ミラーレス一眼 水中撮影徹底ガイドby清水淳(第32回)

明るい!F1.4超高性能フィッシュアイレンズ「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE」AOI UH-A7CⅡに専用レンズポート登場!

SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE AOI UH-A7CⅡ専用ポート装着イメージ

星景撮影のために生まれた、「SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art」。35mmフルサイズ対応の対角魚眼として世界初となるF1.4の明るさと、画角180度の隅々までを描き切る解像力を両立したレンズだ。

その高性能レンズは直径104mm、全長約160mm、質量1,360g。重く長くそして太い。陸上でもひときわ存在感のあるこのレンズを、SONY α7C II用AOIハウジングで水中に持ち込めるよう、AOIが専用ポートを製作した。

テイスティングの舞台はメキシコのセノーテ、そして地元沖縄本島古宇利島では深夜でのEMMONSの撮影、更にお気に入りの洞窟でたっぷりとこのレンズ描写を楽しんだ。明るいフィッシュアイレンズを試すためにとにかく暗い空間で撮影した。闇が支配する洞窟のなかで、複雑に連なる岩の造形、ライトが作る陰影を、星を点として写すために磨かれた魚眼レンズは、水中の光と空間をどのように描くのだろうか?

1|なぜ、星景用のF1.4魚眼を水中へ持ち込むのか

SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE
AOI UH-A7CⅡ専用レンズポート

SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYEは、「明るい魚眼」というだけのレンズではない。星景撮影では、画面周辺の星まで点として再現する力が求められる。SIGMAはそのために各種収差、とりわけサジタルコマフレアを抑え、画面全域の高い解像を目指したという。

この設計思想は、水中、とりわけ洞窟の撮影でも魅力的に感じた。洞窟では、暗部のなかにわずかな自然光やダイバーのライトが存在し、広い空間と細かな岩肌を一枚に収めたくなる。単に広く写るだけではなく、画面の端まで空間の情報を保ってくれる魚眼レンズなら、洞窟のスケール感をより自然に伝えられるはずだ。

F1.4という数値も、ただ「暗い場所で明るく写せる」という話にとどまらない。限られた光をどう残し、どこまで洞窟の空気感として写し取るか。その選択肢を広げてくれる明るさである。

2|AOI専用ポートで成立した、α7C IIとの組み合わせ

α7C IIとSIGMA 15mm F1.4の組み合わせ
AOI専用レンズポート装着状態

このレンズは、水中撮影用として考えればかなり大きい。コンパクトなフルサイズ機であるα7C IIとの組み合わせは、陸上では少し意外に見えるかもしれない。だからこそ鍵になるのが、AOIがこのレンズに合わせて用意した専用レンズポートなのだ。

大きな前玉を持つ魚眼レンズは、ポートとの位置関係によって周辺の描写や扱いやすさが大きく変わる。レンズを収めるだけではなく、その画角と描写力を水中で引き出すための専用設計が必要になる。ただし、その描写性能を追い求めていくと中華鍋のような巨大なドームレンズになってしまう。そこでAOIは、曲率を強めた半球状のドームレンズを採用し、レンズ直径を抑えた設計にすることで、5インチサイズのドームポートを実現した。

実際に水中で構えてみると、機材の存在感はある。それでも、180度の画角を使って洞窟の天井、壁、足元、そしてダイバーまでを一つのフレームに整理できる感覚は格別だった。小さな被写体をただ中央に置くのではなく、空間そのものを主役にしたい撮影に向く組み合わせだ。浮力調整は340gの浮力体をハウジング上部に着けて使用しているが、前後のバランスもややネガティブの浮力が抜群に良い。

3|セノーテ|光が洞窟の輪郭を描く場所

今回のセノーテは、雨季に入ったばかりで毎日雨模様。地上から差し込む光が狙えないのであれば、鍾乳石と透明な水の中で広がる幻想的な世界をRGBlueの新型ライトで描いてみた。漆黒の闇そしてダイバーの持つライトの光、鍾乳石のシルエット、そしてその間を進むダイバー。そのすべてを同時に見せられることが、超広角・魚眼撮影の大きな魅力だ。

