにおける最大の武器は、デジタル技術の進歩だ。ISO12800であってもディテールを破綻させないA7C II の高感度耐性とノイズ処理アルゴリズム だ。
● ノイズ処理と階調の“粘り”
水中の暗部は本来、階調が潰れやすく、特に赤・緑チャネルのS/Nが落ちると質感が失われやすい。
しかし本作では、
- •深部の黒は“真っ黒”に落ちず、かすかな質感が残る
- •LEDライトに照らされたトラックのフェンダーの“ザラつき”が自然に浮き上がる
- •ライトの青白いビームの“かすかな縁光”まで再現されている
つまり、AI系のノイズ処理にありがちな「のぺっとした平坦化」ではなく、
粒状感を適度に残しながら階調を保持するタイプの処理が機能している。
● 色再現と光の分離
車内の橙系の反射光と、外洋から漏れ込むブルーの外光。波長の異なる光が混じるこの極端な条件でも、色が濁らずに明確に分離されている。特に背景のブルーグラデーションの階調が滑らかで、“水中の雰囲気感”を損なっていない点は特筆に値する。
● 撮影者としてボンネットに積もった沈殿物、崩れたメッシュ、フレームを通過する細い沈降物のライン。その一つひとつがまるで深海の静寂を語りかけてくる。長い年月この暗闇に佇んできた車たちの“存在感”を、今ようやく正面から描けた気がする。
撮影モード
M(マニュアル)
絞り
F4.0
シャッター速度
1/8
ISO感度
12800
露出補正
-4.0EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
チューク諸島
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-104 & AOI ER-AX AX-20
アーム
AOI AMC1-BB-8
クランプ
AOI CP-02-WHT
ストロボ
AOI USC-Q1i-WHT×2(LED)

サンフランシスコ丸(桑港丸)(水深57m)
水底に静かに横たわる船首を、真正面からとらえたい——今回のロケは、その一点に焦点を絞って潜行を開始した。
実は前回4月の訪問時、私は船倉に残された“あの爆弾”に心を奪われ、船首撮影という最も象徴的なカットを完全に撮り落としていた。
沈船撮影では内部構造の表情を追うのも醍醐味だが、やはり船の“顔”をどう切り取るかで作品群の力強さは大きく変わる。
今回は水深60mの水底まで一気に落とし込み、静寂の中に佇む巨大な船首を視界に捉えた瞬間、心拍数がわずかに高まるのを感じた。
● 水深60mの圧力下で実感した AOI UH-A7CⅡ の進化新しいハウジング AOI UH-A7CⅡ(耐圧 水深60m)は、私の撮影スタイルを確実に拡張してくれる存在だ。
従来の 水深45m仕様では、深度が水深45mを越えるとボタン類の感触が不安定になる。しかし今回の水深57mでは、ボタン・レバー・ダイヤルの全てが水深0mと変わらないニュートラルな操作感を維持していた。
さらに安心感を高めたのは、深度限界近くでよく聞くミシミシとした“沈黙を破る音”が一切なかったこと。この信頼性によって、私は構図の微調整や光の読み込みに意識を全振りできた。
水深60mという領域で安心して撮影に没頭できる撮影ギヤの存在は、私のようにテクニカルダイビングを“売り”にしている写真家にとって何より心強い。
● 高い水圧下でも破綻しない描写力
今回のシーンは、沈船の規模を強調するために F11・1/125・ISO8000という硬めの設定を選択。青の濃淡の中で船首の質感をいかに破綻させず描ききるかがポイントになる。
ISO8000は本来ならシャドー部の粒状感が目立つはずだが、A7C IIの高感度耐性は非常に優秀で、船体の金属腐食の階調も粘り強く残ってくれた。
特に青の深部から船体の黒へ落ち込む部分で階調が潰れないのは、フルフレームならではのアドバンテージだ。海底に刺さるように立つ巨大な船首。深度と静寂に支配された世界で、ようやく捉えることができた「船の顔」。
次回以降、さらに深みをもった表現へとつなげる、確かな一枚になった。
撮影モード
M(マニュアル)
絞り
F11.0
シャッター速度
1/125
ISO感度
8000
露出補正
-1.0EV
ホワイトバランス
AUTO
フラッシュ
OFF
撮影地
チューク諸島
カメラ
SONY ILCE-7CM2
レンズ
CANON FE8-15mmF4 FISHEYE+MB-EF-E-BT5
ハウジング
AOI UH-A7CⅡ
レンズポート
AOI DLP-104 & AOI ER-AX AX-20
アーム
AOI AMC1-BB-8
クランプ
AOI CP-02-WHT
ストロボ
AOI USC-Q1i-WHT×2(LED)
異色のレンズ構成?
SONY A7CⅡの純正SONYフィッシュアイレンズは、実は純正ラインナップには存在しない。Eマウント対応の他社製フィッシュアイとしては、SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE[ソニーE用]が高性能で知られているが、全長約160mm・重量約1.36kgと大型かつ高価な点がネックだ。
そこで、AOIではSONY A7CⅡ用の超広角システムとして、CANON EF 8-15mm F4L フィッシュアイUSMを採用した。このレンズは全長83mm・重量540gとコンパクトで持ち運びやすい。Metabones製電子マウントアダプターでEマウントボディに装着し、AOI DLP-104ポートと延長リングER-AX_AX-20を組み合わせる。フルフレーム・フィッシュアイ撮影システムとは思えないほどコンパクトで取り回しが良い。
補助光はビデオLEDライト内蔵のAOI UCS-Q1iストロボを2灯使用。遠距離被写体にはストロボ光、暗い船内やムービー撮影時は内蔵LEDの常灯光で、1台で2役をこなす。水中撮影の操作性・機動性・光量のバランスを追求した現場目線のシステム構成だ。

SONYのカメラにCANONのレンズ? 手ぶれ補正→ボディー側orレンズ側を選択可能なMetabonesマウントコンバーター

SONY,OM SYSTEM両方に使えるAOI UCS-Q1i

Q1シリーズのシリコンスリーブ 6色カラー展開
今回のロケを通して実感したのは、コンパクトでありながら、標準キットレンズを中心に構成されたこのシステムが、見た目以上に“本気の世界に向いている”ということだった。軽量で扱いやすく、セットアップもシンプル。
それでいて、深度下での微妙な光の差し込みや、沈船の鉄肌が持つ階調のニュアンスまで、しっかりと描き出してくれる。撮影者の意図に対して素直に応える、この真面目さと安定感は、フルフレームというフォーマットの余裕を存分に感じさせるものだ。だが、今回最も印象的だったのは、この“コンパクトな水中撮影システム”が、実はテクニカルダイビングの現場においても十分に戦える器であったという点である。
深場での作業性、限られた時間での構図決定、そして環境変化の激しい沈船内部での機動力──そのすべてを小さなボディがしなやかに受け止めてくれた。その結果、私は撮影そのものに集中でき、被写体と向き合う時間を最大限に楽しむことができた。
水中ハウジングとは“撮影者が海とどう向き合うか”を左右する重要な存在だが、このUH-A7CⅡはその点でも確かな信頼を置けるパートナーであることを証明してくれた。
そして今、私が次に期待を寄せているのが、新しく登場したSONY純正100mmマクロレンズだ。高速で粘り強い被写体追従性能を備えるというその噂は、深場にひっそりと棲む生き物たちの微細な表情を切り取るうえで、強力な武器となるに違いない。水中マクロの世界は、わずかなピントの揺らぎが作品の印象を決定づける。だからこそ、レンズの素性が作品そのものを変えてしまう。
つい最近水中で呼気が水中で排出されないサイレントなCCRを使い始めた。新しいマクロレンズが手元に届き、大好きなアケボノハゼが目の前でレンズを見つめている瞬間を想像するだけで、胸が高鳴る。あの静かで濃密な青の中で、どんな新しい出会いが待っているのか──次の撮影が、すでに楽しみでならない。
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