15mm F1.4で印象的だったのは、やはり闇に強いということ。ISO感度を上げずとも手ぶれ限界速度内に収まる露出設計ができる。今まで使っていたCANON FISHEYE ZOOM EF8-15mmレンズがF4.0と少し時代遅れ的に暗いレンズだったので、3段の明るさの差は少し戸惑うほど。

洞窟撮影では、ライトは照明であると同時に、写真の中で方向を示す道しるべでもある。広い画角を持つ魚眼レンズでは、ダイバーのライトをどこに向けるかによって、視線の流れと空間の奥行きが決まる。すなわち、手前の岩肌を多めに入れ、奥にライトを置けば、見えない洞窟の先まで想像させることができるのだ。

セノーテでの撮影風景

RGBlueの新型ライトSYSTEM02 Tricolorを使い色温度の違いを楽しめる作品に仕上げた。遠景に6000Kで冷たいブルーで奥行きを確保しながら、近景には4200Kの暖かい光で鍾乳石の美しさを演出という凝りに凝った作品。

水深8m付近から水底60mにステイするダイバーを見下ろす(Blue Abyss/Mexico Tulum)

水深8m付近から水底60mにステイするダイバーを見下ろす。対角線180度という画角の広さを感じるカット。
(Blue Abyss/Mexico Tulum)

絞り開放域で距離差がある構図で撮影(Sushi/ Mexico Tulum)

絞り開放域で距離差がある構図で撮影すると被写界深度の深いフィッシュアイレンズでも近景にボケが生まれる。(Sushi/ Mexico Tulum)

4|MIDNIGHT EMMONS|闇のなかに、光を置く

MIDNIGHT EMMONSの撮影風景

深夜のEMMONSでは、セノーテに比べて開放エリアが広いので光の回りが良くない為に照明は強めに更に数量も多く設置をした。直接船体に照射することは避け、バックライトで浮かび上がるようなテイストを選んだ。

深い闇そのものも、被写体として活かせるように設計し、光のない部分を無理に明るく写すのではなく、闇を残すことで、わずかなライトやダイバーの存在が際立つ作品に仕上げた。浮遊物が多い日でややシルキー感が残るテイストになった。

5|ケーブとダイバー|鍾乳石の美しさとダイバーの存在感

ケーブでは、同じダイバーを撮るにも、対照的な二つのアプローチを試してみた。ひとつは、ダイバーにぐっと寄ること。狭い通路や頭上に迫る鍾乳石を画面いっぱいに取り込み、岩肌の質感とダイバーの緊張感を同時に描く。魚眼ならではの遠近感によって、手を伸ばせば届きそうな岩の近さと、洞窟の奥へ続く空間が強調される。

もうひとつは、できるだけ引いて撮るということ。巨大な洞窟空間のなかにダイバーを小さく浮かべると、人の存在が空間の大きさを測る基準になる。闇のなかを伸びるライトの光は視線を導き、鍾乳石に覆われた洞窟の奥行きと静けさを際立たせてくれた。

巨大な洞窟空間にダイバーを小さく配し、ライトの軌跡で奥行きを描く

巨大な洞窟空間にダイバーを小さく配し、ライトの軌跡で奥行きを描く。人の存在が、頭上を覆う鍾乳石群のスケールを際立たせている。

頭上すれすれの鍾乳石の下を進むダイバー

頭上すれすれの鍾乳石の下を進むダイバー。近接した魚眼表現が、ケーブ特有の圧迫感と立体感を引き出す。

浮遊するダイバーを、自らも浮遊しながら撮影する場面でも、明るいレンズなら手ブレを抑えられるシャッター速度を確保できる。狭いケーブ内では邪魔になるストロボは携行していない。

6|実写で感じたこと|F1.4は「開放で撮る」ためだけの性能ではない

水中で常にF1.4で撮るわけではない。被写界深度、ストロボ光、被写体との距離、表現したい明暗によって、適切な絞りは変わる。それでも、F1.4というスペックには大きな意味がある。それは、暗い環境での撮影の選択肢を増やしてくれること。そして、レンズが本来持つ描写性能に余裕を与えてくれることだ。洞窟のように光が限られた場所では、シャッタースピード、ISO、絞りのどれを優先するかをその場で判断する。明るいレンズは、その判断の幅を広げてくれる。さらに、このレンズの魅力は魚眼らしい迫力と、細部まで見せたいという要求を両立できることにある。

SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYEは、気軽に持ち歩けるレンズではない。大きく、重く、専用ポートも必要になる。けれど、その手間をかけてでも水中へ持ち込みたくなる理由が、今回の撮影で明確に感じた。

セットアップガイド|ポートの大きさ比較と装着手順

ポートの大きさ比較

ポートの大きさ比較

右はCANON FISHEYE ZOOM EF8-15mmF4を収納するDLP-105 & ER-AX_AX-40。左はSIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYEを収納するDLP-105 & ER-AX_AX-40

DLP-105 & ER-AX_AX-40のセットアップ

SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYEは直径が大きいレンズなのでハウジングの背面からカメラにレンズを付けた状態ではセットできない。

システムの全てを分解しておいてみた。

システムを分解した状態

まず、ハウジングにER-AX_AX-40をセットする。

ハウジングにER-AX_AX-40をセット

次にカメラボディーにレンズリリースレバーを取り付ける

カメラボディーにレンズリリースレバーを取り付け
カメラボディーにレンズリリースレバーを取り付け

ハウジングにカメラをセットする。レンズは取り付けない。

ハウジングにカメラをセット
ハウジングにカメラをセット

レンズをカメラにセットする。

レンズをカメラにセット

ドームポート前部をセットする

ドームポート前部をセット
ドームポート前部をセット

ポートのロックの仕方/ ER-AX_AX-40

左:ロック解除 右:ロック状態
ポートを外す場合にはロック解除、水中撮影時にはロック状態にセットする。

ポートロック解除の状態
ポートロック状態

ポートのロックの仕方/ DLP-105&UH-A7CⅡ

ポートリリースレバー グリーンの丸印が見えるようにセット

ポートリリースレバー、グリーンの丸印が見えるようにセット

編集後記

水中のワイド撮影はフィッシュアイレンズと決めて、これまでずっとブレずに撮ってきた。けれどこの一年、いくつかのフィッシュアイレンズを使い比べてみて、あらためて感じたことがある。同じフィッシュアイでも、レンズごとに描写も、扱いやすさも、写りの個性もまったく違うということだ。

あるレンズは近接した被写体をぐっと迫力ある表情に変え、あるレンズは広い空間を端正に描き出す。それぞれにいい意味でのクセがあり、そのクセを理解して活かせたとき、写真はぐっと面白くなる。今回のSIGMA 15mm F1.4も、そんな個性の強い一本だった。これからもレンズごとの魅力と向き合いながら、水中の世界を自分らしく切り取っていきたい。

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8月18日(火)20:00〜
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writer
PROFILE

1964年生まれ。水中写真や海辺の風景を撮り続けている。執筆や撮影を行ないながら、沖縄・那覇にて水中写真教室マリーンプロダクトを主宰。 また、カメラメーカーの研究開発にも携わり、水中撮影モードや水中ホワイトバランスの開発アドバイザーも務める。1998年にデビューしたOLYMPUS C900Zoomから最新機種まで全てのOLYMPUS水中モデルのチューニングテストを行なっている。カメラ機材に精通し、機材の特性を生かす能力が評価され、水中撮影アクセサリーメーカーのアドバイザーやテスト撮影の要望も多い。執筆活動では、水中撮影機材の解説や撮影の仕方、楽しみ方の記事をPADI Japan/デジカメ上達クリニック、OMDS/水中デジタルカメラ・インプレッション、マリンダイビング.ウェブ/水中デジカメ撮影教室、オーシャナ/カメラレビューを現在連載中。最近では、「清水淳のマンツーマン水中写真教室」が好評いただき熱意あふれるフォトグラファーたちと一緒に撮影をしている。
公式ホームページ https://shimizu.marine-p.com/ 公益社団法人日本写真家協会会員。

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